違う家族
◇
違う。
お父さんでもお母さんでもマサルでもエリでもない。家にやって来たのは全く知らない人間だ。
これからずーっとここに住むつもりなんだ。
……なんて事だ。
でも、久しぶりに家に入れた。ずっと外にいるのは辛かったからこれは嬉しい。以前と様子が違うが、家そのものは変わっていない。
冬はいちばん暖かかった梁の上に座り様子をうかがっていると、男の子が俺を見付けた。
マサルよりも大きい。でも何となくマサルに似ているような気がするがきっと人間の男の子はみんな同じように見えるからだろう。
“ケンタ”と呼ばれたその男の子はこともあろうにマサルとエリの子供部屋を自分の部屋にしてしまった。
たくさんのオモチャ、小さな滑り台やジャングルジム、壁紙にはきれいな色で外国の動物達が描かれていたのに。どれも無くなっていて、変わりに新しい机とベッドが置かれていた。
頭に来た俺は、新しいベッドに飛び乗って男の子を睨みつけてやっていたが、なにやら忙しいらしく全く無視された。
それにしてもなつかしい。俺はここでいつもマサルとエリの子守りをしていた。
マサルはブロックを組み立ててエリの人形の家を作ってやったりして、小さいけど本当に仲が良かったなあ……
そんな事を思い出していたら眠くなって来た。
久しぶりの家の中は知らない人間がいても暖かく優しかったから。