第19話「失格の勇者と異世界の真実」
魔王「貴様!俺を破り、この世界を去ったと思えば――再び現れるとは…良い機会だ、雪辱を――!」
西園寺「一度俺に負けておいて、以前のままの強さたぁ……どういう了見だ」
(――ドンッ!!)
魔王「グァァァァァァァァ!!」
(あっけなく吹き飛ばされる魔王。その体は空の彼方へ――)
魔王「俺の出番これだけ!? ……だが、これで終わったと思うなよぉ~~~~~~~」
(※声がだんだん遠ざかり、やがて消える)
アンジェ「え、もう終わりですの!?は、早すぎますわ!!」
カナタ「また“例の展開”でワンパンだったよ……!」
ミュン「魔王なのに尺がショートミュン……」
【異世界の夜、焚き火のそばで語られる過去】
(古代遺跡のような石造りの神殿跡。その前で焚き火を囲む一同)
西園寺「……10年前。俺はこの世界に、召喚された」
ミュン「10年前!?なんか色々とおかしくないミュンか!?歳的な意味で!」
西園寺「そこは作品の都合というやつだ。ともかく、俺は召喚された」
ミュン「都合で片付けて良い問題ミュンか!?…まあいいか」
カナタ「召喚って……それって、異世界ものによくあるアレじゃ……」
西園寺「ああ。魔王討伐のため、国家が勝手に“異世界人”を引っ張ってくる、あの方式だ」
アンジェ「……違法では!? 誰が許可したんですの!?倫理観どこいったんですの!?」
美香「っていうか、それ現代日本よりブラックじゃない……?」
西園寺「召喚された俺たちは、“第88期異世界勇者育成プログラム”として集められた」
【回想:10年前】
(兵士たちに囲まれた十代の少年たち。制服姿の西園寺もその中にいる)
教師「おお!この者には剣の才能がある!」
兵士「こっちは魔法適性ありだ!」
教師「……おい、そっちは……なにも反応しないぞ?」
(西園寺に反応なし。結晶石が沈黙を保つ)
「才能なし。無能。不要。」
――そうして、彼は切り捨てられた。
【絶望と邂逅】
(吹雪の中、雪山に独り放り出された少年・西園寺)
西園寺(少年)「クソッ……俺だけ、なんで……」
???「剣も、魔法もない?ならば“気”を極めるがよい」
(現れたのは、髭を蓄えた胡散臭い格好の老人――)
仙人「わしの名は、ミ・ガント。世捨て人だが、ちと腕は立つ」
西園寺「……教えてくれるなら、何だってやるさ」
【修行!修行!修行!】
・断崖絶壁を逆さ登り!
・滝に打たれながら瞑想!
・巨大怪鳥と気弾キャッチボール!
・荒野を素手で三日三晩走り続ける!
ミュン(ナレーション)「なんか…修行シーンだけ作画が別アニメになってるミュン……」
【最強への到達】
西園寺は“気”を操る仙術闘法の達人となり、誰よりも速く、誰よりも静かに――
そして、誰よりも確実に。
魔王を、拳一つで討伐した。
【それでも報われず】
(王城の謁見の間。報告を聞く官僚たち)
「……なに?“無能”と切り捨てた西園寺が、魔王を討伐……だと?」
「記録に残せるか! 国家の面目丸潰れだ!」
「……強制送還しろ。記録は抹消。奴は――“失格の勇者”だ」
(彼に与えられたのは、栄誉ではなく、追放だった)
【現在】
(焚き火を囲む皆が、静まりかえる)
ミュン「……なにその超胸糞ストーリー!? もはや魔法少女とか関係なくなってるミュン!」
カナタ「でも……西園寺くん、強いだけじゃなくて……カッコいい……」
ミュン「いやいやボーッとしてる場合じゃないミュン!?この人、人生重すぎるミュン!」
アンジェ「っていうか、その背中の剣……何ですの?剣術使えないんじゃ……?」
(西園寺の背には、重厚な黒い大剣)
西園寺「……ノリだ」
ミュン「ノリかよッ!!!!」




