漆黒の転生を祝す夜、暴かれし契約の真実4
激しく乱れた魔力の中、離宮の瓦礫が天井から零れ落ちる音とともに、突如としてフィリスが目を覚ました。体が勝手に痙攣し、王家の力が暴走しかけた瞬間、周囲の魔力が不規則な波動となり、まるで大合唱のように混沌を生み出していた。
「フィリス、しっかりして!」
ミオは冷静さを取り戻すよう必死の表情で姫に声をかけるが、フィリスの瞳はまだ遠くを彷徨い、かすかな光を放っていた。
その一方で、横で待機していたクラディオが、禁忌と言わんばかりの錬金術の呪文を低くつぶやく。
「これでどうだ…! 黒い石の欠片、力を纏え!」
彼の手元に、淡い紫光を放つ欠片が一つ浮かび上がり、フィリスの暴走した魔力と奇妙なリズムを刻むように結合していく。
エランは、腕輪から走る呪印の疼きに耐えながらも、ミオの身を庇うように前に立った。
「おい、またその毒舌め。俺は辛うじてここにいるが…」
苦笑いを浮かべながらも口数が減り、誰にも負けぬ決意を隠しきれない。
「無理しちゃだめよ、エラン。君が崩れたら、この全員が宙に舞うことになるんだから」
ミオの冷静な切り返しに、エランは思わず肩をすくめながらも、必死の拳を握りしめた。
ミオは論理魔術という名の“魔術方程式”を脳内で緻密に組み上げ、周囲で暴れ回る魔力を封じ込めようと全力投入する。空間そのものが歪み、重苦しい結界の中、次第にその振動は極限へ向かっていた。
突然、激しい爆発音が轟くと同時に、ミオの構築した結界も拙く乱れ、魔力の奔流は瞬く間に解き放たれた。爆風の中、スペイラの姿が眩い闇へと消え、まるであっけなく舞台袖へ追いやられるが如く消失した。
「ざまぁみろ、ってか!」
ミオは苦笑いすらに、心のどこかで皮肉を込めた呟きを漏らす。
爆風が収まると、クラディオは大きく倒れ込みながらも、無理やり手に握った黒い石の欠片を放さなかった。その唇には不気味な笑みが、まるで全てを知っているかのように浮かんでいた。
「よう、これでもう一回、やらせてもらうか…」と、彼の声は嘲笑交じりの低い響きを残し、全てを覆い尽くす静寂と対極のように、場の空気は張り詰めた。
離宮の廃墟には、不自然な静けさが漂い、幾重にも広がる結界の隙間から、王城地下に潜む“何か”の予兆が囁かれるようだった。
グレゴリーが険しい顔で辺りを睨み、「これで終わりだなんて、信じるな。王城地下にまだ……」と、誰もが恐れる謎めいた存在の存在をほのめかす。
エドワード王子もまた、額に滲む汗をぬぐいながら「王家の威信が一瞬で崩れ去るなんて、まさに目の前だ……」と憤りと不安を露にするが、ミオは冷静にその混迷を見極める。
「今は諦める時じゃない。あの黒い石の謎、そして…何が待ち受けているか、必ず突き止めるわ」
その言葉に、エランすらも鋭い眼差しでミオを見つめ返し、果敢に己の苦痛を押し殺しながらも、守ろうとする意志が感じられた。
そして、全体の混乱が一瞬の静寂に包まれた中、ミオはふと、闇の向こう側に潜む王城地下の秘密を予感する。魔力の乱流の合間から、かすかに聞こえる低い囁きが、次なる激突や謀略の予兆となるのだ。
「次なる儀式、そして……真の黒幕は、まだ我々の前に姿を見せない」
ミオの声が、暗闇にただよう冷たい空気を切り裂くように響いた。
読者は、心臓の鼓動が早鐘のごとく鳴る中で、このジェットコースターの如き展開に身を委ねざるを得ない。
全ての因果が交錯するこの混沌。それは、笑いあり、皮肉ありの激戦と謎解きの数奇な運命が、次なる話への扉を開かんとしている。
「さあ、行こう。もう一話、もっと深い闇へと突き進む時だ!」
ミオのその一言に、エランの鋭い眼差しと、互いに譲らぬ決意が重なり、王宮の闇は再び、熱い胸の鼓動とともに動き出した。