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家守りの猫  作者: 鮎川 了
10/11

本当のお別れ





 ドロボウの顔は猫の爪痕つめあとあみの目のような傷が血をにじませて、さらになみだとハナミズがその血にまじり、なんだかとっても気の毒な状態になっていた。

 その上、パパとおじいちゃんに押さえつけられ、大きなトラ猫にかじりつかれていて、大人しく警察につかまった方がどんなに楽だろうと言うような状態じょうたいだ。

 事実、警察がやって来た時“ああ、助かった”と言うような顔をしてたから。

   

 でも、スゴイや、パパやおじいちゃんもだけど虎太郎も。

 本物のトラみたいだった。

 警察がドロボウを連れて行ってしまってからも、背中の毛を逆立てて、うなり声をあげている。

 「虎太郎?」

 おばあちゃんがそうつぶやいた途端、唸り声は止み、逆立った毛もゆっくり元に戻って行った。

 やっぱりおばあちゃんには虎太郎が見えるんだ。

 「え?虎太郎だって?まさか!」 

 おじいちゃんが、おばあちゃんの目線の先を追う。

 パパや叔母ちゃんも同じ方を向き、突然何かを思い出したような顔になり、二人同時に同じ事を言う。

 「コタ……?」

 みんなが虎太郎を見ている。僕しか見えなかったはずの虎太郎を。 

 「虎太郎、この家を守ってくれていたのね。そしてみんなを呼び戻してくれたのね。ありがとう……おつかれさま」

 虎太郎はその長い尻尾をぴんと上に立てて、ゴロゴロとのどを鳴らしながらおばあちゃんに近付いた。

 凄く嬉しそうな顔をしている。猫もこんな顔をするんだ。

 でも……

 虎太郎の頭がおばあちゃんの手に触れる寸前すんぜん、その姿は消えてしまった。


 おばあちゃんは泣いた。おじいちゃんも、パパも、叔母ちゃんも。その様子を見ていたママまでも泣いた。

 今度こそ、本当のお別れ。  

 もうこの大きなトラ猫が家に現れる事は無いだろう。 

 そんな気がした。 










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