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女神が統べる世界(アイツらけっこう性格悪いぜ)  作者: 青紙 ノエ
ファーストミッション(impossible)
2/17

 VORACITY 貪欲ども


 昭和32年3月30日土曜日。 夕方の東京の気温は11度。 

 斎場の空気は重く、私の両親を悔やむ声があちこちから聞こえる。


 私、いや僕は瀕死の状態から回復し、両親の葬儀の場にいる。


 そして僕はペルちゃんの言ったとおり、叔父の家に引き取られたようだ。

 と言っても、僕が生活する場所は叔父の家の敷地内にある物置小屋。 この小屋はプレハブというものらしい。

 とりあえずだが、雨と風は防げるので大丈夫だろう。


「椿くん」

 担任の沢田先生が話しかけてきた。


「こんばんは先生。お忙しい中、父と母のためにご足労いただき有り難うございます」


 沢田先生が呆気に取られている。


「先生? どうしました?」

「ううん、なんでもないよ。椿くん、辛い事や困った事があったら、些細なことでもいいから先生に相談してね」

「はい、有り難うございます」


「椿! こっちに来な!」

 先生と会話をする僕を見て、叔母が怒ったように呼ぶ。


「先生、叔母に呼ばれたので、失礼します」


 あの叔母、性格が顔に出ている感じね。

 椿くん、大丈夫かしら…。





      ☆ ☆ ☆




 新学期が始まり、私は5年生になった。


 ペルちゃんに言われたとおり、私は毎晩、公園で体を鍛えている。

 4月の夜は未だ肌寒く、桜の花びらが舞い散る中、ひたすらパルクールで素早さのステータスを上げていた。


 長い枯れ枝を2本持ち、双剣の練習をしつつ、バク転や前転を織り混ぜながら、斬り伏せる鍛錬。 

 風の加護を使い、グローブジャングルの頂上までジャンプをし、その上にある棒の上に片足で立つ。

 そこから後ろへ2回転のバク宙をし着地。


 その時、「ねえ、もうやめて!」という声がした。


 振り返ると手さげバッグを胸の前で抱き抱える女子。

 

「なんでこんな事をするの? 危ないからやめて」


 メガネをかけ、春の夜風に髪を乱しながら彼女は僕に言う。


「鍛えているんだ」

「なっ? こんな鍛え方はダメ! 君、名前は? どこの小学校?」


 うわっ、めんどくさ…。


「私は○○小学校の六年、八神(やがみ) りり子。今は塾の帰り」

「えっと、僕も八神さんと同じ小学校で五年。 名前は城紙(しろかみ) 椿。」

「君、いつもここで危ない事をしているでしょ? こんな時間まで何をしているの? お父さんとお母さんは知っているの?」

「あぁ、父さんと母さんはいないんだ。今は叔父さんの家でお世話になっている。二人とも僕の事なんて気にしていないから大丈夫です」

「え? ご、ごめん…」

「気にしないで」

「えっと、城紙くん。私は君のことが心配だから! 気にするから!」


 八神さんはそう言って足早に帰って行った。


 ていうか八神さんこそ、こんな時間に一人で帰る方が危ないんじゃないかい?

 まぁ、とりあえず帰りますかね。



 物置小屋、もとい。 部屋に戻ると叔母さんが部屋の中にいた。


「夜遊びかい?」

「いえ、走り込みをやっていました」

「ふーん。まあいいわ。明日は査察の日だから母屋に帰ってきな。 職員の前ではちゃんと笑顔でいるんだよ。わかったね!」

「はい」


 バン!

 思い切り扉を閉めていく叔母。


「VORACITY…」


 思わず口にしてしまった…。




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