Little girl in side the see 深海少女
「八神 りり子 13才。〇〇中学に通う一年生だ。精神的に病んでいるようなら、彼のことを話しても構わん。ただあまり深くは教えるな。来季からは彼も普通の学生に戻るからな。まぁ普通ではないけど…」
「はい、かしこまりました。お父様」
「それと、お前も彼のことをだいぶ気にかけているようだが、わかっているな」
「大丈夫です。あの時は気の迷いでした」
「それならいい。それじゃ頼んだぞ」
「はい」
ふぅ…。
椿くん帰ってくるのかぁ。
あの時、救急車の中で私のことを『ペルちゃん』と呼んでいたのよね。
しかも女の子みたいな口調だった。
PTSDという訳ではなさそうだし、それに葬儀の時の大人びた口調。
あの子、何か引っかかるわね…。
ペルセポネィ。
この世界を統べる女神。
「まさかねぇ」
☆ ☆ ☆
「おはよう、りり。」
「おはよう」
「どうした? 暗いぞ?」
「いや、別に…」
椿くん…。
「ねえ、りり。私の家でクリパをやろうと思うけど、りりも来ない?」
「うぅん」
「あぁもぉ! りりは強制参加! わかった?」
「う、うん。わかった」
椿くん、あれからどうしたのかな…。
椿くんが住んでいた家、無くなっちゃったし。
でも、新しい家の表札は城紙ってなっていた。
椿くんの親戚かな?
優しそうなオジサンとオバサンだったな。女の子もいた。
やだ、私ってストーカーみたいじゃん!?
「おーい。八神ー? どうしたー? 出欠の時に返事しないと欠席にするぞー?」
「す、すみません!」
あぁもう、どんどん根暗になっちゃう。 椿くんのせいだ!
その日の放課後。
私は部活の美術部にいた。
「八神いるかー?」
「はい」
「ちょっと頼みたいことがあるんだけどいいか?」
「はい」
「部活中に悪いね、職員室なんだけど来てくれ」
沢田先生…。
小学校の時の椿くんの担任だった先生。
今は私の担任。
先生だったら何か知っているかな?
聞いちゃおうかな。
一年以上前のこと、変な女と思われちゃうかな…。
「心ここにあらずだな? どうした?」
「あの。いえ、別に…」
大丈夫か八神?
こりゃ重症だな…。
これ以上は無理だな。
「ここだ、入ってくれ」
「生活指導室?」
「はい座って」
「失礼します」
「あーいい、いい。かしこまるな、私しかいないんだから」
「はい」
「暗いなぁ…。そんなんじゃ城紙くんに嫌われちゃうぞ?」
「先生には関係ないじゃない! あっすみません…」
「そんな事を私に言っちゃっていいのかな?」
「なにがですか!?」
ヤバ、この子の逆鱗か?
「年末にこっちに帰ってくるってさ、愛しの椿くん。来季からはこの中学だ。良かったねぇ、りり子ちゃん?」
突然、立ち上がる八神りり子。
「っておい、八神? どうした?」
恥ずかしい…。
声に出ちゃっている…。
大声になっている…。
大声で泣いちゃっている…。
もうダメ、我慢できない!
「ちょっ? 八神? お前、泣きすぎ!?」
トントン。 カチャ。
「沢田先生? どうしました?」
「いやちょっと、この子の不安要素を取り除いた結果でして」
「はぁ? なんで大泣きしているんですか?」
「うわーん! 嬉しいんです~!」
「八神、お前どんだけだよ? ひくわぁ…」
その日、私は美術部には戻らず、先生に美術室からバッグを持ってきてもらい、帰宅をした。
帰り道、私は椿くんの家の前を通ってみる。
ここに帰ってくるんだ。
「家に用事?」
「あっ、いえ」
やばい、この家の人だ!
「ん? もしかして八神 りり子ちゃん?」
え? なんで?
「はい」
「やっぱり! 椿くんは今月の26日か27日に帰ってくるわよ。帰ってきたら連絡させるわね」
「あっ、はい」
「それともサプライズで家に行かせようか? あはは、なーんてね。 それじゃ連絡をさせますね」
「はい、お願いします」
やったー!
椿くん、待ってるよ!