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エピローグ


 スタッグは白旗を揚げた。


 誰だ「前の話の引きからこれじゃ、即落ち2コマじゃん」とか言う奴は。

 騎士団長の名誉の為に言っておくと、これでも一応抵抗はしたのである。


 悪魔に胸をつんつんされて迫られた時には「でも、まだ気持ちの整理がつきません! 俺は……殿下をそういう目で見たことが無いので」と正直に言った。

 それが本当に正直な気持ちだと伝わったのだろう。サファイアは頬を膨らませつつも「じゃあもう少しだけ待ってあげる」と納得してくれた……が。


「でもモタモタしてたらまたレイに言い寄る男が現れるかもしれないからなあ」


 サファイアの発言にスタッグはゾッとした。


(そうだった! 団員たちは堪えてくれるかもしれないが、ウェストの問題が残っていた! あいつに迫られるなんて考えたくない……っ!)

「殿下、この魔法はいつ解けるのですか!?」

「三年半後かな。僕の十六歳の誕生日に設定してある」

「さ、三年……!?」


 その間ずっと女の身で居なくてはならないのは辛すぎる。男に言い寄られるのもごめんだし、騎士団長として団員をまとめるのも難しくなるかもしれない。


「まあ、『取引』は重ねがけできる魔法だから、もう一回僕とレイで性別を交換すれば今すぐ元に戻れるんだけどね」

「!……それをお願いできませんか?」

「いいよ」


 サファイアはにっこりと笑顔でスタッグを見上げる。


「じゃあ先に、国王陛下に僕たちの婚約を報告しに行こうか?」

「!!」


 これである。まあ、サファイアの性格の悪さを差し引いたとしても、王族にお願い事をしようとする臣下が何も対価を差し出さないのもおかしな話ではあるのだ。仕方あるまい。



 ★



「そこまで!」


 今日のスタッグは騎士団長として団員同士の模擬戦を観戦していた。最も優秀な成績を修めた者に声をかける。


「最後の、あの一太刀は素晴らしかった。俺も最近身体が鈍っているから今度手合わせをしてもらおうかな?」

「は、はい! 是非!」


 誉められた騎士は前のめりで請け合った。スタッグは「では次の訓練で」と笑顔で踵を返す。

 赤髪の牡鹿、筋骨逞しい男の中の男を体現した背中を見送る団員たちは小さく声を漏らした。


「団長、やっぱりカッコいいよなあ」

「ああ、俺も団長のようになりたい!」

「でもなぁ……勿体ない」

「……あぁ、団長が女だった時、エロかったよなぁ……」

「もう二度と、あの姿を見られないなんて残念すぎる……!」


 そんな事を部下から言われているなど全く知らないスタッグは、騎士団の練習場から王宮に向かった。婚約者としてサファイアに呼びつけられているからである。


 サファイアが国王陛下に「騎士団長と婚約します」と報告し、恐ろしい事に満場一致でそれは認められてしまった。

 まあ、今回の内情を知らない者から見ればスタッグは魔方陣の中でも姫を守ろうとしていたし、その姫と共に性別逆転の罠にかかったのだから落としどころとしては悪くなかったのだろう。


 そしてほとぼりが覚めた頃に『取引』をして、スタッグは無事に男の身体に戻ることが出来たのである。


 今日は中庭でお茶を誘われているのでガゼボに向かう。遠目からでも白いドレスの大人の女性が目的地に座っているのが見えた。


(誰だあれは?……王妃殿下だろうか)


 サファイアと同席しているのかと思ったが、その横に少女は居ない。不思議に思いながら近づいて、はっきりとその姿を見たスタッグはあんぐりと口を開けた。


「殿下……」

「やだ、レイったら。今は私的な場所なんだからサファイアと呼んでよ」


 黄金の髪に深い青の目を持つ極上の美女は、更に美しくにっこりと微笑む。


「な、な、何で……」

「だってレイは、わたくしが子供だからそういう目で見られないんでしょう? わたくしが成人するまであと三年もあるんだもの。そんなに待てないわ。だから……」


 女性の身体に戻っても、彼女は変わらない。か弱く純粋無垢で悪の欠片も知りようがないと思わせる見た目なのに、その中はしたたかで狡猾で余裕たっぷりである。


「ちょっと王妃殿下(お母様)と『取引』したの。三歳ほど若さをあげてきたわ。親孝行にもなって一石二鳥でしょ?」



これにて完結です。お読み頂き、ありがとうございました!


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― 新着の感想 ―
[一言] やはり女性には勝てませんね( ˘ω˘ )
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