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旧式艦長ヨーマ ~その軌跡の始まり~  作者: Hekuto


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第36話

 修正等完了しましたので投稿します。楽しんでいってね。



 ヨーマが気を失い、メテシュが彼の命をあと一押しで地獄に突き落とそうとして居た頃、その外はとんでもないことになっていた。


「私はまだ何も手を出していないのに、なぜかマスターのコンテナが荒ぶっている……」


 宙に浮く真っ白ワンピース少女ことナンシュの目の前では、トラクタービームの暴走によって搬送路を飛び出したコンテナがいくつも宙を突き進んでいる。宇宙に進出した人類は、高度な重力制御によって複雑な構造の船内であっても安全に人々が往来出来る。しかし、重大なバグが発生すれば、そこは瞬く間に阿鼻叫喚の地獄絵図と化す。


 そんな緊急時にも人の安全を保つ装置はあるにはあるが、そこは海賊船という所か、全身エアバック姿で飛んでいく人間も居れば生身で飛んで行く人間もいる。どうやらトラクタービームだけではなく、重力制御も同時におかしくなっているようだ。


「はっ!? これが世に聞くカーセッ……これは外部からの干渉? このあいだ見つけた重力制御装置への侵入者と同じ形式ですね」


 無数の人や荷物が飛び交う中でも、ヨーマのコンテナを見失わないナンシュは、おかしなことを言いながらも異常事態の真相に気が付く。それは以前に起きた大規模な重力制御装置の異常、その原因であるバグと今回のバグが同一の痕跡を残している。


 それはバグが偶然ではなく、何らかの意思を持って引き起こされたという事だ。


「よかった。てっきり私ったらマスターがマスター二世をお作りになっているものと、それでも私のマスターはマスター以外居ないので、二世とかどうでも良いんですけど」


 体をくねらせ頬を赤らめるナンシュは、真っ直ぐにヨーマの居る密閉コンテナへと落ちていく。その目は彼女の言葉とは裏腹に冷たく光っている。口から漏れる独り言も、楽し気であるがどこか冷たい。


 その間もヨーマの入ったコンテナは、トラクタービームからトラクタービームへと受け渡され、どこかへと運ばれる。それは事故によって予定とは違う場所に運ばれているというよりは、事故の中に故意が感じられる不自然な動きであった。


「しろい、おんな! うわあああ!?」


 自称、超高性能なISナンシュがその故意に気が付かないわけもなく、何かを掴んだのか目を細めると、前方から飛んで来たボールのようなエアバック人間を蹴飛ばし方向を変える。


「あれではマスターが大変なことになってしまいますね。……よし、ここで重力あっち向きにして」


 コンテナが向かう先とは違う方向に落下するナンシュが指を振ると、ヨーマの入った密閉コンテナが、周囲の落下物ごと急に方向を変える。その向かう先はナンシュが落下する先の壁で交差する位置だ。


 くるりくるりと周囲を見回しながら落ちるナンシュは、周囲を飛び交う物の隙間を縫うように落ちて密閉コンテナの上に着地、すぐ目の前に壁が迫る。


「爆発ボルトを起動」


 その一言で目の前の壁が爆発して吹き飛ぶ。


 それは船体壁の緊急パージによって起きた爆発であり、結果はコンテナが通れる程度の穴を船体に開けた。直後、ナンシュを乗せた密閉コンテナはエクスマギレアの外に放り出される。


「戸締りして、こっち向いて」


 吹き飛んだ壁の向こう側には真空の世界が広がっており、当然普通の人が放り出されれば死を待つのみ。特に人殺しを楽しみたいわけではないナンシュが振り返り指を振ると、パージされた壁は液体に覆われあっという間に塞がれる。


 すでに液体は硬化している様で、それ以上何かが外に漏れることはない。それを確認したナンシュはいつの間にか掴んでいたワイヤを引っ張り方向転換。壁の残骸から伸びるワイヤーを手放すと、コンテナは巨大な居住艦であるエクスマギレアの外部装甲板に沿って飛ばされていく。


「こっちのゲートを少し開けてコンテナを押し出してあげれば……」


 勢いよく飛ばされるコンテナの上でナンシュがまた一人呟くと、近くのゲートが少し開いて空気が勢いよく漏れる。その空気に押されてコンテナが僅かに方向を変えると、その先には宇宙船がエンジンから青白い光を出す姿。


「そうそう、購入者の船に向かって一直線です。何という事でしょう。この寸分違わぬコース取り、あとはアームを伸ばすだけ」


 その大きな宇宙船は、ヨーマ達を購入した人間達の船であるらしく、相手もコンテナの存在に気が付いたのか、船尾のマニピュレーター付きアームをコンテナに伸ばし、コンテナとの相対速度を合わせるように接近してくる。


 そして、


「はい回収完了」


 ナンシュが呟いたタイミングで、コンテナの前方に突き出た回収用のフックをアームが掴む。


「あとはマスターの退出を待つだけですね……あれ? 入れそうですね? どこかにぶつけて壊れちゃったみたいです。これはしっぱいしっぱい」


 コンテナを掴んだ船は、そのままのスピードを維持しながらゆっくりとアームを縮め、大きく開いた後部ハッチへと、ナンシュが腰かけるコンテナを格納するのだった。





 少し時は遡り、ヨーマ達を回収した船の中。


「アーム接続完了……回収よろしく!」


「りょ」


 アブソーブシートで背中と肩を固定し、舵輪を小刻みに動かす明るい茶髪の少女がほっと表情を緩めて声をかけると、複数のモニターと操作パネルの前で、埋もれるように深くシートに座る少女が、くすんだ緑色のぼさぼさ髪を掻き上げてアームを操作する。


 船の艦橋に居るのは5人の少年少女、コンテナの回収が始まると上座に座っていた赤髪短髪の少年が勢いよく立ち上がり、


「よし! 全速前進!」


 大きな声で指示を出す。その声は艦橋のどこに居ても聞こえるくらい大きく、一番近くに座る少女は、アームを操作する手を止め、うるさいと言わんばかりに眉をしかめる。


「馬鹿じゃないの!」


「馬鹿ってなんだ!?」


「こんな状態で速度上げたらアーム折れちゃうでしょ!」


 操舵手の少女が馬鹿と言うのも当然で、船外で積み込み作業を行う際は船は一定の速度を保つことに神経を使うもので、それは自動化が進んだ現代においても手放しで行える作業ではない。ましてや加速など船を壊す行為でしかない。


 なんだったら今は、周囲が他船や湾口施設、また事故で発生したデブリで溢れている状況。総舵手の少女としては今すぐ減速してからコンテナの積み込みを行いたいほどだ。しかし彼らにはそうすることができない理由があった。


「そ、それじゃワープだ!」


「無理、ガーデンシップが壊れちゃうし私たちの船も壊れちゃう……あとセル使い切ってワープの充填に時間かかるから、事前に言ってもらわないと無理」


「ぐぐっ」


 スラスターによる姿勢制御に揺られながらも、ゆっくりとコンテナは後部ハッチに吸い込まれていく。そんな船の後方からは、明らかに彼らを追尾してきている複数の艦影があった。


 その艦影は海賊であり、狙いはコンテナ。早く脱出したい少年としては今すぐにでもワープしたいところのようだが、黒髪おさげの少女から指摘されて、ぐうの音しか出ない少年に向けられる視線は冷ややかである。


「ついでにアームも折れるね」


「折ったら天引き、当然レクスの報酬からだから」


 室内には四人の少女と一人の少年、自然とヒエラルキーは決まっていくもののようで、赤紫色の長い髪を揺らして振り返った少女の言葉に、アームを操作する少女が付けたす様に呟く。


 どうやら船体に損傷が出た場合は彼らの報酬から修理代が天引きされるようだが、おかしな指示を強制するなら、それは指示した人間の責任だと遠回しに話す少女は、コンテナをハッチの取り込みレールに接続して息を吐く。


「うっ!? さっさと回収しだい全速力で逃げるぞ! 早く逃げないとあいつらまた撃ってくるからな!」


 レクスと呼ばれた少年が座るのは艦長席、艦長とは艦における責任を負う者。責任者とはいざという時に責任を取る役職であり、それが自らの指示によるものであれば、指摘された天引きも妥当。


 報酬を天引きされた未来を思い浮かべ、顔を蒼くしたレクスが叫ぶと、正面や左右を囲むモニターウォールに閃光が走る


「もう撃って来てるわよ!」


 今彼らの船が飛行するのは、巨大な居住間であるエクスマギレアの湾口部。モニターに映る巨大な壁にも地面にも見えるそれは、エクスマギレアという船のほんの一部。スピードが出せない状況であってもその茶色い壁はまだまだ先まで続いている。


 本来なら危険のないスピードでの運航が定められる居住艦装甲表面、当然ビームだ、レーザーだ、ミサイルだ、と言った危険物を使って良い場所ではない。無いのだが、彼らを追いかける船はルールを気にせず攻撃を仕掛けている。


「敵船前方に出現」


「撃て!」


 そうなれば、反撃しないわけにもいかない。特に進路など塞がれれば尚のこと、うまく当たれば相手の進路を変えられるだろうと指示を出すレクスに、赤紫色の長い髪を後ろでまとめていた少女は、待ってましたとばかりに背中をシートから離すと、シートベルトを軋ませながら操作パネルを引き出し、ワープの残光を散らしながら現れた船の艦首に照準を合わせる。


「う……あれ?」


 さあ撃つぞと、少女が満面の笑みを浮かべるも、次の瞬間湾口設備の巨大な接舷用アームが動き出し、目の前に現れた船とぶつかってしまう。


「湾口のアームに激突した? と、とりあえず抜けるわ!」


「お、おう……やっぱ俺って運が良いな!!」


 さらに係留用の特殊ワイヤーが衝撃により巨大なアームから射出されると、狙いすましたかのように船体のスラスターに絡み付き、そのまま磁気アンカーが起動して船体に固定される。


「…………ふむ?」


 突然の衝撃と強制係留によってリードに繋がれた犬のようになってしまった船は、更なる事故を回避するためにレクス達の船を追いかける余裕はなく。その隙を縫って脱出する艦の艦橋一番奥で、明るい金のようなオレンジ色の髪を揺らめかす女性は、不思議そうに、そして何かに気が付いた様に目を細め小さく微笑むのであった。


 その後、エクスマギレアで突然起きた大規模なシステムバグは、とある船がとあるコンテナを回収して脱出すると、それまで起きていた数多の不具合もまとめて、今までの騒動が嘘だったかのようになり潜めることになる。


 呪われのコンテナが船外に売れたと知る者は、自分たちがたらい回しにしていた物が、想定をはるかに超えた呪物だったこと理解して震えた。また呪われの生まれた経緯を知る者は、恐ろしい呪物を作ってしまったと畏れ、すべてを忘れるように固く口を閉ざして、酒に溺れることになるのだった。



 いかがでしたでしょうか?


 突然のトラブルに意図したトラブル、巻き込まれた者の安否は不明だが、ヨーマ達が入れられたコンテナは、新たな局面へと向かって射出される。


 目指せ書籍化、応援してもらえたら幸いです。それでは次回もお楽しみに!さようならー

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