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月下の囁き、蠢く地下回廊5

ミオは、地下回廊最深部に到達した瞬間、全身が凍りつくような冷気と共に、目の前にそびえ立つ巨大な石柱を見つめた。石柱には“契約の紋章”が激しく輝き、まるで意志を持っているかのように空気を震わせていた。


 

その刻、クラディオが意気揚々と近づいてきた。


「これで俺が、黒い石を俺自身に融合させる時が来た!」


 

しかし、思わぬ瞬間、ゼオンが鋭い声で叫ぶ。


「お前の自己陶酔、ここでは通用させるな!」


 

ゼオンの封印術が炸裂し、暴走寸前のクラディオの動きをぎりぎりで止めた。その瞬間、ミオは冷静に論理魔術の式を脳裏に呼び起こしながら、鋭い眼差しで状況を分析していた。


 

「論理は、混沌に勝つ。今、皆の命運が賭けられているのよ」

と、ミオは皮肉交じりに呟く。


 

一方、暗がりから突如、スペイラが白煙を纏いながら姿を現す。掌中に握る黒い石の欠片を、まるで神聖な儀式の道具かのように掲げ、嘲るような笑みを浮かべる。


「ふふ、これで新たな企みの幕開けよ。逃げ道なんて、どっか奥へ逃げ込むしかないわね」


 

その声と共に、彼女は勢いよく別の通路へと消え去った。グレゴリーは咄嗟に指揮を取り、騎士団を率いて警戒体制を強化する。


 

「皆、警戒を! あいつの後は必ず何かが潜んでいる!」


 

一方で、フィリスの体には不穏な兆候が現れていた。壁画から漏れる魔力に抗えず、彼女の“王家の力”が暴走寸前の状態にまで達する。ふと、彼女は苦い笑みを浮かべながら呟く。


「これだから王家の血って、厄介なもんね…」


 

その瞬間、突然フィリスの体が痙攣し、意識が遠のきかけた。仲間たちが慌てて駆け寄り、ミオはすかさず治療の手を貸そうとした。


 

「しっかりして、フィリス。まだ、私たちは戦わなければならないのよ」


 

苦痛に歪むフィリスの顔には、絶望と希望が交錯する表情が浮かんでいた。


 

次に、エランの呪印が月光を浴びるように、限界を超えんと輝きを増し、彼の身体からは淡い青白い光が漏れ始めた。エランは苦悶とともに、毒舌を交えた皮肉を口にする。


「おい、俺の呪印が、またもや『暴走の宴』を始める気だよ。まるで、不良の俺が無理矢理実験台にされてるみたいだな」


 

ミオは苦笑いを浮かべながらも、咄嗟に論理魔術の式を組み立て、エランの呪印の解放をぎりぎりで制御した。


「冷静になって、エラン。論理魔術とは、ただ感情を抑えるだけじゃなく、正確に事実を把握するためのもの。今日の君の暴走は、私がしっかり止めるわ」


 

グレゴリーは仲間たちへ指示を飛ばしながら、崩れかけた回廊の脆弱な構造を支えるため、的確な指揮を行っていた。


「ここは我々の守るべき砦。部下よ、必ず生き残り、ジゼルの増援を迎えよう!」


 

ジゼル・アルドリンが無線越しに冷静な声で報告する。


「追加の騎士団が到着済み。現場は完全壊滅には至っていない。だが、我々の戦いはまだ終わっていないようですね」


 

地下回廊は、闇と光の交錯する混沌の中で、まるで生き物のように息づいていた。ミオは、全身に走る冷たい汗を拭いながら、心の中で今後の展開を計算する。


「王家の力と黒い石……この二つの謎を解き明かさなければ、我々の未来は暗闇に沈むだけよ」


 

そして、崩壊の危機を何とか免れた一行は、岩盤の隙間から漏れるわずかな月光を頼りに、次の通路へと足を運ぶ。どこかで、スペイラが新たな陰謀を企て、新たな災厄の火種となっているはずだ。


 

エランは、依然として苦しげな表情を崩さず、しかしその瞳の奥には新たな決意が宿っていた。


「俺は、俺の呪印が生む闇と、この逃れがたい運命に、ただ背を向けるわけにはいかねぇ」


 

ミオは皮肉めいた笑みを浮かべながら、エランに向けて軽口を投げる。


「まあ、どんな実験動物でも、脳みそがある限りは努力するのよ。さあ、次の一手を共に探りましょう」


 

その言葉に、エランは苦笑いを返す。混乱と危険が渦巻く地下回廊で、彼らの戦いは、まだ始まったばかりだ。仲間たちの鼓動と共に、次なる災厄の影が、確かに姿を潜め始めている――。


 

読者諸君、君たちの心の鼓動は高鳴るだろうか?

この先に待つ、壮絶で忘れがたい戦いと謎の解明。

全ての答えは、地下回廊の闇の奥に……。


 

──次回、「月下の囁き、蠢く地下回廊」に続く。

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