第36話「絆は傷つかない。光は消えない。」
ネットでの誹謗中傷騒動から、数日が経った。
日常は、何事もなかったかのように流れていた。
授業、部活動、昼休みの笑い声。
カナタも、いつも通り笑って、手を振って、友達を助けていた。
──でも、わかっていた。
あの笑顔の奥に、ほんの少しだけ影があることを。
【教室・昼休み】
美香(窓の外を見ながら)
「…あの子、また一人で全部抱えてる顔してる」
アンジェ(そっと手を胸に当てて)
「心が強い方ほど、弱さを見せられないのですわ。……だからこそ、わたくし達が支えなければ」
西園寺(バン、と机を叩く)
「泣かせたまんまでいられるかってんだ。行くぞ、俺たちの出番だ」
【放課後・校舎裏】
「カナタ、ちょっと話があるの。来てくれない?」
放課後、手紙でそう呼び出されたカナタは、不安そうな顔で校舎裏に足を運ぶ。
その瞬間——
\パァン!!/
紙吹雪が宙を舞い、カラフルな風船が空に浮かぶ。
「こっちこっちーっ!」
ミュンが満面の笑顔でジャンプ。背後には、美香、アンジェ、西園寺、そして手作りの飾り付け。
「緊急開催! カナタ大感謝祭ミュン!!!」
カナタ「へ…?な、なにこれ…?」
戸惑うカナタに、仲間たちが順に歩み寄る。
美香「ねえ、今までカナタに何回助けられたと思う?
あんたがいるから、あたしはここまで来れた。……だから今日は、あたし達があんたを支える番」
アンジェ「カナタ様は、わたくし達にとっての光ですわ。
あなたの笑顔が、どれほどの希望をくれたことか……!」
西園寺「黙って背負ってんじゃねぇよ。
お前はな……俺たちにとって、誰よりも大事な仲間なんだよ」
そして最後に、ミュンが小さな箱の上に立ち、空に向かって胸を張る。
ミュン「聞け全人類! 世界中が敵に回ったって、カナタの味方はここにいるミュン!!」
「カナタは優しくて、強くて、笑顔が似合って、誰よりがんばり屋で、たまにドジで、泣き虫で、でも絶対に負けない——」
「……そんなカナタが、わたしたちの誇りだミュン!!!!」
カナタの瞳が揺れた。
涙が、ゆっくりと頬を伝っていく。
「……みんな……ありがと……うぅ……っ…!」
「わたし……わたし、ほんとに……幸せ者だよぉ……っ……!!」
ミュンが飛びつき、美香が抱きしめ、アンジェが手を取り、西園寺が頭を撫でる。
その中心で、カナタは笑った。
今度は、ちゃんと——心の奥から。
【ラストシーン】
放課後の夕陽の下、風船が空へと昇っていく。
写真:仲間たちに囲まれ、涙を浮かべながら微笑むカナタ。
その1枚は、いつの間にか「ミュンのカナタアルバム」に追加されていたという。
ミュン(そっとつぶやく)
「……大丈夫ミュン。あの子の光は、絶対に消えたりしないミュン」




