第1話「魔法少女カナタ、爆誕!?僕、男なんだけど!?」
ちょっと重い話を書いているので……気分転換に……。
申し訳ありません!
ワタクシ、またまたやらかしました。
こちらの作品は、以前書いた作品を少し手直ししたものなので、既に書き終わっています。
他の作品に影響はありませんのでご容赦を。
朝――。
鏡の前で拳を握る僕、大空彼方は、今日もまた一つ、強く決意していた。
「よし……今日こそ“男らしい”って言われる!」
握った拳をぐっと突き出し、眉を寄せて鏡を睨む。
描き足した太眉に、動画で練習した低音ボイスであいさつの予行演習。
「おはよう……うん、いい感じ。これならクール系男子いける……!」
――と思いたいけど。
鏡に映るのは、ふわっとした栗色の髪、透き通るような白い肌、ぱっちりした大きな目。
どう見ても“女の子”だ。
いや、僕は男だ。中身は完全に男なのに、どうして外見がこうなるんだ……!
心の中で嘆きながら、制服に袖を通して家を出た。
通学路、すれ違う近所のおばちゃんににっこりされる。
「彼方ちゃん、今日も可愛いわね~!」
彼方“くん”だってばああああ!!!
心の叫びは、今日も誰にも届かない。
学校でも状況は変わらない。
教室に入れば女子グループに取り囲まれ、
「彼方ちゃん、今日の服かわいい~」
「ねぇ、今度一緒にメイクしよ?」
「彼方ちゃんって彼氏いるの?」
僕は男だって、何度言わせる気だああああ!!!
“男らしくなりたい”――ただ、それだけなのに。
何をどう頑張っても「かわいい」で片付けられる日々。
僕の青春、どこ行った!?
そんなフラストレーションを抱えたまま、放課後。
僕はコンビニでアイスを買い、公園を抜けて帰ろうとしていた。
そのとき――奇妙な声が聞こえた。
「うわああん! あめちゃん返してー!」
声の主は泣き叫ぶ子ども。
その目の前には……ふわふわでドロドロで、ぬいぐるみが溶けかかったようなナニカが、子どものアメをむしゃむしゃと食べていた。
「……怪人?」
思わずそう呟いた直後。
「待ってたミュン!! 君、魔法少女の資質があるミュン!!」
空から降ってきた謎のマスコット――
丸っこくてウサギにもネコにも見える正体不明の生き物が、僕の肩に着地した。
「は? なにこれ、誰!?」
「名をミュン! 怪人を倒すため、魔法少女を探していたミュン! 君こそ選ばれし者ミュン!」
「いや、ちょっと待て、僕、男だけど!?」
「…………え゛」
ミュンの顔が、突然劇画調になった。
しばしの沈黙――。
「……やむを得ないミュン。背に腹はかえられぬミュン。この際、コレでいいミュン」
「“コレ”って何!? 僕、物扱い!? ひどっ!!」
「はいはい変身ミュン!!」
「ちょ、待っ――えええええっ!?」
光が弾けた。
気づけば僕は、フリルがふわふわした可愛いドレスに身を包み、手にはハート型のステッキ。
足元までピンク。声も高い。鏡に映るのは、完全に“魔法少女”。
「……なにこれ。どっから見ても女の子じゃん……!」
「完璧ミュン!これは売れるミュン!」
「売らないでえええええ!!」
そして始まる、アメ泥棒怪人 vs 僕――魔法少女カナタ(仮)の戦い。
とはいえ、何をどうしていいか分からずドタバタ。
怪人も「アメが好きすぎて……ごめんなさい……」と涙ぐむ。
「なんか……ちょっと可哀想になってきたんだけど……」
「関係ないミュン!ヤッてやるミュン!タコ殴りにして簀巻きにして川に流すミュン!」
「極道か!!」
結局、ステッキから謎の光線が発射され、怪人は無事(?)浄化された。
子どもから「ありがとう、お姉ちゃん!」と満面の笑みでお礼を言われる。
「……僕、男なんだけど……」
その夜。
自宅のベッドに突っ伏しながら、僕は頭を抱えていた。
「どうしてこうなった……?」
スマホにはすでに「謎の美少女魔法少女現る!?」の噂が拡散されていた。
ミュンはというと、ちゃっかり僕の枕元でくつろぎながら、得意げに胸を張る。
「明日も怪人退治ミュン! 今度はもっと派手にヤッてやるミュン!」
「……ああ、僕の男らしい青春が遠ざかっていく……」
この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件などには一切関係ありません。
また、本作には、性自認やアイデンティティに関する描写が含まれますが、
いかなる差別や偏見を助長する意図は一切ありません。