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旧式艦長ヨーマ ~その軌跡の始まり~  作者: Hekuto


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第40話

 修正等完了しましたので投稿します。楽しんでいってね。



「ゴッホゴホッ! ……つらい」


 水が飲みたい。どのくらい時間が経っただろうか? そんなに経ってないようにも、もう一日経ったようにも感じる。流石にそんなには経ってないと思うけど、寝てたし部屋はずっと明るいしで時間感覚がさっぱりだ。


「高熱までは出てないみたいだけど、流石に何も食べてないのがきついな」


 いくら魔素を循環させたところでそもそも栄養が足りないので、体調が改善する以前の問題である。これがまだ魔法が使えるなら全然話が違うんだけど、もう何か全裸にも慣れて来たな……変な性癖に目覚めたらどうしてくれるんだ。


 まだ余裕があるな。


「すぅはぁ、すぅはぁ……音が遠くに聞こえる。せめてシールドスーツだけでもあれば、メテシュとロナに使った治療系の刻印術が使えるんだが」


 活性化系の治療用刻印術を作っていたのはファインプレイだけど、シールドスーツがないと何ともならない。


 背中が温い。


 ちょっと場所を変えよう。少し動くだけでもきつくなってきた。あちこち痛い。だるい。


「壊されてないと良いけど……」


 あれは試作品と言うよりは実験機と言う意味合いが強いものにさらに手を加えて、量産予定の品質はクリアしているけど、価格は量産品ほど懐には優しくない。そもそも一品物と変わらないので、ドゥム兄は壊しても構わないとは言ってたけど、そういうわけにもいかないだろう。


 家族は今頃何をしてるだろうか、この年になってホームシックか? 勘弁してほしい。家族のみんなが喜びだすのが鮮明に想像できる。いやこれは走馬灯だろうか。


「はぁ……いかん、ため息が止まらない。まさかこんな死にかぁだ!?」


 星が、世界に星が、火花で満たされる……。


「マスター!? 大丈夫ですか! 頭凄い落としましたけど、陥没は……してないですね」


「うぅ……ナンシュか、てかシールドスーツ?」


 突然の浮遊感と衝撃で星の飛ぶ視界に、ひらひらと舞うシールドスーツを背にしてナンシュが心配そうにのぞき込んでくる。暗い青色の中で舞うワンピースが何とも神秘的ではあるが、勝手に人の後頭部を陥没させないでほしい。


 と言うかどういう状況だ? 身体がうまく動かないし頭が痛い。


「はい! あなたのナンシュが助けに参りました!」


「そうか、ありがとう。とりあえず寒いからシールドスーツが着たい」


 深く突っ込む元気がないのでスルーしたけど、恥ずかしいセリフをこうもスラスラと言われたら、そのうち慣れてしまいそうだ。


「はい今すぐに! あ、でもちょっと待ってください? ここまで来るのに刻印術を全部慣性制御に変えてしまったので、すぐに書き換えちゃいますね!」


「…………流石ISだな、そこまでいろいろ出来てしまうのか、畏れられるわけだ」


 正直、嫉妬してしまう。家族の中でも一番能力の低い俺でもと色々頑張っているものの、出会ったばかりの彼女は軽々と全てを超えていく。比べる意味もないほどの相手が、自分のために必死に働く姿は、頼もしくもあるがどうしようもない嫉妬の温床にも感じる。


 まだ出会ってそれほど接したわけではないけど、肌で分かる。彼女に悪意はない、代わりに感じるのは強い献身の気持ちだ。ちょっと気持ち悪いほどの献身は、危うくも思える。その姿に嫉妬するのは、余計に自分をみじめにするだけだろう。


「マスターの為ならなんだってしますよ」


「大人しくしててくれ」


 自然と出た言葉だ。しかし、そう言わないと彼女はどこまでも何でもしてくれそうで、それに甘えて駄目になる自分が見えた気がする。熱の所為で起きながらに、夢でも見始めたのだろうか。


「わかりました! 今まで通り大人しくしてますね!」


「……ん?」


「ん?」


 今まで彼女が大人しかったことなどあったであろうか、出会って早々マシンガントーク、さらにいつの間にか散歩に出てあっちこっちで拾い食い。拾ったものの整理整頓はせず、俺以外には基本威嚇の姿勢だ。さらにシールドスーツを遠隔操作してこんなところまで、今まで通りじゃ意味ないんじゃないかな。


 シールドスーツが体を包み始める。体を動かさなくても勝手に動く、デバイス内の魔法を使っているのだろう。うーん、指摘した方が良いのか、しない方が良いのか、指摘しても理解してもらえない可能性が高いと、僕の深層心理が言っている気がした。





 ヨーマたちの入ったコンテナを収容した宇宙船、彼らは海賊の追跡を逃れて小惑星の集まる宙域に身を潜めていた。そこは戦争により出来たデブリ帯の一つであり、かつての惑星の名残でもある。


 電磁波の乱れが数千年単位で続き、レーダーの働きを阻害するその一帯は隠れるには良い場所であるが、逆に言えば隠れる場所がそこしかないとも言える。当然海賊も探しているであろうから、見つかるのも時間の問題だ。


「ねぇ、この辺りの宙域ってアレ出るの?」


「……見たの?」


 そんなちょっとした休憩とも言える潜伏の間も、艦橋ではいつ何が起きてもいいように交代で周辺の警戒をしているようだが、その場にいるのは少女二人、暇があれば話に花が咲いても仕方がない。


 しかし、花が咲くとは少し違う雰囲気で振り返るライトブラウンヘアーの少女の問いかけに、くすんだ緑髪の少女は、自分の席に埋まる様に座ったまま、視線だけその少女に向け問い返す。


 表情の変わらない少女は、気の強そうな目が特徴の少女が見せる不安げな顔を見て、冗談の類ではないことを察したのか、体を彼女の方に向けると、無表情な顔で返答を待つようにじっと見詰める。


「変な気配がして……」


「やっぱり……」


「でるの!?」


 変な気配がしたという返事に納得する無表情少女、そんな彼女の姿に釣り目がちな目をしかめて顔を蒼くする少女。


 宇宙で宙域を気にしながら出る出ないとなれば、大体はアンデットに話である。特に彼女達が隠れているのは、元は人が住んでいたであろう惑星の残骸なのだ。幽霊の一人や二人出て来たとしてもおかしくはないだろう。


「私も変な気配を感じたから、でもそんな噂のある宙域じゃない筈だけど」


 しかし、お椀のような丸く深さのある座席の中、ブランケットに埋まる様にして座る少女は、今いる場所が曰く付きの宙域ではないと話し、それを再確認するように手元に引き寄せたキーボードを叩き、自分を包むように浮かび上がるディプレイを見上げるように目を向ける。


「何の話?」


 顔を蒼くしながら操舵席で震える少女と、ディスプレイに囲まれながら僅かに眉を寄せる少女。そこに三人目の少女が現れ、艦橋の妙な雰囲気に小首を傾げて声を掛けた。


「それが……」


 声を掛けられた瞬間、操舵席から僅かにお尻が浮くほど肩を震わせた少女は、首を傾げる動きに合わせて赤紫色のロングヘア―を揺らす少女になにがあったか話し始めるが、すぐに三人目の少女は問いかけたことを後悔するのであった。





 はぁぁぁ、シールドスーツ……あちゃちゃかい。


 シールドスーツは簡易的な宇宙服である。これに生命維持装置付きのヘルメットがあれば最低限の船外活動も可能だ。しかし可能なだけで推奨は出来ない。体温調整機能や身体防御機能などはあるものの、魔素切れを起こせすべての機能が停止して、ほぼただの服である。


 なので、宇宙船に乗ってる間は宇宙服とまではいかなくとも、与圧服くらいは着ていたいところだ。


「そう言えば、ここに来るまでの間に見つからなかったのか?」


 まさかシールドスーツ単体で活動できるとは思わなかったけど、ナンシュに説明されたら確かに可能であると理解した。理解したけど、それはたぶんナンシュがいるからであり、もしデバイスレベルでそれをしようとするならもっと大掛かりな装備にしないと無理だろう。


 少なくともデバイスからPCに変えるくらいの処理能力向上が必要がである。


「任せてくださいよ、このくらいのスニーキングミッションなんてことないですよ」


「……実際は?」


 そんな優秀なISであるナンシュさんが自信満々に無い胸を張っているが、どうにもその表情が気になる。何か隠しごとでもあるかのように頬がけいれんしているが、これは映像の乱れではないだろう。


 古代の英知の塊のようなデバイスは、ホログラムの投影解像度も非常に優秀で、とてもそのひくつきがノイズとは思えない。


「見つかりそうになって冷や冷やしました。あ、でも人がすごく少ないのでやりやすくはありましたよ?」


「素直でよろしい、三人は?」


 素直である。それよりメテシュたち三人の様子が気になる。ここまでくる間に何か情報を得ていないだろうか? 俺の事をサーチしてここまで来ただろうから、彼女達の位置も分かっているとは思うんだけど。


「無事だとは思いますよ? 随分扱いが良いようですし」


 言い回しが妙だが、まぁ扱いが良いなら良しとしよう。俺と同じような扱いなら救助に向かう必要もあっただろうが、やはり男だから雑に扱われたか、殺して分解してタンパク源にでもしようとしたのか、そんなところだろう。


「そうか、まぁ女の方が利用価値はあるからな、希少種みたいだし高く転売も出来るだろう」


 そもそも彼女達は希少種だし、そのぶん俺より生存能力は高い。たとえ裸で放置されても俺みたいに風邪をひいてしまう事はないだろう。あらためて言葉にすると自分が情けなくなってくるな。


「まったく、マスターの希少性が分からないなんて!」


「俺は希少でも何でもないだろう……少し休む、寝てから十分くらいで起こしてくれ」


「はい!」


 とても元気な返事だ。希少と言う言葉もきっと彼女の本心であろう。俺なんかのどこに希少性を感じているのか本当に解らない。俺みたいなスキル無しは昔の方が圧倒的に多かっただろうし、どこにその希少性とやらを感じているのか……考えてもわからんか。


 生命維持系の魔法のおかげで呼吸がとても楽だ。肺に空気が滞りなく送り込まれるこの感覚は、失って初めてありがたさを感じるな。じわじわと意識が沈んでいく、十分でどのくらい回復するか、休息効率マシマシ治療系の刻印だけインストールしたからな、想定より回復、しそう……。


「おやすみなさい。マスター」



 いかがでしたでしょうか?


 ナンシュが見守る中眠りにつくヨーマ、ギリギリで繋ぎとめた命の明日はどっちだ。


 目指せ書籍化、応援してもらえたら幸いです。それでは次回もお楽しみに!さようならー

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