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烈光の魔塔――崩れゆく血の呪縛と再生の光1

「招かれざる囁き――烈光の魔塔への序章」


王廟崩落から数日の時が流れ、夜の帳が街を包む頃、ミオは静かに街外れの石畳を歩いていた。胸中に父・フェルディナンドの謎と、残された父の言葉が疼く。

 

「父さん…どこに隠れたの? この闇の中で、真実だけは放っておけないわ」

と、低く呟くその瞳には、決意と不安が交錯していた。


 

ゼオンから届いた一報――「烈光の魔塔付近で黒い気配が浮遊している」という情報。

ミオはその言葉に背中を押され、すぐさまエランの元へ向かった。

 

待ち合わせ場所の陰、エランは腕輪の残骸に触れるようにして、苦々しい表情を浮かべていた。

 

「またかよ、俺の腕輪どころか、今度は新たな力が足を引っ張る始末だな」

と皮肉すら交えた口調で言うエランに、ミオは微かに笑み返す。

 

「お前の灼熱な力で父の闇も焼き尽くせるなら、私も喜んで頂戴するわ」

その言葉に、エランは一瞬、苦悶と期待が入り混じった目を見開いた。

 

フィリスは遠くの書庫で古代文献に没頭し、王家の血の暴走を抑え込む術を探っていた。

その傍ら、スペイラは薄暗い路地裏から、誰にも知られることなく狙いを定める様子。

 

「皇帝の闇も、私の好奇心も、どちらも捨ててはおけぬわね」

と、独り言のように呟き、先行する足取りに緊張感すら感じさせた。

 

一方、グレゴリーは数名の騎士たちを集め、黙々と侵入ルートを確認していた。

「無用な騒ぎは避けろ。あの魔塔の中には、ただの瓦礫だけじゃない。何かがいる…」

低い声で指示を飛ばし、部下たちの眼差しを厳しく見据える。

 

そして、突然ひと際場違いな存在が現れた。

謎の研究者リディア――古ぼけた巻物と魔塔の模様が彫られた地図を手に、にやりと笑いながら。

 

「ほら、これが真実への鍵。だが、正直なところ、誰がどこまで信じられるのかしらね」

と、口元を緩めた彼女は、その地図を掲げながら、妙な楽しみを湛えた声で告げる。

 

ミオは地図に目を通し、慎重に状況を整理する。

「父さんの足取り…そして、この黒い気配が示す先は、まさに烈光の魔塔。ここに全ての答えが隠されているのね」

と、はっきりとした口調で宣言すると、エランも頷きながら答える。

 

「俺の覚醒も、これ以上は我慢ならねぇ。新たな力が、今こそ試されるときだ」

その言葉に、空気が一瞬、熱に包まれるのを感じた。 

 

そして、風が強く吹き抜ける中、ミオは全員と共に、闇夜に浮かぶ魔塔へと一歩足を踏み入れた。

石造りの廊下は、かすかな光と冷たい霧に包まれ、古代の呪縛を感じさせる。 

 

「ここが…本当にあの魔塔か。この狭い回廊が、何を秘めているのかしら」

ミオが呟くと、エランが皮肉混じりに返す。

 

「まさか、もう少しは得意げな装飾を用意しておいたと思ってたぜ。こんな暗黒の穴なら、俺の新たな力で照らしてやるさ」

と、軽口を叩きながら、二人の背中には固い決意が宿る。

 

一歩・また一歩と進むごとに、時折、瓦礫が転がる音と、どこからともなく差し込む奇妙な囁きが、彼らの神経を震わせた。 

 

ミオは、鋭い感性と論理的頭脳で、立ちふさがる罠や古代の結界のパターンを読み解いていく。

すでに、彼女の心臓は高鳴り、興奮と恐怖が交錯する瞬間の連続だった。 

 

「これが、私たちの運命の始まり。真実を掴むか否か、全てはこの先の戦い次第…」

低く決意を新たにしたその声に、エランもまた、灼熱の瞳で闇の先を見据える。

 

そして、魔塔内部に差し込む月明かりの下、全員の心は一つに燃え上がり、次なる瞬間への期待と恐怖で、ジェットコースターの如く乱舞していくのだった。

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