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旧式艦長ヨーマ ~その軌跡の始まり~  作者: Hekuto


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第37話

 修正等完了しましたので投稿します。楽しんでいってね。



 弾け飛ぶ光線がモニターウォールに幾つも映し出される。それは船体を覆うバリアに接触した光学兵器の残光である。その残光が多ければ多いほど、攻撃を受けているという事であり、船員に現状を分かりやすく理解させる。


「コンテナ固定完了確認。ハッチの閉止……まだ?」


 モニターに映る警戒信号や音を頼りにして舵輪を動かし、フットペダルで船体角を細かく調整し、障害物を避ける操舵手の少女は、消えない後部ハッチの警告表示に小さく眉を顰めると、後方に座る少女へと目を向けた。


 そこには、表情の乏しいくすんだ緑髪の少女の席である。彼女の前にはアーム操作用のカメラ映像が浮いており、操舵手の少女の声に顔を上げるとすぐに操作パネルに視線を落とす。


「確認する……これは、湾口の取り込みアーム? たぶんさっきの衝突でもげた残骸が挟まってる」


 操作パネルでカメラの映像を切り替えると、そこには後部ハッチの扉を掴んだマニピュレーターが、慣性に任せて揺れて、あちこちにぶつかっている姿が映し出された。大きくアーム部分が動く度に、閉まろうとしたハッチが開き、また閉まろうとするも閉まり切らないので開くを繰り返している。


「ゴミ詰まりか? マザー、インテロで外してくれ」


「わかりました」


 マザーと声を掛けられたのは、レクスの後ろに浮かぶ大きなホログラム上で優しく微笑む女性。ふわふわと柔らかそうなオレンジゴールドの髪を揺らす彼女が手を振ると、ホログラム上にどこかの映像が映し出される。


 しばらく左右に揺れていた映像はインテロの視点のようで、半開きのハッチまでたどり着くと、複数のワイヤーを射出。磁気アンカー付きのワイヤーで自身の体を固定したインテロは、助けを求めるようにハッチを掴むマニピュレーターを掴むと、外すために引っ張り始める。


 その映像を自身の席にも映して見ていたレクスは、もう少しで外れそうな様子に身を乗り出す。


 その瞬間、


「うわっと!?」


「ぐえ!? ……ちゃんと操縦してくれ!」


 操舵手の悲鳴と共に起きた急な揺れによって体を前方に飛ばされ、体を固定するシートベルトで首を絞められ怒り出す。


「仕方ないでしょ! 重力ぐちゃぐちゃなんだから!」


 何が起きたのか、それはエクスマギレアの船体周辺で起きている重力異常に、艦橋部分が飲み込まれたことによる操作ミス。


 本来なら、一定の方向に低重力を維持することで、居住艦周辺での安全な艦船制御をおこなうのだが、その重力発生装置が狂ったことによって、彼らの船の前方には目に見えない小規模な重力井戸があちこちに発生、その向きも全くの出鱈目となっている。


「なんでこんなことになってるんだ? わかるか?」


「わからない」


「ぼろいからじゃないの?」


 シートで擦れた首を摩るレクスの疑問に、声を掛けられた方に居た黒髪おさげの少女は、少し驚きながら首を横に振り、その隣でしつこいマニピュレーターと格闘するインテロを応援していた緑髪の少女は、シートに深く座ったまま後ろを見上げて“ぼろい”からじゃないかと、どうでも良さそうに話す。


 他人の船の異常を考えても仕方ないことではあるのだが、レクスは気になるらしく、どうでも良さそうな少女に顔を顰めると、鼻息漏らして口を開く。


「ぼろくてこうなるんだったらこの船はどうなるんだよ? 骨董品だぞ」


「リーダー、失礼」


「……」


 しかし開いた口から飛び出た言葉はずいぶんと失礼な言葉だったらしく、緑髪の少女の指摘に周囲から言葉が消え、レクスの背後では笑みを絶やさないマザーが彼を見下ろす。心なしかその表情には影が差し、口角は柔らかな笑みと言うには少し鋭くなっていた。


「あ、ちが!? そう言う意味じゃなくて!」


 すぐに状況を察し、自分の失言に気が付いたレクスは慌てて後ろを振り向き、シートから体を乗り出して謝罪を始める。


「よっと」


「ぐええ!?」


 しかしその謝罪は、突然の大きすぎる揺れによって最後まで語られることはなく、シートベルトで首を絞められたレクスは、無理な態勢で衝撃を受けたことで体のあちこちが悲鳴を上げて悶絶するのだった。


 いくら重力制御が発展した宇宙船であっても、戦闘機動中は突然の衝撃や反転によりどんな慣性がかかるか分からない。


 “良い子のみんなは戦闘中、席から身を乗り出すのはやめましょう” そんなテロップがモニターウォールに流れる中、


「良い操縦ですね」


「やったー褒められた!」


 イイ笑顔を浮かべたマザーは、悪い笑みを浮かべる操舵手の少女を褒めると、手元に持ったクリップボードの書類に花丸と減点を書き込み、艦橋で騒ぎだす少年少女を優しく見守る。


 一方その頃、謎の船に回収された密閉コンテナの中では、気を失っていたヨーマが、デバイスから感じる微弱な刺激で目を覚ましていた。





 ……腕がビリビリする。


「うぅ……」


 ぼやけた視界が白と黒の二色に分かれている。頭でも打ったか? 視界不良とか致命的な損傷じゃないか、死ぬのかな。


「ヨーマ!」


「お、おう……どういう状況?」


 違った。


 視界いっぱいにメシュの顔があっただけだ。褐色肌が陰で黒く見えていただけか、視界が良好になって来たら周囲の様子もよく見え始める。頭を打って目が見えなくなったというわけではなさそうだが、状況が分からない。


 あと身体もうまく動かない。


「なんやけったいな輸送をしてくれてな? しっちゃかめっちゃかになってもうて」


 右足の上からネフの声が聞こえた。


 声のした方に顔を向けると、そこにはトイレの扉を足で掴んだネフが俺の足を両手で抱きしめるように掴んでいる。どういう状況? あとそれ以上顔を上に上げるのはやめてください、いくらシールドスーツ越しとは言え、息子に顔を埋められるのは恥ずかしい。


「なんとかみんなで体を固定してこんな状況だ。すまない、苦しいか?」


 今度はロナの声が聞こえる。左腕の上だ。認識すると左腕の二の腕に柔らかい感触を感じる。


 メシュの腕が絡む首を動かして左を見るとケツ……どうやら俺の左腕はロナのお尻に踏まれているようだ。痛くはないのだが、その態勢でお尻を押し付けて来ているので、俺の左頬が幸せ……にはなっていない。


 なぜならロナのお尻と俺の顔が接触するのをメシュの腕が防いでいるからだ。上を見ると、メシュがロナを睨み、睨まれているロナが困った様に俺を脇下越しに見下ろしている。


 反対側は壁、壁に押し付けられているが苦しくはない。


「いや、なんかあちこち痛いけど苦しくはない」


 苦しくは無いけど、体のあちこちが痛いのだ、ほんとどういう状況? 美女に体中抱きしめられてうれしいけど、それ以上の困惑でそれどころじゃない。


『…………』


「どうした?」


 あと、俺を見るみんなの顔が変である。なにかこう恥ずかしそうな――。


「マスターを散々お尻の下に敷いたから恥ずかしいんじゃないですか?」


「にゃ!?」


 猫かな? 今の声はロナか、確かに尻に敷かれている、それも悪くない。悪くないが、お久しぶりの声だな。


「おう、お帰り。ずいぶん長いこと居なかったけど何してたの?」


 本体は押し潰されたお尻の向こうにあると言うのに、ずいぶんとクリーンな声質だ。流石は戦前の高性能デバイスである。


「散歩って書き置きしたじゃないですかぁ。久しぶりの娑婆ですからね、娑婆とは思えないほど乱雑で汚い環境でもついつい長居してしまいました」


「そんなに汚かったか、俺も歩いてみたかったな」


 汚い町でも自由に出歩けるのは羨ましい限りである。是非ともその汚い街並みとやらを案内してほしかった。そうすれば、今頃もう少しマシな状況だったかもしれないのに……否、今は今で結構な素晴らしい状況かもしれない。


 なんだろう、なんだか昔の感覚に近い何かを感じる。痛みと疲れと困惑で、思考が少しやさぐれてしまったかな。


「是非是非!! 次は二人っきりでロマンティックなお散歩をしましょう!」


 ロマンティックな散歩か、興味は薄いけど悪くはない。オータムタイプの自然環境艦なんかいいかもしれないな。きっとおいしい秋の味覚が堪能できるだろう。今のチューブ食しか食べられない環境に比べればどれだけ天国か……やめよ、お腹が切なくなった。


 それに、視線が無視できないレベルになっている。


「ヨーマはん、この声は?」


 最初に我慢できなくなったのは俺の足に抱き着いたままのネフ。メシュの背後から金彩の綺麗な目でこっちを見ている。ちょっと怖い。ロナは俺の左腕からお尻を上げてくれたし、メシュも首から腕を外してくれた。それでも俺の体を床に押し付けたままではあるんだけど、目の前にデバイスを持ってくる。


 デバイスの向こうにロナの顔が見えるが随分と赤い。……お尻か、そんなに気にしなくていいとも思うけど、男には解らない何かなんだろう。それはそれとして、


「……俺のデバイスのISで名前はナンシュだ。騒がしい奴だが悪い奴……じゃないと思う」


 思う。なにせ付き合いが非常に短いので、性格を把握しているわけじゃないからな。


「そこは即答してほしかったです!? ……まぁ? 実際マスター以外の事はどうでも良いので、ほどほどに仲良くしてくれてもいいですよ?」


 目の前に小さな白いワンピースの少女が姿を現す。お前そんな機能もあったのか、でも俺以外にも見えているのだろうか? ホログラム装置なんて、豆粒みたいに小さなディスプレイしかないけど。


「ふむ?」


「ISって……うそやろ?」


「船のISと同じ?」


「あんな低レベルなのと一緒にしないで貰いたいですね! 私は最新式ですよ最新式!」


 三人もウロチョロする白いワンピースのナンシュを目で追っているから見えてるみたいだ。どういう原理で見えてるのか分からないけど、最新式と言われると疑問が生まれる。


「骨董品の中ではな」


「辛辣!」


 事実だろう。千年以上前に作られた機械はどう考えても骨董品である。性能的には俺のシールドスーツなんかよりはるか先を行って足元にも及ばないとしても、いや足下にくらい及びたいところだが、だからと言って年齢ばかり誤魔化せない。


 泣きべそ掻いてるけど事実である。それにしても可愛い姿になったものだ……おかしいな? よくこの女の子の姿がナンシュだと分かったな? なんでだろう……いやでも、このテンションの高い仕草を見ればわかるってものか。


 じっと見詰めると今度は照れだしたし、楽しいやつである。


「……精霊かぁっ!?」


「にゃ!」


「ぐえ!」


 また重力が!? いやこの勢いは車の急ブレーキのような―――。


 慌てるナンシュと宙に浮く三人の姿を最後に、俺はまた意識を失うのだった。



 いかがでしたでしょうか?


 ナンシュは無事帰宅できたようですが、ヨーマはまったく無事ではないようです。たいへんうらやまけしからん状況ですが、変わりたいとは思いませんね。


 目指せ書籍化、応援してもらえたら幸いです。それでは次回もお楽しみに!さようならー

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