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月影に刻まれし方程式、崩れゆく封印の残響3

 満月直前の夜空が、離宮の植物園を不気味に照らしていた。

 

グレゴリー率いる騎士団は、地下回廊にうごめく不審な影を警戒するため、黙示録のような静寂を破るかのごとく足音を響かせながら、各所に配置していた。

 

「こいつら、いつまで潜んでやがるんだ! 見つけたら一網打尽にしてやる!」

と、冷徹な声が無線から飛び、戦慄すべき緊張感が漂う中、全員の眉が一層ひそめられた。


 

ミオとフィリスは、園内の薄明かりの中、密やかに“月下燐花”が咲く温室へと忍び込んでいた。

 

ミオは論理魔術の手法を駆使し、古文書に記された奇妙な儀式の断片と、目の前に広がる花の煌めきを照合する。

 

「この花……一時的に呪印や黒い石の波動を打ち消すと言った記述、確かにここにあるわね」

フィリスは淡い笑みを浮かべながらも、どこか毒舌を交えた口調で呟いた。

「まったく、こんな生意気な花が救いの鍵だなんて、星の巡りも悪い冗談じゃないわね」


 

一方、温室の外ではディナが、守るべき“月下燐花”に向き合いながら、古代伝承に浸る不安と覚悟を胸に、鋭い眼差しで花を見据えていた。

「この花が咲くたびに、古の呪いも蘇る……何かが起ころうとしている」

と、呟くディナの横で、エドワードが懐中ランプを片手に地下回廊の封印の痕跡を探り出していた。

「俺の誇りと王家の威信を取り戻す、その策はここにある。黒い石の欠片が解放の鍵になる……はっ、こんな薄っぺらい理屈で済むとは、ざまぁだな」


 

不意、温室の奥で、どこからともなく低い囁きが響いた。

「ほら、ミオ。もう少しで月の恩寵を受けられる……が、覚悟はいいかい?」

と、声の主は闇にその姿を隠し、スペイラの手先と思わしき影が薄明かりの中に現れた。

 

ミオは即座に身を低くしながら、論理と感覚の狭間で刃のような集中力を発揮した。

「くっ……やはり、狙われるのね。あんたら、思い上がってるだけだわ」

と、冷ややかに返すと、瞬く間に自らの魔術符を解読し、対抗の儀式を始めた。


 

そこへ、エランが青白い月光に晒された横顔を浮かべながら、慌てた様子で駆けつけた。

「ミオ、腕輪の呪印がまた疼いてる! 今夜はどうにも、あの呼び声が耳を刺すんだ」

彼は痛みと幻視に混じった嘲笑を、また皮肉交じりに発した。

「俺がこんなに苦しんでるって、まるで実験台みたいじゃないか。お前ら、笑い話にでもする気か?」


 

エランの一言に、ミオは軽く顎を捻りながら返す。

「ふん、実験台だなんて思わせるのもお上手ね。でも、理論は私に任せなさい。今宵、この儀式で反逆の封印を打ち破り、星の剣の本当の姿を照らし出すわ」

その冷静な表情の裏には、燃え盛る覚悟が感じられた。


 

瞬く間に温室内は、魔術の閃光とともに混沌の渦へと突入する。

ガラスの破片が宙を舞い、衝撃波が周囲の壁を打ち砕く音が響く中、スペイラの手下が次々と襲来。

「ふっ、思ったか? 甘い夢を見ているね!」

と、皮肉たっぷりの声が闇夜に散らばる。

ミオは冷静にその状況を分析し、瞬時に筆を走らせるような魔術の符号を結界へと刻み込んだ。


 

その時、グレゴリーの騎士団が大集結し、乱戦の中で乱れた行動を取り始める。

「捕まえろ、捕まえろ! 逃げるな、この闇の連中め!」

と、連なる怒号と鋭利な剣戟の音が、一瞬の隙を狙うスペイラの手先を薙ぎ払った。


 

エドワードは地下回廊の一角で、石の欠片を手に取りながら呟く。

「ここが…封印の起点か。俺の策略が功を奏すなら、王家の復興はもう目前だ……」

だが、その冷静な眼差しの裏に潜む焦燥は、まさに裏切られた運命の叫びのようだった。


 

ミオの論理魔術とフィリスの冷静な支援、そしてエランの必死な戦闘が交錯する中、彼女たちは決戦の一歩手前に立たされていた。

「この夜、すべては終わる……いや、始まるのよ!」

ミオが叫んだその瞬間、温室全体が眩い閃光に包まれ、星の剣の輪郭が現れた。

闇と光が激しくぶつかり合い、読者の心は一気にジェットコースターの如く揺さぶられる。 


 

そして、混沌の中でスペイラの囁きが再び闇夜に散らばる。

「これで終わりだと思ったかい? 次なる一手は、君たちの予想を遥かに超える……」

読者は、その毒舌と皮肉、そして熱い闘志に満ちた一夜の興奮から、心の底で「もう一話!」と叫ぶ衝動を抑えられなかった。

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