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姉の代わりに女子中学校に潜入することになった僕。姉の友達のスキンシップが激しくて!?

作者:

 「今日だけあんたは朋子ともこよ!いいわねわたる


 寝起き早々に双子の姉から意味の分からないことを言われた。

 時計の針は朝の6時を指している。

 

 「こんな朝からどうしたの?僕の学校は今日休みなんだけど」


 「何言ってるの?『僕』は休みだけど、『お姉ちゃん』は学校でしょ?」


 寝起きだからだろうか、姉の言っている意味が分からない。

 眠気眼で姉を見ると、そこには学ランを着たショートヘアの女子が立っていた。


 「って、なんで僕の制服着てるんだよ!」


 「ん?寝ぼけてるの?あんたの制服はこれでしょ?」


 そういって、夏用のセーラー服をベッドの上に投げられた。

 女性ものの下着と一緒に。


 「いい?時間ないから手短に説明するけど、今日は推しのライブがあるの。だから、代わりに渉が出席するのよ」


 「無茶苦茶むちゃくちゃだよっ!それに、姉ちゃんのとこ女子校じゃん!無理だよ」


 「あら、いけるわよ。双子なだけあって私たち瓜二うりふたつだもの。ほら、髪型だっておそろいじゃない」


 そう言って、手鏡てかがみを手に持ち、ベッドに上がるとほっぺたをくっつけてきた。

 そこには鏡合わせのように同じ顔が二つ並んでいる。


 「そうだけどさぁ……せっかくの休日なんだよ?僕のメリットはなんなのさ」


 「女子校を経験できるのよ?こんな体験できるのは日本中であんただけよ。十分すぎるメリットでしょ?」


 こうなった姉は止められない。

 僕はため息をついた。


 「それで、この下着はなんなのさ」


 「私のしてあげるわ。万が一にもスカートの中を見られて男もののパンツをはいてたら変でしょ?」


 当然だとでもいうように首をかしげた。

 

 「はぁ……、ばれなきゃいいけど」


 それから、姉は自分の通う女子校のルールを説明し始めた。

 クラスの場所、座る席、友人関係まで。

 怪しまれない程度の情報を一通り。

 それを頭に入れたころには、朝の7時をまわっていた。


 「それじゃ、後はよろしくね!」


 学ランを着た姉に見送られて家を出る。


 「どうしてこんなことに……」


 未練がましく自宅を振り返ると、小倉おぐらと書かれた表札が相も変わらず太陽の光をまぶしく反射させていた。


 僕は教えられたとおりの道順で姉の通う女子校までたどり着くと校門前には女性の教師が仁王立におうだちで立って生徒に挨拶あいさつをしていた。

 まるで、門番のようだ。

 ばれませんようにと心の中で呟いて、一気に通り過ぎようとする。


 「おはようございます、小倉さん」


 「えっ!あっ、はい。おはようございます」


 「少し声が違う気がするわね、最近風邪が流行っているから気を付けるのよ」


 「は、はい……」


 びっくりした。

 ばれたかと思ったが、どうにかなったようだ。

 顔も声もそっくりで両親すらたまに間違うほど僕と姉はている。

 そのおかげか、校門を突破することに成功した。

 玄関でくつを脱ぎ、教えられた靴箱から内履きを取り出しいた。

 ここにある靴は全て女子が履いているものなんだよな。

 そう思うと、心なしかいいにおいがするような気がしてくる。

 何を考えているんだ僕は。

 これじゃ、まるで変態みたいじゃないか。

 頭をかぶり邪念じゃねんを振り払った。


 教室へと向かうため廊下を歩いていると当たり前だがすれ違うのは女子生徒のみ。

 右も左も前も後ろも女子しかいない。

 階段を上っていると僕の前に3人組の女子が警戒もせずにお互い雑談しながら歩いていた。

 目の前では短いスカートがゆらゆらと無防備にれている。

 本当に女子校にいるんだ。

 非日常な体験に思考が砂糖のように甘くとろけていく。


 「朋子ちゃんっ」


 「わっ」


 階段を上り廊下を歩いていると後ろから誰かにき着かれた。

 背中にはぐりぐりとやわらかいものが押し付けられている。

 

 「ん?どうしたの?そんな、前のめりになって」


 くちびるに人差し指を当てて不思議そうに僕の顔を見る女の子。

 肩まで伸びる綺麗きれいな黒髪に、幼さの残る丸い目。

 鼻筋はなすじが通っており、唇の右側に小さなほくろができている。

 僕は姉からの説明を思い出した。

 この子は松本詩織まつもとしおりだ。

 仲のいい友達だけど、いたずら好きだから要注意と言われている。

 

 「ううん。なんでもないよ。急だったから驚いただけで……」


 「そう?今日の朋子ちゃんなんか変だね」


 「え?ふ、普通だよ。いつもこんな感じでしょ」


 とにかく、誰とも話さずに静かに一日を過ごすこと。

 これが僕に与えらえたミッションだ。

 双子とはいえ性格までは同じではない。

 多く会話をすると仲のいい友達にはすぐに見破られてしまうだろう。

 適当に話を切り、そそくさと教室へと入った。


 「やっぱ変なの。ん?あれ、これはなんだろ……学生証?」


 教室に入ると、甘い匂いが鼻腔びこうをくすぐった。

 女子しかいない空間のせいか、空気がピンク色にまっている気がする。

 えと、僕の席は……ここか。

 窓際まどぎわの最後尾の席に座る。

 ここなら、下手なことをしなければ、正体がばれずにみそうだ。

 後は、穏便おんびんにやり過ごすだけ……なのだが。

 7月の夏真っ盛りのせいか、みんな制服を着崩していてスカートも太ももが見えるぐらい短い。

 汗で白いセーラー服がけてカラフルなブラ紐が後ろから見放題になっている。

 平常心、平常心。

 心を落ち着かせるために、目をつむり深呼吸をした。


 「ふふふ。今日一日よろしくね朋子ちゃん」


 「うん、よろしくね、詩織ちゃん……」

 

 僕の隣は先ほど会った、松本詩織の席だ。

 必要最低限の会話しかしなければ大丈夫。

 

 「ふふふ」


 なんだか、廊下で会ったときと比べて雰囲気ふんいきが変わった気がする。

 詩織は幼さの残る丸い瞳を細めて何やら楽しそうに笑っていた。


 「では、ホームルームを始める」

 

 担任の男教師が入ってきて、ホームルームが始まった。

 女子校といっても教師には男もいるんだな。

 若そうな20歳前半のスラっと細い体をしたイケメンだった。

 簡単な連絡事項を伝えられてホームルームが終わる。


 僕の前の席に座っている女子二人が後ろを振り向いて話しかけてきた。


 「杉本先生って相変わらずかっこいいよね」


 「うんうん、朋子ちゃんもそう思うよね?」

 

 「え?う、うん。そうだよね」


 やはり、女子に人気があるみたいだ。

 当たり障りのない返事をして周りに合わせるように笑顔を作った。


 「私は苦手だな~。なんか、下心がある気がするよ」


 「嘘っー!すごいさわやかな男じゃん。下心なんて持ってないって」


 「そうだよね、真面目な人だもん」


 「そうかな?表面上は無害なふりをしているけど、たまに獣のような視線を感じる時があるんだよね」


 詩織の言葉に僕は胸がどきっとして、冷や汗が出た。

 

 「どうしたの?朋子。なんか調子悪い?」


 「い、いやっ?むしろ、絶好調だよ~!」


 両腕を曲げてポーズをとると女子3人から笑われてしまった。


 「朋子ってそんなキャラだっけー!うけるっ」


 「ははは……」


 キーンコーンとチャイムが鳴り響き、数学の教師が入ってきて、みんな席に着いた。

 前回の復習から入り、その応用問題の解き方を教わる。

 それから問題用紙が配られて、黙々と解いた。

 

 「ねぇ、ここ教えて?」

 

 詩織がぴたっと肩をくっつけてくる。

 綺麗な黒髪からはシャンプーのいい香りが漂ってきて頭がくらっとする。

 姉以外でこんなに女子と近づいたのは初めてだ。


 「え、えと、これはね……」


 「ふんふん、なるほど~。ふふふ、朋子ってこんな頭よかったっけ?」


 しまった。

 姉の成績を考えるに、分からないと答えればよかった。

 いつものくせで、思わず普通に教えてしまった。


 「えーっと……そうっ!たまたま予習してたのよ」


 「ふ~ん。そうなんだぁ」


 詩織はぐいっとキスをするように顔を近づけて赤い唇を横に歪めた。

 顔が熱くなった僕はごくりとつばを飲み込む。

 彼女の唇の横にある小さなほくろがやけに色っぽく映った。


 二時間目は国語。

 

 「朋子ちゃん、今日は暑いね~」


 「う、うん……。でも、ちょっと下敷したじきをそうやって使うのは、はしたないんじゃ……」


 隣で詩織がスカートの中を透明とうめいな下敷きであおいでいた。

 白く綺麗な太ももに白色のパンツが僕から丸見えになっている。


 「え~、いつものことじゃん。すずしいよ?朋子もやってみなよ」


 「いや、私はいいから!」


 僕がそれをやると大変なことになってしまう。

 やっぱり女子同士だから下着を見られても恥ずかしくないんだろうか。

 男女共同の学校に通ってる僕には信じられない光景だった。

 見てはいけないのに、ちらちらと横目でうかがってしまう。


 「なんか、朋子のいやらしい視線を感じる」


 「ご、ごめんっ!」


 「ふふふっ」


 3時間目は社会。


 「ねぇ」


 詩織に僕の耳元で熱っぽくささやかれると、ぞくっと体が反応した。


 「うわっ、し、詩織ちゃん、どうしたの?」


 振り向くと、丸く大きな瞳が僕をとらえた。

 鼻筋が通った端麗たんれいな顔を唇だけわずかにふるわせて、

 

 「マンコ


 そう色っぽい声でささやかれ、顔が沸騰ふっとうしそうに熱くなった。


 「女の子がそんな言葉を使っちゃいけません!」

 

 「えぇ?知らないの?カナダにある湖の名前だよ?」


 いたずらな笑みを浮かべて目を細め、唇を舌で蛇のように舐める。

 とても真面目に地理の勉強をしているようには見えない。

 こんな下品な言葉が女子の口から出てくるなんて、女子校ってすごい。


 4時間目は体育。


 僕にとって最大の難関がやってきた。

 クラスの女子は雑談に花を咲かせながら制服を脱いで白やピンクのシャツ姿になっている。

 男子と違って体育服の半ズボンはスカートをはいたまま着替えれるのは助かった。

 今、スカートの中を見られたら通報されてしまう。


 「ねぇ、朋子どうしたの?早く着替えようよ」


 「って、詩織ちゃん!なんで裸になってるの!」


 「いやんっ。そんな見つめないでよぉ。ちょっと、汗かいちゃったから汗拭あせふきシートで拭いてるだけだけど?」


 隣では詩織がパンツ一枚の恰好かっこうで僕にわきが見えるように腕を上げているところだった。

 見ちゃだめだ、見ちゃだめだ。

 僕は反対方向を向いて体育服に着替えた。

 姉の胸は小さいけど、さすがにシャツの上からだと違和感を覚えられる可能性が高いからだ。

 それに、僕も男だから、これ以上女子の着替えを見ると、耐えられず暴走してしまいそうだ。


 「ふふふっ、朋子ちゃん可愛いっ」


  体育の授業は外のグラウンドでマラソンの時間だった。


 「ラスト一周」


 クラス担任の男教師である杉本先生が体育の担当で、残り一周だと大きな声を出す。

 僕は詩織の隣で走っている。

 体力には自信があるが、姉がどこまで走れるのか知らないので友達の詩織に合わせていた。

 汗で体育服がはだに密着し始めたとき、ふと横を見ると詩織の小さな胸が丸見えになっていた。


 「ちょっと、詩織ちゃん!見えてるから!ブラはどうしたの!」


 「え?あっ、付けるの忘れちゃってたぁ~。きゃっ」


 両腕で胸を隠してウインクをする。

 僕は顔が赤くなり、それを誤魔化ごまかすためにゴールまで全力疾走ぜんりょくしっそうけ抜けた。

 走り終わり、息を整えて詩織がゴールするのを待っていると、杉本先生が詩織を凝視ぎょうししているのに気が付いた。

 彼女は走るのに精いっぱいで胸を隠すのを忘れている。

 

 「詩織ちゃん。杉本先生が見てたよ」


 詩織がゴールしたと同時に僕は近くに駆け寄り耳元でささやいた。


 「えっ?いやっ!朋子ちゃんの体で隠してっ!」


 驚いたように担任の男教師を見たとたん血相けっそうを変えて僕の背中に隠れた。

 やっぱり、異性にみられるのは嫌だよな。

 明らかに僕に裸を見せていた時とは反応が違った。

 絶対に男だってばれないようにしないと。

 それから、昼休憩と5時間目は問題なく終わった。

 マラソンで疲れたのか詩織は残りの授業中ぐったりとしていたからだ。

 

 「じゃ、掃除をして今日は終わりだ。先生が点検に行くからさぼるなよ」


 各班によって決められた掃除場所に向かう。

 僕と詩織の班は木に隠れて薄暗うすぐらくなっている目立たない空き教室だった。

 理科室などの授業でしか使わない教室が並ぶため滅多めったに人が通らない。

 4人の班で協力しながらほうきでゴミを集めていった。


 「なんだか、今日はとても楽しかったわ」


 「うん、僕も……あ、いや私もよ」


 すっかり気が抜けてが出てしまった僕を見て詩織が笑った。


 「おーい、お前らちゃんと掃除はしてるか」


 担任の男教師が掃除の確認にやってきたようだ。

 同じ班の二人は元気よく返事を返していた。


 「よし、ちゃんと掃除できてるな。教室戻っていいぞ。あっ、松本はちょっと残ってくれ」


 「はい?私ですか。わかりました」


 詩織は首をかしげながらうなずいた。

 僕を含め他の三人は空き教室から外に出た。

 

 「やっぱ杉本先生は何度見てもかっこいいよね」


 「わかるわかる。二人きりになれるなんて詩織がうらやましいわ」


 女子校では異性と接する機会がないから、一番身近な男性にかれるのは当たり前といえば当たり前なのかもしれないな。

 しばらく歩いていると尿意にょういを感じ始めた。

 前を歩く二人に声をかけ、来た道を戻る。

 さすがに女子トイレを使うのはまずいから我慢がまんしてたけど、さすがに限界がきた。

 確かトイレは掃除してた空き教室の近くにあったよな。

 

 「ちょっと……やめてください」


 先ほどまでいた空き教室に近づくと詩織の声が聞こえてきた。


 「いいだろ?」


 「いやっ」


 拒絶するような高い声。

 嫌な予感がするな。

 ただごとではない雰囲気を感じて教室の扉を開けると、担任の杉本先生が詩織の両腕を押さえてキスしようとしているところだった。


 「おいっ!何してんだ」


 僕自身も驚くほど低い声が出る。

 

 「なんだ、小倉か。お前はそんな男っぽい声が出せるんだな」


 「そんなことはどうでもいいでしょ。詩織を放してください」


 「俺らは愛し合ってるんだ。邪魔しないでもらおうか」


 「朋子ちゃん、助けてっ……」


 涙目になりながら助けを求める詩織。


 「おい、二度も言わせるな。今すぐ詩織の腕を放せ」


 「まるで、姫様を守る騎士みたいだな。俺が悪役ってところか?」


 そう言って、詩織の腕を放して僕の方へと歩いてきた。


 「この子はな、俺を誘惑ゆうわくしてたのさ。体育の時間にノーブラで見せつけるように走っていたのがそのあかしだろう。授業が始まってからも俺の方をちらちらと見て、目を合わせてきたのに気づいて確信したよ。この子は俺を誘っているのだろうと。でも、今になって怖がってしまったみたいだ。なんて身勝手な女なんだ」


 「違うっ、私は朋子に見せていたの。先生の視線が気持ち悪いから気になっただけよ。そもそも、目が合うのは先生がずっと私を見ていたからでしょ?」


「ひどい言い様だ、それにしても、もしかしてお前ら出来てるのか?女同士で胸を見せ合うなんて。まぁ女子校じゃ女同士の恋愛なんてよく聞く話だがな。ま、それはさておき、ここで起きたことを話されると俺としては困るわけ。分かるよな?小倉。俺の言いたいこと」


 一歩、また一歩と指を鳴らしながら威圧いあつするように近づいてくる。

 こんな男が姉の担任だったなんて。

 黙って見過みすごせるはずがない。


 「お断りします。今日の出来事は報告させていただきます」


 「なら、二人まとめて口のき方を教えてやるよ」


 僕が杉本先生をにらむと押し倒そうと腕を広げて向かってきた。

 健康な20代の男性に女子中学生がかなうはずがない。

 だが、僕は護身術として柔道をやっている。

 そして一番大事なことは、女ではなく男だということだ。

 杉本先生の腕を体をひねることでかわすと、その勢いのまま反転して腰に相手の体を乗せると一気に投げ飛ばした。

 

 「んがっ、小倉、お前……格闘技経験者だったのか」


 すかさず寝技に移り完全に動きをふうじた。


 「待て、待ってくれ、腕が、腕が折れる!」

 

 僕がおさえている間に詩織が女性教師を呼んできて事件は解決した。

 ホームルームでは杉本先生ではなく別の教師に代わっていた。


 「ねぇ、朋子ちゃん。ちょっと時間ある?」


 帰りの支度をしていた時に詩織に声をかけられた。

 これで女子校を経験するのも人生で最後だと名残惜しいのもあり、話を聞くことにした。

 木陰が差している中庭のベンチで二人並んで座っている。

  

 「今日はありがとう」


 「いいよ、それで話したいことって?」


 「これ……」


 詩織の手の中には僕の本来の学生証がにぎられていた。

 念のためと持ってきていた学生証を知らないうちに落としていたみたいだ。


 「ごめんっ!だますつもりはなかったんだ。ただ、姉に頼まれて今日一日だけ代わってくれって」


 「ふふふ、そんなことだろうと思ってましたよ」


 別に怒ってないと口に手を当て笑う姿にほっとした。

 拾ったのが彼女で幸運だった。


 「それにしても、本当にそっくりね。この学生証を拾わなかったら全然気づかなかった」


 「双子だからね、よく言われるよ」


 「ねぇ、このことは二人だけの秘密にしてもいいけど一つ条件があります」


 「それは……なんでしょうか」


 どんな無理難題を押し付けられるのかと恐る恐る聞いた。

 女装して女子校で授業を受けたなんて知られたらただでは済まないだろうから。


 「それはですね……」


 一拍置いたあと、一度胸に手を当てて息を吸い、


 「私の彼氏になってください!」


 「ええええっ!」


 まさかの告白に思わず叫んだ。


 「助けてもらったときに、きゅんっときちゃって、今日でお別れなんて絶対嫌って思ったの。それに、顔も女の子っぽくて私好みだしね」


 思いがけない回答に固まっているとほっぺたにキスをされた。


 「嫌とは言わせないわよ」


 そう言って、いたずらっ子のように微笑ほほえんだ。


 こうして、僕と詩織は付き合うことになった。

 そして、二人手をつないで小倉家の前に立っていた。

 

 「なんだか緊張するね。朋子にあなたの弟を私に下さいっていう日が来るなんて」


 「それ、男側が言うセリフだけどね……」


 チャイムを鳴らすと、しばらしくしてから玄関のドアが開く。

 私服姿の姉が出てきて、僕と詩織を見て、


 「おかえりぃ~って……何で詩織が一緒にいるのよ。もしかして、ばれちゃった?てか、手まで繋いじゃって……」


 「あの、これはですね……」


 突然の出来事に唖然あぜんとしている姉に説明しようと口を開きかけ、


 「私たち付き合うことになりました!これから末永すえながくよろしくお願いしますね。お義姉ねえさん」


 詩織が僕の腕に抱き着きながら姉に向かってウインクをした。


 「あ、あ、あんた……一体、学校で何があったのよ……」


 姉はこめかみを手で押さえて疲れたように呟いた。


 「これから私がたっぷり聞かせてあげるわ。わたる君の活躍を」


 詩織は空いている反対側の腕で姉に抱き着き、僕ら双子に挟まれながら楽しそうに笑っていた。

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レズっ気女子にとって、姉そっくり女顔弟ナイト君ってドンピシャ属性男子を逃す手は無いよね…。 それはそれとして、女装強要姉よ。推しのライブに何故学ランを…? 弟の学校は休みとは言え補導されかねないので…
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