女神さまのPressure drop
私はペルセポネィ。
この世界を統べる神。
世界を統べる。といっても、やることは他の神がやっている事と大差はない。
次元や時間軸のゆがみを修正しつつ、場合によっては大地に雷を堕とす。そんな程度…。
今回は私の担当する世界に、異世界とのゲートが繋がると言われた。
我が父、ゼースが言うには、その異世界と私の担当する世界とは、あまり干渉させるな。と言われましたの。
そこで私は一人の女性をターゲットにした。
この女性に、異世界とのゲートを《《しめやか》》に取り繕ってもらおうかと思ったのです。
ですが、問題が発生しました。彼女は魔物との戦闘中に、呪いをかけられた仲間に殺害されてしまったのです。
私はすぐに彼女の魂を救い上げ、神界に召喚させました。
彼女はとても清らかな心の持ち主。私の目に狂いはなかったようです。
ですが、私はその時の彼女には気が付きませんでした。
彼女の魂を私の友人と共に召喚してしまったことに…。
風の精霊 シルフィー。
彼女は私の筆頭侍女としてではなく、良き友人でした。
私が幼き日より、仕えていた侍女が人族の娘に加護を与えていたのです。
「ヴァルキリー。ツバキ目を覚ましなさい」
「ここは? あなたは?」
「ここは神界。あなたの世界では天界とも呼ばれている場所です」
「っと言うことは、私は死んだのですね…」
「貴方は呪術をかけられた仲間に殺されました」
うな垂れてしまって可哀想に…。
「私はペルセポネィ。 あなたを救うものです」
「ペルセポネィって!? 女神様でしたか! 大変失礼いたしました!」
あらあら、気を使わせちゃったかしら?
「ツバキ、私からあなたにお願いがあります」
「はい! なんなりと」
「あなたには私の統べる中にある、こことは別の世界に転生してもらいたいのです」
「別の世界? ですか?」
「はい、別の世界です。分岐点、パラレルワールドといえばわかりますか?」
「はい、存じております」
「あなたには行ってもらいたいのはですね、魔物のいない世界の地球。その代わり、人族が魔物以上に荒んだ心を持つ人種がいる地球です」
「人がですか!?」
あらあら、驚いちゃって。
「人がです。ですが、その世界では殺人は最も重い罪となります」
安心したようですね。
「私はそこに行き何をすれば良いのでしょうか?」
「そこへ行き、城紙家の極意を学びなさい」
「シロカミケ? とは何のことでしょうか?」
「全てを教えてしまったら、つまらないでしょ?」
「は、はい」
「襲。と言うものを学びなさい」
「カサネ…。 承りました」
「そして最後に、ツバキ。あなたの望む物を叶えましょう。言ってごらんなさい」
「望むもの? でしょうか…?」
あら、可愛い。 考え込んでしまって。
「あの、ペルセポネィ様! あなた様と…その…お友達になりたいです!」
「はぁ!?」
あらやだ! 変な声を出しちゃったわ…。
「お友達と言いますと?」
「親友です。困った時は助け合い。お互い気軽に名前やニックネームで呼び合う。そして好きなお茶や、お酒を飲みながら好きな人や、恋人の話をする。そんな親友です。そして私は何より、男に生まれ変わり、ペルセポネイ様とは最終的に恋人になりたいでっス! よく言うじゃないですか? まずは友達からって! そんな友達です! お願いします! 恋人同士になりたいでっス!」
「でっス! って…」
何、この子!?
ちょっと怖い…。
ちょっ、なんでお辞儀して手を差し出してんの!?
はっ? 目が優しいんだけど?
てか私、結婚してるし?
あー! でも、無理やりの結婚だったしなぁ〜!
人族かぁ〜。
揺らぐなぁ〜。
おっと、あっぶなー。
この子に流されるところだった…。
「おほんっ。あのねツバキ。私、既婚者なの」
あ。 崩れ落ちた…。
「ギャー!! マジかぁー!! 恥ずかしいー!! 告っちゃったよ! ガチコクリしちゃったよ私!」
ツバキは箸が転がるように、顔を隠しながら床を左右にコロコロと転がっている。
「あの、ツバキ? 私はあなたと恋人にはなれないけど友達にはなれるですわよ?」
あ、変な言葉遣いになちゃった…。
って、何であなた、いきなり直立不動になっているの?
「いえ。友達ではなく親友です。そして私は男です。そして身体能力は今以上に。そして、ペルセポネィ様以上に素敵な恋人が欲しいです! あぁ〜、でもそんなのいないかぁ…」
「わ、わかりました」
怖い…。
この子怖いんだけど!?
人族でこのプレッシャーはすごいわね…。
と、とりあえず次の世界に送ってしまいましょう!
「それではツバキ、貴方に女神の祝福を捧げます。頼みましたよ」
「え? もう? もっとお話しを!」
「ちょっ! まっ! え?」
「ペルちゃーん!」
そしてツバキは旅立った。
「いや、マジなんなのあの子…」