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旧式艦長ヨーマ ~その軌跡の始まり~  作者: Hekuto


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第43話

 修正等完了しましたので投稿します。楽しんでいってね。



 謎の宇宙船の艦内通路を格納庫へ向かって移動するヨーマとナンシュ、その一方で船の乗組員は慌ただしくなっていた。


「おい大変だ!」


「どうしたの?」


「独房に閉じ込めていた奴が居ない。ドアが開いてたぞ」


 なぜならヨーマが独房から消えたからだ。


 赤紫色の髪をポニーテールに結んだ女性の言葉に、周囲は驚きの表情を浮かべる。なにせ独房は人を閉じ込めておく部屋であり、内側から扉を開くことは出来ない。爆弾で爆破でもしない限り開かない扉が、破壊の形跡もなくただ開いていたのだから、彼女の焦りも仕方ないだろう。


「なんだって!? ……そんなの居たか?」


 しかし、そんな驚きに満ちた艦橋の中でとくに驚いていない男が一人。それはレクスと呼ばれていた少年で、一瞬驚きはしたものの、それは周囲の驚きに同調しただけであって話の内容を理解したものでは無かった。なんなら独房を使っていた事すら忘れていたようだ。


「おま、お前の担当だろが!」


「は? え? ……そう言えばそうだった」


 しかもその独房にヨーマを入れたのは彼である。それで覚えていないはあまりに都合がよすぎるが、どうやらそれは冗談の類ではなく素で忘れていた様子だ。


 しばらく百面相を見せていたかと思えば、目を大きく見開いてようやく思い出した彼に、周囲の女性たちは驚きを通り過ぎて呆れの感情に包まれていた。


「そうだったじゃないわよ、あんた今まで忘れてたの? 何度もあの子たちが会わせろって言ってたじゃない」


「そんな事言ってたか? まぁいいや、早く探して捕まえとけよ」


 興味があることしか覚えておくことができないのか、メテシュたち女性の世話はじっくり観察するほどに必死であったにもかかわらず、男であるヨーマに関してはその存在自体を頭の中から消してしまっているレクス。


 彼は責められたことにムッとした表情を浮かべると、自分は関係ないと言った調子で投げ槍に指示を出すと、艦橋の上座である艦長席に深く座り直し、飲料ボトルを手に取って勢いよくチューブを吸うと、口の中を飲み物でいっぱいに満たすのだった。


 そんな様子に呆れるのはその場の全員、特に報告のために走って来た女性は大きく溜息を漏らす。


「だからその担当もお前だろ、まぁ探しはするが」


「マザー知らない?」


 そもそもヨーマに関する対応担当はレクスである。何かあれば探すのも彼の仕事だ。


 それを呆れながらも、自分のスペースに座って監視カメラを起動させる赤紫色の髪の女性は面倒見がいいのか、それとも今の状況に危機感を感じているのか、未だ暢気に飲料ボトルのチューブを噛んで口元で遊ばせるレクスの声に、彼女はもう一度溜息を吐く。


「……さて、今は貴方達だけで仕事をするという事で最低限の機能しか動かしてませんからね」


 マザーと呼ばれて現れたのは、大きな女性のホログラム。艦長席の後方に置かれた大きなホログラム投影装置の中で柔らかい笑みを浮かべる女性は、遠回しに質問に対する回答を拒否する。


 その答えを、その場にいる少年少女達は特に不満を抱くことなく受け入れると、それぞれのスペースでそれぞれに艦内の監視カメラ映像にアクセスを始める。


 現在は海賊から隠れて息を潜めている状況であるため、周囲に位置がバレるような装置の運用は出来ない。そのため、彼女達には艦内の監視カメラ映像の目視により、ヨーマを探すことしか出来ない。あとは実際に艦内を歩いて探す方法であるが、その場にいる五人で全ての乗組員である彼らにとって、それはあまりに効率が悪い。


「そっかー、とりあえず探すか」


 一斉に監視カメラを確認し始めた少女達を見回すレクスは、眉をこれでもかと顰めると、渋々と言った様子で席を立ち、脱走したヨーマを探すために大きく長い溜息を何度も吐きながら艦橋を後にする。


 そんなため息が聞こえなくなってからも、監視カメラの映像を確認する少女達、そんななかぽつりと疑問を含んだ声が漏れ出る。


「ねぇ」


「どうした?」


「リーダーが忘れてたって事は、今までその人どうしてたの?」


「え?」


 何でもない、ふと思い浮かんだ疑問の声に、監視カメラを調べる手が一斉に止まり、疑問の声を呟いた操舵席の左後方に座る少女は、顔を上げて目を見開くと、三人の少女に目を向けながら小さな声で問いかけた。


「……誰かお世話とかした?」


 声が聞こえた方に振り返った操舵席の少女は、釣り目がちな目を疑問で歪めて周囲に問いかけるが、その視線を受け止めた疑問の発信源である黒髪おさげの女の子は勢いよく首を横に振る。


「あたしは知らないよ」


「……私も、知らない」


 首を横に振って不安そうに視線を横に投げた先には、ヨーマの脱走に気づいた少女、こちらも知らないと肩を竦めると、みんなの視線が集まる中央のスペースで埋まる様に座る少女、こちらも視線を少し上げて知らないと返す。


 そう、この場にいる四人の少女は、コンテナから出て来た男性であるヨーマの姿までは確認しているものの、その後どうなったかを知らないのである。何故なら相手が男性である事から、自然と担当がレクスに決定したからだ。


「……」


 視線は最初に発言したおさげの少女に集まり、少女は無言で操舵席の方に視線を逸らす。何か考えがあって逸らされたわけではなく、助けを求めるように思わず逸らされた視線であるが、その視線は無言の視線で返され、戸惑う黒髪おさげの少女に向かって三人の視線は収束する。どの視線も気まずげで、硬く、僅かな焦りを含んでいた。


「え、えっと……じゃ、じゃあその、食事とか、誰も、与えてない…………て、事だよね?」


「「「…………」」」


 突然集まった視線に少し驚きながらも、言葉を探し話す少女の、か細く途切れ途切れの声に周囲の空気は固まった。


 すでにコンテナを収容してからまる一日以上が過ぎ、ようやく艦内の空気も落ち着いてきたところである。そこに来ての脱走騒ぎ、どうして今頃になって脱走なんてしたんだと言う不満でいっぱいの少女達の心に、脱走に至る必然性の冷たい声がした。


「マザー、独房のログは、ある?」


 固まった空気の中で最初に声を上げたのはおさげの少女。椅子を回して後ろを振り返ると、独房の監視ログを求め、その求めにマザーは微笑みながら指を振って見せる。


「はいこちらに」


 優しい声と共に指先から現れた立体映像は鳥に姿を変えると、おさげの少女の操作する空中ディスプレイに飛び込んでファイルデータに変換される。


「私も見る!」


「あたしにも見せてくれ」


 慌てて他の少女も自分の席から立っておさげの少女の席に滑り込む。お椀型のスペースから這い出した少女が、おさげの少女の腰に抱き着く様に顔を出すと、丁度ログが展開された。


 そこにはコンテナを収容した時間からこれまでの独房使用状況が記されている。内容はとてもシンプルで、読み込むほどの内容は記載されていない。なにせそこには、コンテナを収容した日に扉を開けて利用が開始されたという文字の他には、小一時間ほど前に扉が外から開かれたと言うデータしか残ってないのだ。


『…………』


 少女達の顔が、同じオレンジ色の目を見開いた状態で固まってしまう。


 レクスに対する不満と怒号が響き渡る三秒前である。





「やっと着いた」


 今何か聞こえた気もしたけど、それより今は水だ。見つかる前に水を確保したい。


「お疲れ様です。ここは無重力エリアなのですね」


「一応低重力エリアではあるけどな、通路と違って移動しやすくて助かる」


 低重力と無重力で度々論争が起きる。でも俺はその辺気にしない、重力の有無なんて大体で良い。でも教法通りであれば艦内における格納庫は基本的に極低重力である。


 ちょっと指で壁を押せばそのままゆっくり体が反対方向に押し出されていく。足の爪先だけ地面に残して滑るように進めば、格納庫の景色が広く変わってくる。


「あ、艦載機ですよマスター。あれで逃げますか?」


「逃げるにしても今じゃないけどな、ずいぶん古めかしい艦載機だな」


 型番は解らない。俺も男の子としてミリタリーにはそれなりに造詣があるけど、宇宙船の艦載機すべてのデータが頭入っているヲタクではない。知り合いにそういう人種の人間もいたけど、あれは脳みその構造からして何か違うのだと思う。


 きっと彼なら今見た瞬間に型番からカタログスペックまですらすらと出てくるだろう。俺にはただの古めかしい感じの小型艦載機にしか見えない、一応武装は付いてるみたいだけど、兵装は最低限みたいだ。


「骨董品かな? ナンシュの同期かもしれないぞ?」


「えー? 私こんなに薄汚れてませんよ?」


 戦前か戦後のレストア品とかよく海賊が使うらしいけど、あの奴隷船でもそういうの売ってあったのかな? 嫌いじゃないから見て見たかった。


 艦載数はそれなりだけど、どれも動かしてますよって感じじゃないなぁ? 無人利用前提? それにしてもちょっと汚いな。ナンシュが言う通り薄汚れているという表現がぴったりだ。


 ちょっと調べてみるか。


「まぁそこは物質の運命だから……動きはするけど、船体表示がほとんどイエローだな? 整備してないのか」


 外側から船体状況を調べるパネル位置は現代機と変わらない、そんなに古くないのかな? それにしてもボロボロだ。こんなんじゃ怖くてとても乗れない。


「これで逃げるならコロニーやガーデンシップの目の前で出ないと怖いな」


「爆発しちゃいます?」


 爆発は……するかもしれない。少なくとも長距離をかっ飛ばしたらすぐにエンジンが動かなくなりそうだ。


「少なくとも戦闘機動は無理だな、骨格までイエローじゃ空中分解しちまうよ」


 ゆっくり安全運転推奨だな。とても本来の役割を全うできる様子じゃない。ドッグファイトするように急旋回したら慣性に負けて半分にもげるんじゃないだろうか。いや、クランクしただけでも警告表示がでるかもしれない。


「整備できないんですか?」


「出来るけど、予備パーツ無しじゃ経年劣化はどうにもできないなぁ」


 俺だって宇宙育ちの男の子だ。決して男の娘ではない。男の子なんだから艦載機の整備くらい出来ないことも無い。でも修理は無理である。予備パーツに全部交換なら出来るかもしれないけど、海賊にバレずにここでそれをやれというのは無理筋だ。絶対バレるし時間もない。


 諦めて艦載機のボディを押すとそのままゆっくりと進んで反対側の壁に背が着く、目的地まではもう少し。


「こっちはインテロか、一応整備はしてあるけどこっちも古い」


 壁面収納に円柱型の低重力下用インテロが整然と並ぶ、こういう光景には思わず美を感じるが、所々キズが目立つ。しかしそれもまた良い。


 ……熱が上がって来たかな? 少しテンションがおかしくなってきた。いや元からか? 嫌いじゃないから仕方ないね。


「とりあえず水だ。格納庫の内装も知ってる船と同じだから多分あっちに水がある」


 踏み込んだ足が滑る。ちょっと危なかったけど、何か踏んだような感触だった。ゴミか何かか、そうなると清掃状況は微妙なところだな、水がちゃんと補充されている良いけど。


「……あ、もう気を付けてくださいよ?」


 ちょっとよろめいただけでナンシュが過剰に心配してくる。その声も嫌いではない、短い間に随分と今の環境を気に入ってしまったようだ。


 話し相手が居るだけでこうも気持ちが変わるとは……俺は弱いな。



 いかがでしたでしょうか?


 格納庫に到着のヨーマ、どうやら彼はミリタリー物が好きなようですね。


 目指せ書籍化、応援してもらえたら幸いです。それでは次回もお楽しみに!さようならー

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