第11話「さらば我が青春の男子トイレ」
【朝・校舎の廊下】
カナタ「おしっこおおおおおぉぉぉおぉおお!!!!!!」
朝の光を切り裂くように、制服の少女が全力疾走する。
カバンをぶん回しながら、カナタは切実な叫びを上げた。
カナタ「ヤバいヤバいヤバい……間に合わないっ……!あ、あそこだ!!」
目の端にとらえたのは、見慣れたマーク。
――男子トイレ。
ミュン「!? カナタ、待つミュン!!!!」
空中から飛び込んできたミュンが、血相を変えて叫ぶ。
ミュン「そっちはもう違うミュン!!!!!!!!!!!!
なにお約束回収しようとしてるミュン!?!?」
だが、カナタの体は止まらない。
ドア、バァン!!
ミュン「ああ…もはや手遅れミュン…」
【男子トイレの中】
カナタはいつものクセで小便器の前に立ち、スカートをめくり、下着を下ろす。
だが、次の瞬間――
「………あれ?……ない」
「……あれれ?……ない!?」
手が、空を掴んでいる。
そこにあるはずの“何か”が、ない。
カナタ「……そうだった――」
「おち○ちん切っちゃったんだったーーーーーー!!!」
天を衝く絶叫が、タイルの壁に木霊した。
【騒然とする男子トイレ】
男子生徒A「きゃぁぁぁぁああああああああ!!!!」
男子生徒B「イヤァァァァッ!見ないでぇ!もうお婿にいけない!」
カナタ「そっちが悲鳴あげるのおおおおお!?!?!?」
ドアがバァァンと開かれる。
そこには美香の姿が。
美香「カナタ!あんたはもうこっちでしょ!!」
そう言ってカナタの手を引っ張り連れて行く。
男子生徒C「もっとイヤァァァァァッ!!」
【職員室前】
教師「君……一体どういうことかな?」
カナタ「いや、ボクもびっくりして……いや、私もびっくりして……うう……(涙)」
ミュン「カナタ……もう男子トイレは卒業ミュン……
いやむしろ強制退学ミュン……!!」
【放課後】
美香「あんた、もう女の子なんだから、気を付けなさいよ!?」
カナタ「うう…ごめんなさい…」
なんだかんだと、カナタを放おってはおけない美香であった。




