始まる前の始まり
「こんにちは城紙 椿さん。」
僕の目の前には後光を背に、麗しいという言葉がとてもしっくりくる女性がいる。
「ここはどこですか? 貴女は?」
真っ白い空間。 暑くもなく、寒くもない空間に僕は座っている。
そんな僕の目の前にいる女性は、優しい笑顔で微笑んで言った。
「城紙 椿さん。突然ですが、貴方は旅先で交通事故にあいました。その事故により、貴方のご両親は亡くなりました。そしてここは人間の世界で言うところの神界。 または天界と呼ばれている場所です。そして私の名はペルセポネィ。一応、女神をしています」
「えっと、ペル…ぺっぺ…」
「ペルセポネィ、ペルでいいですよ」
「あの、ペル様。 僕は死んだのですか?」
「いいえ、今は…。言いづらいのですが、死ぬ一歩手前? いわゆる虫の息って言ったほうがいいかしら?」
「あぁ、死ぬんですね?」
なんだかなぁ…。 小4、10才で死ぬのかよ…
「ところで城紙 椿さん。 貴方は転生者でしたよね?」
「転生者? 何ですか…?」
女神さまから転生者と聞いたとたん、僕の頭に激痛がはしった。
「うっ!」
「思い出しましたか?」
「ペルセポネィ…。 ペルちゃん!? またアンタかよ!?」
あぁ、そうでしたね。私は転生者でした。最初はこことは違う世界、数千年前の地球。しかも分岐点で枝分かれした世界、魔物のいる世界だった。
私はその世界で風の精霊、シルフィーの加護を授かり戦っていたヴァルキリー。
戦死した私をペルちゃんが今の地球に転生させたんだった…。
あれ?
ちょっと待て?
そういえば私は女だったじゃん!?
なんで男児になっているんだい?
「あの、ペルちゃん? なんで私は男の子になっているのかな?」
「えー? 椿ちゃんが男になりたいって言ったんじゃない?」
は? そうなのか? あーもー、そこら辺は思い出せないな…。
「で? 私はどうなるの?」
「もちろん転生してほしいなぁ。とか思っているのよ」
「ちょっと待って! もしかして私の両親は私を転生させる為にた死んだわけ!?」
「まさか。死んだというよりも、シルフィーちゃんの加護をそのまま持ってきちゃった、椿ちゃんが狙われたのよ」
「私のせいで…」
お父さん、お母さん。
とても優しかった…。
私のせいで、なの?
「厳密にいうと、別次元の神々のせいね」
「別次元?」
「椿ちゃんの場合も別次元って言えばそうなんだけど、もっと違う世界。 異世界ってところね」
「なんで異世界の神様が?」
「今から椿ちゃんに行ってもらう世界はね、もうすぐその異世界と繋がるの。数千年に一度、その異世界とのゲートが繋がるのよ。そして椿ちゃんにはまた転生してもらって、その異世界との繋がりを《《しめやか》》に取り繕ってもらいたいのよ」
「しめやかにって…」
「ちなみに、次の世界でも両親は同じよ。でも事故後なので、椿ちゃんは叔父さんに引き取ってもらっているの。 椿ちゃんの生活は酷いものだけど、最初だけだから我慢してね?」
叔父さんって、あの家族かぁ…。
なんだか想像つくなぁ…。
「あっ。向こうに着いたら毎日、近くの公園で、夜の八時から九時まで、必ず体を鍛えなさい。パルクールだっけ?あの危なっかしいトレーニング」
「こまかいね」
「うふふ。いい? 毎日よ?」
てか、行くって言っていないんだけど…。
「さぁ椿ちゃん。時は来ました。あっ、言い忘れていたけど、次も地球よ。魔法も魔物もいない平和な地球。シルフィーちゃんの加護をバンバン使っちゃだめだからね~! あとハルバートを持った異世界人の亜神の子と仲良くしてあげてね〜!」
って!?
目の前に霧が出てきた?
ちょっ! まっ!
女に戻せー!