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旧式艦長ヨーマ ~その軌跡の始まり~  作者: Hekuto


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第42話

 修正等完了しましたので投稿します。楽しんでいってね。


「無いな」


 無い。


「ここもダメですか」


 何もない。あった形跡もない。いや、固定金具が壊れている場所や、壊れてなくても長いこと触った形跡がない場所はあった。ただ、そこにあったであろう非常用の水が入ったボトルや簡易食、医療キットなどは何もない。


「非常食取り付け金具はあるから、やっぱり知ってる駆逐艦と同じ系統だと思う」


 しかし、少なくともこれで俺の知っている船と同型艦である事はわかった。こういった基礎部分は大昔から変更する必要がないのでシリーズが一緒なら大抵設計図もコピペである。手抜きと言われるかもしれないが、わざわざ変える必要もないだけだ。


 ちなみにうちの星の再生技術研究所だと、少しでも変化を入れようとみんな独自性を入れて来るらしいが、その所為で大半が設計段階でのエラーで泣きを見るらしい。やはり先人の設計は合理性があるからこそ、その形なんだと思う。


「それでないって事は、真面な軍艦じゃなさそうですね」


「確かにね。もしこれが正規軍の艦艇だとしたらこの船の乗組員はとんでもない不良乗組員だし、整備してる軍の整備課も随分やる気がないだろうな」


 非常用物資の詰め替えを忘れる軍人は軍人にあらずとか言う人もいるくらいに、こういった物資の管理は重要視される。それは居住の宇宙船も一緒で、軍より緩いとは言え、年に数回から月に一回定期的に全体点検がされるくらいにはしっかりしている。俺も小さい頃は学園での定期交換を経験したものだ。交換後にみんなで乾パンを食べた思い出がある。


 なにせ俺達は地上ではなく、一つ壁の向こうが何も無い宇宙と言う場所に住んでいるわけで、何かあった時、地上に住んでいる人間のように大地は助けてくれないのだ。事故や事件なんかで宇宙船のどこかに閉じ込められた時、宇宙船の外に放り出された時、偶然どこからか食べ物や水が湧き出ることも流れ着いてくることもない。


 厳密には絶対にないとも言えないが、奇跡を願うよりも建設的なのが偶然をあらかじめ用意しておく緊急用物資。昔々の事故による教訓から、宇宙船には船内あちこちにそういった非常用品が保管されるのが常識である。


「いるんですかそんな正規軍?」


「うーん、聞いたことないな? 食い物周りは特に厳しいからね。食い物無くて暴動とか起きたら大変だし、整備課も特に厳しく見るところじゃないかな?」


 そうなると、この船は軍用艦にもかかわらず、正規軍の船ではないことになる。拾い物を海賊が使っているのかとも思うが、いくら海賊が荒くれ者だとしても、まったく何も保管してないというのは、考えにくい。


 艦の利用マニュアルがないのか、それとも彼ら独自の保管方法があるのか、はたまた非常用品を揃えられないくらい貧乏なのか……うーん、どれもありそうでどれも違和感があるなぁ。


「食べ物の恨みは怖いですね」


「お化けも食い物の恨み系はしつこいらしいからね」


 これも現代の非常用品の厳密化に繋がる有名な話だ。事故で艦内に閉じ込められ、非常用品に食べ物や水がなかったばかりに餓死した船員が、そのあまりの辛い死に際に残った負の感情でアンデットに変質、艦内を彷徨い船員を次々と襲ったという有名な話だ。


 初等部でも中等部でも必ず語られる有名な実話で、あれを聞いて夜眠れなくなる子も多いとか、しかし実際に起こり得る話なので仕方ないだろう。正直なとこ俺もその手の話は得意ではない。


「わかりますわかります! 私に記憶されているデータにもフードコロニー怪談や幽霊地帯の食人船なんていう話がとても多いです」


「やめてくれ、怪談はあんまり得意じゃないんだ」


 眠れなくなったらどうしてくれる。ただでさえ体力がギリギリな状況で眠る事もできなくなったらそれこそ俺がアンデットになっちまうぞ。そこんとこ責任とれるんですかねナンシュさん、責任とれないなら怪談とかやめてくれます? タイトルの時点でちょっと気にはなるけどさ。


「宇宙に出た人類で得意な人間などいないのでは?」


 それはそうと言いたいところだが、世の中と言うのは広く変わった人も多いのだ。普通の人からすると、とても信じられない癖を持っている人間なんてごまんといる。


「中には好きな奴もいるさ、実際に経験したらそうも言ってられないだろうけど、怖いもの見たさってやつだな」


「馬鹿ですね。宇宙で一番厄介なのがアンデットだというのに……」


 それはそうだと思う。知り合いもアンデットなんてと笑い飛ばしていたが、そのあとすぐ実体験してからか、怪談の気配を感じるたびに神妙な表情を浮かべるようになった。


 しかし、宇宙で一番厄介なのがアンデットと言う意見には少し疑問がある。アンデット以上に広がった人間や、その中の貴族と言う生き物も大変面倒であるし、脅威と言う意味ではアンデットと肩を並べる者達が居るからだ。


「同列の精霊が言うと説得力がるのか無いのか」


 それは目の前のナンシュさんも含めた精霊種である。アンデット同様に宇宙と言う極限の環境でも何ら問題なく生存できる強靭さ、物理的な攻撃が一切通用しないと言う共通性、またアンデット以上に平均的に高い能力。


 電子精霊であるIS以外と広大な宇宙で遭遇する機会などそうないことだけど、怒らせでもしたときの脅威度ではアンデット同等かそれ以上である。


「そんな! こんなに献身的なISを前にしてそんな事言うんですか!?」


「実際に人類を宇宙の藻屑に変えて来たからな」


「その辺の話は詳しく聞きたいですね」


 知らないのか、知っていて聞きたいのか、少し不満そうにも見えるナンシュはじっと青い水のような色の瞳で見つめて来た。


 詳しく離すと大変長くなるので、それは次の機会に取っておこうと思う。あれを話すなら戦前の人類の歴史やら、今の人類に続く戦争の出来事など長い話をしなければならない。たぶん今から話したら1割も話さないうちに俺の体力が無くなるだろう。


「生き残れたらな……えーっと、こっちだな」


 今は生き残ることが先決である。知ってる船と似たような船であればその全体の構造も大して変わらないと思う。増改築していればその限りではないだろうが、非常用品もケチる海賊が出来るとも思えない。あるとしたら別の船とのニコイチ修理くらいだろうか。


「どこに向かってるんですか?」


「格納庫、あそこには必ず水があるはずなんでね」


「非常食は諦めたんですね」


 諦めた。十カ所目で心が折れたというか、これ以上無駄に探し回るより、少し遠くてもほぼ確実にあるだろう物を探すことにした。シールドスーツに組み込んだ姿勢制御系の魔法が思った以上に優秀なので、さらに重力が軽くなる格納庫でも動きに支障は出ないと思う。


「ああ、確実性を優先するよ。流石にこれ以上水分を取れないと死んでしまう」


「水を集める魔法も探しておくべきでした」


「確かにな……」


 それはちょっと欲しいと思った。そんなに珍しい魔法ではないけど、船の中でそれをやるとなると、割と難しい部類の魔法になる。何故ならすでに船には艦内の空気や水を制御する魔法が組み込まれているので、その影響下で同じような魔法を使おうとすると干渉しあってうまく発動しないのだ。


 そういう意味では、今も使っている姿勢制御の魔法は、シールドスーツに刻める刻印の容量の大半を使うだけあって大変優秀である。周囲の重力制御魔術の影響をほとんど受けていないと言ってもいいんじゃないだろうか。


 無事帰る事が出来たら、刻印術式を整理して小型化できないか試してみよう。


「でもよく迷いませんね?」


 頬をつんつんされる感触に視線を向けると、かまえと言いたげな表情のナンシュ。どうやら少し考え込んで無言になっていたようだ。実に我儘な小動物である。


「記憶の中の駆逐艦と構造がほとんど変わらないからな。縁なのかなんなのか」


「なるほど……」


 懐かしい記憶がよみがえってくる。まだずっと若い頃に見たあの光景が昨日見たかのように思い起こされる。


 でもこういうのって老人的な感覚らしいので、もっと後に取っておこうと思う。高々30年ちょっと生きたくらいの若者が陥っていい感覚ではないだろう。せめて100年くらい歳をとってから感じたいところだ。俺はまだ若い、まだまだこれからだ! ……いかん、妙なフラグが立ちそうだ。


 ナンシュに目を向けると何か考え込んでいたので、ここから先はずいぶんと静かな時間であった。



 いかがでしたでしょうか?


 水を求めてさまようヨーマ、見知った船と同じだと必ずあるという水を求めて広い船の奥へと進むようです。


 目指せ書籍化、応援してもらえたら幸いです。それでは次回もお楽しみに!さようならー

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