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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

キャッチボール

作者: TmiiiZ

「ドシン」

水谷はキャッチボールをしていた。

水谷はキャッチボールが好きだった。なぜなら、キャッチボールは相手と会話をしたような気分になるからだ。それに軽い運動にもなる。水谷は投げるのが得意ではなかったが、うまく相手の胸に投げられた時の快感が好きで毎日のようにキャッチボールをしていた。


「こんなに日々キャッチボールができるなんて、橘がいつも相手になってくれるからだよ。ありがとう」そうやって感謝の気持ちを伝える。「そういえばこんなにキャッチボールをしているのは大学生の頃以来だな。ソフトボール部のユリちゃんと3人でよくキャッチボールをしてたよな。俺はユリちゃんの事が好きだったけど、お前はあんまりユリちゃんのことが好きじゃなくて、でもそんなお前の釣れないところにユリちゃんは惹かれたんだと思うよ。結婚おめでとう。ユリちゃんを幸せにしてやれよ。」


「そうだ、今日もキャッチボールをしようよ」そういった水谷はいつも相手になってくれる橘に向かって、ボールを投げた。橘はいつものようにそれを受け止める。幸せだ。こんな日々が毎日は続けば良いのにと水谷は考えていた。


今日は40℃以上もある暑い夏だったが、ここは家の地下室だから涼しいし、誰にも邪魔をされない。地下室は大きいわけではないが、田舎ということもあってキャッチボールができる大きさではある。「アベノミクス前に地下室がある家を買っていてよかった。今買ったら当時より1,000万円も高くなっているよ。涼しくて、キャッチボールもできて最高だよな」そんなことをBに向かって話しながら、今日も地下室でキャッチボールをしている。


そんな中、「ピーンポーン」家のインターホンが鳴った。水谷はキャッチボールを辞め、玄関へ向かった。「なんだこんな忙しい時に」「警察です。この辺で橘さんが行方不明になっているそうです。奥様も探しています。水谷さんは橘さんと仲が良かったとお聞きしていますが、何か知っていることはありませんか?」


Aはめんどくさそうな顔を上げて、笑顔になってこう言った。「彼とはとても仲が良かったからわかるが、今頃湘南の海にでも遊びに行ってるんじゃないですか?奥さんと最近喧嘩していたと聞いていたし、ただの家出かもしれませんよ。いや彼も暑いところが苦手だから、涼しいところに行ってキャッチボールでもしてませんね。どちらにせよ私は知りませんよ」

警察は「そうですか。最近は物騒になっているので水谷さんも気をつけて下さいね。何か情報がありましたら署まで連絡をお願いします」

そう言って警察は捜査へ出て行った。


水谷は地下室へ戻った。橘が行方不明になっているんだって。本当物騒な世の中だよな。

そう言って水谷は、動かない橘と今日もキャッチボールをしている。

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