表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/41

第3話「イケメンにときめいた!?そして正体バレたあああ!?」

――その日も、僕は変身していた。


理由は簡単。

今日の怪人は、「自販機のボタンを全部押して中身をシャッフルする怪人」。


地味に迷惑。いや、じわじわ腹立つ系。

でも緊急性は低い。普通なら無視できるレベルだ。


だけど、ミュンがうるさいから出動するしかない。


 


「ハートリボン・スプラッシュ!(仮)!」


 


 ぴかーん!と浄化ビームが発射される。


 


「飲みたかったメロンソーダ……!」


 


 そう言い残しながら、怪人は淡く光って消えていった。

 ちょっとだけ胸が痛んだのは、僕が甘党だからに違いない。


 


 ――と、そのとき。


 


「どけ。」


 


「え?」


 


 背後から、低くて鋭い声が飛んできた。

 振り向いた僕の視線に飛び込んできたのは、一人の男子生徒。


 


 黒色の髪に鋭い目つき。乱れた学ランに腰のチェーン。

 “ザ・不良”な出で立ちなのに、どこか静かで圧のある雰囲気。


 


「……西園寺(さいおんじ)……れい……!?」


 


 クラスメイトで、学年でも有名なヤンキー。

 なのに成績は常に上位、運動もできる、ピアノも弾ける。謎すぎる万能型イケメン。


 


 その彼が、突然僕の前に立ちふさがった。


 


 次の瞬間――


 


 影から飛び出してきた、さっきの怪人とは比較にならないほど禍々しい巨大な影。


 ギラつく牙、触手のような腕。まるでホラー映画のラスボスみたいな異形が僕に飛びかかってきた。


 


「ひっ――!」


 


 反応が遅れた。ドレスの裾が邪魔で、足がもつれる――!


 


 ……と思った、その瞬間。


 


 ズドン!


 


 衝撃と共に、怪人が吹き飛んだ。

 風圧が僕の髪を乱す。


 


 そこにいたのは、西園寺だった。


 


「怪我、してないか?」


 


 その手が、そっと僕の肩を支える。

 顔が近い。思ったよりも穏やかな目をしていた。


 


「……えっ。あ、う、うん」


 


(な、なにこれ……なんか、ドキドキしてる……?)


 


 心臓が跳ねる。顔が熱い。

 いやいや違う! これは吊り橋効果だ! 命の危機→救出→ドキドキ=錯覚!


 


(……僕は男だ。相手も男。これはただの脳の誤作動!!)


 


 でも、彼の瞳はやたら優しくて。

 しかも、今の攻撃――素手であの怪人を吹き飛ばした!?


 


(なんなのこの人、強すぎない!?世界観違うよ!?)


 数分後。


 怪人は完全に消滅し、現場には安堵の空気が戻っていた。


 


 僕――魔法少女カナタ(Ver.)は、顔を赤くしながら全速力でその場を離脱した。


 


 心臓がまだドクドクいってる。

 混乱と動揺で、変身が解けそうになる。


 


「ちょ、ちょっとミュン!? 西園寺くん、僕のこと絶対見てたよね!? 好きなタイプが特殊とか、そういう話じゃない!?」


 


「落ち着くミュン。西園寺零、ただ者じゃないミュン……! あの素手の破壊力、世界観がズレてるミュン……!」


 


「だよね!? ね!? あれ絶対“人類”じゃないよね!?」


 


 ――そして。


 


「……カナタ?」


 


 背後から、聞き慣れた声が聞こえた。


 


「――え?」


 


 振り返ると、そこにいたのは朝比奈美香。

 制服姿のまま、こちらをじっと見ている。


 


「今の……声。目の動き。仕草。あれ……全部、彼方と同じだった」


 


 全身に電流が走った気がした。

 頭の中が真っ白になる。


 


「…………あー」


 


 ミュンが小声で囁く。


 


「ま、まさかの正体バレ展開ミュン……!!」


 


「……ねぇ、もしかして……魔法少女カナタって、彼方なの……?」


 


 沈黙。


 風が吹いて、スカートがふわりと揺れる。


 


 僕は、ただ――


 

「……バレたああああああ!!!?」


 

 しゃがみこんで頭を抱えるしかなかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ