第20話「魔神の名はバルゼア=ネメシス」
王城――重厚な扉が軋む音とともに開かれ、一行は玉座の間へと導かれた。
頭上には天井画、赤い絨毯の先には金と宝石に彩られた玉座。そしてその中心に、王は座していた。
その背後では、召喚陣がまだほのかに光を残している。
王「西園寺零。貴様を再びこの地へ召喚したのは他でもない。貴様が、魔王を倒せた唯一の者だからだ」
西園寺「……随分と都合のいい話だな」
その声には怒りも、皮肉も、もう込められていなかった。ただ、凍てつくような静けさがあった。
美香「は!?ちょっとアンタら……この人を“無能”って捨てといて、今さら何ほざいてんのよ!!」
カナタ「そ、そうだよ!!西園寺くんは……西園寺くんは……あんなに辛い思いして……!」
ミュン「まさかとは思ったけど、再召喚の理由が最悪だったミュン……!人の心どこに落としてきたミュン……!」
王は顔色一つ変えずに続ける。
王「……奴が現れたのだ。“魔神バルゼア=ネメシス”。」
重い空気が、玉座の間に降りた。
臣下「魔王など比にならぬ……この世界を滅ぼしかねぬ、原初の災厄です。我が軍の勇者たちも、次々と倒されました。もはや頼れるのは貴方しか……!」
西園寺「で、勝手に呼び戻したと。魔王には手を出せず、魔神にも負けそうになって……そのツケを、また俺に払わせるか」
カナタ「……西園寺くん……それでも、戦うの?」
一瞬の沈黙のあと、彼は静かに背を向けた。
西園寺「……魔王を倒したのは、俺の“ケジメ”だった。だが――」
一歩、歩を進める。
西園寺「今度の“魔神”は、お前らの“罪”だ。……だがな、それでも――」
彼は背中越しに言い切った。
西園寺「俺がやらなきゃ、誰も止められねぇ。だから、俺がやる。ただそれだけだ」
空気が、凍りついた。
誰もがその背中を、言葉もなく見つめていた。
【一方その頃、魔神の城】
異世界の空の底、黒い雷が渦巻く天空の城。禍々しい尖塔に立つのは、一人の男――魔神バルゼア=ネメシス。
バルゼア「……フフフ。また来るのか。“あの男”が……忌まわしき“失格の勇者”が……」
側近の怪人が、片手にあめ玉を持ちながら問いかけた。
怪人「ボス、今度はどんな悪事しましょうか?子供のあめちゃん奪います?それとも温泉地を買い占め――」
バルゼア「今はギャグパート控えろ。我は忙しい」
怪人「ひっ、す、すいません!」
バルゼアの目が、虚空の彼方――かつて己を葬った“拳”の主を捉えていた。
バルゼア「来い、西園寺零……。この世界ごと、貴様に絶望を刻んでやろう――」
【そして、決意の時】
重く、鋭く、時は流れ――。
焚き火の前。語り終えた西園寺の背中に、カナタがそっと声をかける。
カナタ「でも……僕も、戦うよ。西園寺くんと一緒に。僕だって、もう逃げない」
アンジェ「……カナタさんが男の子だったとか、もうどうでもよくなってきましたわね……。今は“誰が戦えるか”の話ですもの」
ミュン「いよいよ話がシリアス成分多めミュン!ここまで来るとはミュン……タイトル詐欺になりそうミュン!」
カナタ「いいんだ……タイトルなんて……この拳で変えてやるッ!!」
ミュン「誰の影響受けたミュン!!?」




