副団長、仲間が心配なので探します
「そういえば、どうして森の中にいたんすか?」
自己紹介も終わり完全に打ち解けてきたとき、メイはスプーンを咥えながら聞いてくる。
ダンは目の前にいる少女たちが、先の雑談で悪い人間ではないと確信したので答える。
「仲間を探してるんだ…少々事情が込みいったあるんだが…」
「あー…そうなんすね…」
ダンが気まずそうに口にすると、少女たちは先のギルドの件を思い出し、目をそらしてしまう。
「まぁなんだ、重い話じゃないんだが…それ以上に重大なことがあるんだ」
「重大な話って?」
シズが深刻そうに聞き、他の少女たちも身を乗り出す。
「路銀が無い」
ダンはあえて深刻そうに言うと。
「…ぷっあははは、その実力でそれはないでしょ!…プクク」
「メイ命の恩人に失礼」
「ユウの言う通りだよ笑っちゃダメだよ」
「だってさ…クフフ」
ダンの話で和気あいあいとし、これからの事を考えて切り出す。
「少しの間、パーティーに入れさせてくれないか?この辺の事とかに詳しくなくてね」
少女たちは顔を見合わせて、一斉に頷くと。
「カッコイイお兄さんがパーティーに入ってくるのは大歓迎すよ」
「私たちが出来ることなら何でもします」
「命の恩人だから一生分の恩返しする…」
男と一緒にいることが嬉しいメイ、純粋に恩義を感じてるシズ、恩義に格好つけて何か企んでるユウ、の承認を経てパーティーに加わったダンは一言。
「ありがとう、これから世話になるよ」
パーティーに入れてもらい何事もなく、物事が進んだ。
ギルドに登録して冒険者になり、薬草を採取し、動物を狩る。
上級の冒険者が上級の魔獣が奥から出てきたことから、奥の森に調査に向かうが、巻き込まれることもない。
村の人たちとひと悶着を起こすことなく、良好な関係を築いた。
ダンにとっては当たり前のことを、当たり前にやっているつもりだが、気遣いの達人のように思われているようだ。
思えば傭兵団に入る前は、決して裕福でも名声があったわけでもないが、問題に巻き込まれることもなく過ごしていたのだ。
団長に命を助けられたのが運の尽きと言うべきか、傭兵団に入り只管問題を処理していった。
その甲斐あって、戦闘力が団の中で最低であったにもかかわらず、副団長に任命された。
問題を押し付けられたともいう。
思い出せば出すほど、ダンは仲間が問題を起こさないか心配になっていった。
「あいつらを探さないと拙いかもしれん…」
路銀も溜まってきたため、少女たちには黙って仲間を探す旅に出かけることにした。
早朝を迎え、朝早く起き、早速村の出口に向かう。
霧が出て、本来人影も見えない時間帯なのだが、三人の人影が見える。
「おーい私たちも連れてってくれよ~」
「水臭いですよ?パーティーを組んだ仲じゃないですか」
「ん…まだ一生分の恩返し出来てない」
少女たちは口々に付いてくるつもりだという。
ダンは流石に、自分の我儘に付き合わせるつもりはなかったが。
「町の場所とか分かるの?この辺こととか知らないんでしょ?ここは私たち任せて!」
「旅は道連れ世は情け、一緒に行きましょう!」
「そもそも私たちも、村から出て行くつもりだったから、予定が被っただけ何の支障もない、それに一生分の恩返しも出来ていない…」
少女たちの言い分もあり、実際何某かの伝手も必要だろう。
ダンは少女たちに少々呆れながら、それでも楽しい旅になりそうだと思った。
副団長編は山も谷もない章になってしまいましたが、出来ればもう少し読んでいただければと思っています。