第2話「告白されたんだけど!?バレたら終わる魔法少女生活!」
――それは、帰りの教室でのことだった。
「ねぇねぇ彼方! 昨日のニュース見た!? 魔法少女! 超可愛かったわよね!!」
幼なじみの朝比奈美香が、目をキラキラさせて僕の肩をガクガク揺らしてくる。
同じクラスで席も隣。幼稚園からの腐れ縁で、サバサバした性格。
僕の中では、“唯一まともな感性を持ってる女子”だと思っていた。
昨日までは、ね。
「え、あ……うん。た、たまたま見たよ」
「もう、あの子マジで天使だった! 髪ふわっふわで、声もちょー可愛くて、あの『アメ返してね?』のセリフ! ふにゃっとした笑顔! まさに癒し系女神って感じ!!」
「……そ、そうかな」
完全に僕の変身後の話だよね!?
それ、100%僕だよね!?
頭の中で警戒ベルがビンビン鳴り響く。
もし正体がバレたら終わりだ。
男だって知られたら、ネット民に魔法ステッキでボコボコにされる未来しか見えない!
「しかもさ、ちょっと影があるっていうか……なんか“秘密を背負ってる感”がよくない!?」
ないないない! 背負ってるのは違和感だけだから!
放課後。
僕が教室で荷物をまとめていると、窓際の空間がビリッと裂けて、ミュンが顔を出した。
「今日も怪人が出現したミュン。出動準備ミュン!」
「また!? ていうか怪人ってそんなハイペースで湧くの!?」
「今日は“勝手に看板を逆さにする怪人”ミュン!」
「地味っ!!」
しかも現場は商店街の八百屋。
「やおや」の看板を逆さにしたって、結局「やおや」だよ!? ひらがなの限界!!?
とはいえ、拒否権はなかった。
渋々変身し、例のドレスで現地へ直行。
案の定、ドタバタはあったが、必殺技《ハートリボン・スプラッシュ!(仮)》でなんとか解決。
看板は元に戻り、怪人は光とともに消えていった。
……そして。
帰ろうとした僕を、商店街の裏路地で待ち構えていたのは――
「カナタ!」
――美香だった。
「ひっ!?」
彼女は、僕の魔法少女姿をまっすぐ見つめ、頬をほんのり赤く染めている。
「助けてくれて……ありがとう。ずっと、言いたかったの。私――カナタのこと、好き!」
「ぶふぅッ!!!!?」
何がどうしてそうなった!?
彼方(魔法少女Ver)は完全にフリーズ。
「ま、前から思ってたんだ……。あのとき公園で、優しくアメを返してた姿、すごく素敵で……それからずっと、頭から離れなくて……」
わぁあああああ!? こっちが頭抱えたいよ!!
「いや、あれ……僕――じゃなくて! その、ありがとう……?」
声をわざと高くして取り繕う。
でも、美香の目は完全に恋する乙女モード。
(やばい……このままじゃ、変身中に告白されて、うっかり付き合っちゃったとかいうトンデモ展開になる……!)
どうすれば!? どっちも断れないし、でも僕、男だし!
その夜。自室。
「ミュン、どうするの!? 僕、幼なじみに告白されたんだけど!? 魔法少女として!!」
パジャマ姿で転げまわる僕の横で、ミュンはお気楽ボイスを響かせる。
「恋愛は自由ミュン。むしろ、魔法少女は恋してこそ光り輝くミュン!」
「それ、どこかのアイドル事務所の理論でしょ!?」
「ちなみに、百合は大人気ジャンルミュン!」
「ジャンルの問題じゃなぁぁぁい!!!」
頭を抱える僕に、ミュンは悪気ゼロで言い放つ。
「明日はもっと強い怪人が出るミュン! 恋と戦いの修羅場、いよいよ突入ミュン!!」
「やめてえええええ!!!!!」