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少年

「今頃一達は何してるんだろう?」

 光のない洞穴の中、どうにか手探りで風の吹いてくる方向に進んで三十分以上たっただろう。

 普通に歩けば五キロは歩けるだろうが、この状態だと一キロ歩けたかすらも怪しい所だ。

 地下だということもあって、湿気が高く、なんかよく分からないものを踏んだりもしたけれど、とりあえず気にしないことにした。

声の反響からして穴の大体の大きさは分かるが、たまに穴が開いているので油断はできない。

「まぁなんだ?俺はどうしてこんな状況にいるんだ?とか、爺さんのせいだよな?とか、あの野郎帰ったら速攻で殺すとかな」

 闇というのは本当に不思議なもので、恐怖が自然と襲ってくる。

そんな中を一人で歩くとなると自然と独り言も多くなってきてしまう。

思考すらネガティブになってきたし、この調子なら俺は一時間後には諦めてると思う、きっと、いろいろ。

「そもそも悪戯の時点でありえない、何がしたいんだあいつら?」

 床がどんな状態かも分からないので神也は壁に背を預けて、これまでの事を考えることにした。

 背中でプチィチョパ!とかいう変な音が聞こえたけど五回目くらいなので命に別状はないと思う。

 そう信じたい。

 まぁそれはいいとして、とりあえず話を整理しよう。

 あれだな?爺さんの城に一泊して、朝起きたら朝食が用意してあって、久しぶりの純和風朝食に涙したんだったな。

 んで、雀と一が爺さんに呼び出されたから俺はナイトに誘われて城の近くの森に遊びに来たわけだ。

 そしたらナイトがいきなり俺の命を狙い始めて?んでそれは爺さんとナイトのお遊びでした♪っと。

 考えを整理してみてもやっぱり一方的に理不尽だよな?

「うん、トラウマ一つ増えたかな?なんだ?その、暗い所怖い、暗い所怖い」

 ヌチョッという嫌な音を糸引きながら立ち直すと、自然と震える肩を抑えながらまた手探りで前へと進む。

 前へ進むしか道がないから歩を進める。

未開の地を切り開く気持ちってこんな感じなんだろうな。とふと思った。

 なにがあるか分からなくて、手探りで少しずつ進んで、新しいものを見つけて。

 んで、得体の知れないものを踏んで、得体の知れないものが顔について、生暖かい何かが背中に垂れるんだろうな。

 でもきっと、そんな先に光が見えるんだろうな。きっと人生も同じようなものだろう。

 最後に光が見えるんだ。きっと、あんな感じに……光が。

「光が!?」

 気づくと、かすかにだが足元が見えていた。

 さっきまでは本当に、自分の手すら見えない闇だったのが、ようやく輪郭ぐらいは見えてくるようになった。

 もう手で探りながら歩く必要もなく、輪郭を見ながら、それでも慎重に歩いていった。

 だんだんと輪郭は色を持ち、次第に体についた緑色の液体までしっかり見えるまで光は強くなっていた。

 つまりは、やっと出口につけた。

「やったぜコンチクショウ!」

 あまりの嬉しさに扉のような形をした出口をハイジャンプしながら飛び出した。

 ハイジャンプしたのがまずかった。

 一瞬のうちに感じる無重力。いや、この場合は重力か?

 とりあえず、着地場所の確認はしっかりしましょうって話ですね。

 絶望からの脱出、そしてまた絶望へ?

 落ちたのはほんの数秒ほどだったけど、とりあえずこれだけのことを考えることができた。

 きっと走馬灯って、これのすごいバージョンでしょうね。

「いたっ!」

 さっき俺が飛び出た穴は頭上三メートルくらい上に確認できた。

 どうやら死ななくてすんだらしい。

「ケツがぁぁあぁ!」

 まぁ無傷ってわけにも行かなかったけどね、具体的にいうと尾てい骨強打。

 二回転位して、転がる元気もなくなって三分、ようやく痛みが治まってきた。

 とりあえず崖とかでなくてよかった、下手したらケツから頭まで串刺しとかもあったかもしれないしね。

「しかし、まぁなんだ?この人工的雰囲気たっぷりな所は?」

 辺りを見渡すと、そこは簡単に言えば神殿だった。

 俺の前に一直線に間隔を置いて並ぶ薄青色の円柱、正確に言えばそれが縦横に広がって、巨大な部屋を支えていた。

 俺が落ちてきた穴は壁に開いていたのだが、反対側の壁は見えないし、このままだと出口の方向すら分からないだろう。

「なんていうか、地下神殿みたいな感じか?どこまでファンタジーなんだよこの世界……」

 どっかのゲームでありそうで、絶対にないこの状況に軽いめまいがした。

 とりあえず、歩かなければどうしようもないだろうと思い壁沿いに歩き始めた。

 歩くたびに響く足音が、静寂の支配する空間に俺の存在を嫌にも浮き上がらせていた。

 歩いて五分もすると、その反響音が心底憎くなってきた。

 なんかここに終わりはありませんよ?って気分にさせるんだよねこの音。

 いっそのことリズムを刻んでみますか。

「よし、んじゃあれだ白鳥の湖の感じで」

 軽快な足運びで優雅な白鳥を演じる。  

 あくまでバレエの微かな足音が神聖な空間に優美さを生む。

 これぞ芸術、ビバ・バレエ……

「いかんいかん!壊れ始めてるぞ俺!」

 独りぼっちになって、はや一時間、独り言も普通になってきてしまった僕はきっと壊れ始めているのでしょう。

 それよりこの部屋って終わりないんでねぇの?

 実は入り口はあるけど出口はないとか?

「そういやさっきから誰の足音も聞こえてないしな……」

 しかし、ここに来るまで壁を見ていたがどうやら穴は俺が落ちてきたところは無いようだった。

 つまり、ここから風が来ていたということは出口がきっとあるということだろう。

 とりあえずは、それを探して歩く。

 ひたすら続く薄青色の世界に、ひたすら響く靴の音。

 永遠に続くかと思うその状況が変わったのはそれからどの位たってからだったのだろう。

 目の前に、そこに似つかわしくないものが現れた。

「なんだ?これ」

 そこにあったのは確かに機械だった。

 この世界はお世辞にも工学は発達していない、よくて木製歯車とか風車、水車。

 しかし、これは違う。

 多分現実世界でも希少なぐらいの技術がこめられた機械。

 用途も動かし方も全く分からないが、あらゆる意味でこの世界にもっとも似合わない物体だった。

「それは、母さん達が残してくれた現実への扉なんだ」

 突然後ろから声がして、振り向くとそこには奇妙な少年がたっていた。

 いや、外見からすれば奇妙なところなど何もない。

 しかし、対峙している神也には感じられた。

 この少年は存在していない、いや存在はする?

「そうか、君は僕を知らないよね?僕は父さんと母さんに、嫌と言うほど君の話しを聞いたのに」

 そういうと少年は異常なまでの敵意を持った目を俺に向けてきた。

 しかし、彼の両親が俺を知っているなどあるはずがない、ましてや恨まれる筋合いなどない。

「君は、誰だい?」

「僕かい?それはまだ秘密にしとくよ。とりあえずは君の敵って覚えといて」

 そういうと少年は俺のそばに近寄ってくる。

 確かな足音と共に。

 おかしい、俺は俺以外の足音は聞こえなかったはずだ。

 なら、この少年はどこから現れた?

「まったく、隙だらけだな。これだからぬくぬくと育った奴は」

「え?」

「大嫌いなんだ」

 少年から発せられた異常な空気に、思わず後ろに飛び下がった。

 なにが起きたのかは分からないが、俺が今さっきいた所は何かが危険だった。

 それだけが、なぜか実感できた。

「へぇ、よく避けたね。まぁ今日のところは力の把握をしたかったんだけど……」

 避けたね?ということは何か仕掛けてきていたということか?

「君は普通の人より特別なようだね、きっとある条件がそろわないと駄目だろう。多分それはトラウマの数……かな?」

 何を言っているんだろうこの少年は、わからないワカラナイ分からない。

「いったい、何をしたんだ?」

 それが、俺の言える精一杯だった。

 おそらく、俺より五歳は年下の少年に、俺が言える精一杯。

「言うはずないじゃんバ〜カ、まぁ今日はもういいや、出口はあっちにあるから帰っていいよ」

 そういって少年は機械のある方向の真逆、つまり俺の来た道を指した。

「おまえは、いったい?」

「いい加減にしろよ?俺が帰っていいって言ったんだ。さっさと帰れよ」

 不覚にも、全身に感じたことのない寒気が走った。

 それだけの殺気、それが一気に俺の体を貫いた。

「あれ?もしかして今ので動けなくなっちゃった?アハハ!ゴメンゴメン、んじゃ僕が先に帰るとするよ、またね神也君」

 高らかに響く無邪気な笑い声は、足音と共に遠くに消えていった。

 俺はそれを、首も、手も、足も、恐怖で動けなくなった体でただ見送ることしかできなかった。


久しぶりでございます。

きっと、この糞作者が(貴重な)読者をないがしろにしやがってコノ野郎と思われているでしょう。

しかし作者は読者を崇拝しておりますゆえ見放さないでね、愛してる(>з<)こんな顔文字打つ俺はきっともう駄目だorz


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