少女たちの道案内
男は死に瀕した少女たちに、どこか怪我をしてないかを尋ねる。
少女たちは我に返り、勢いよく首を振って大きな怪我をしていることを否定した。
男は少し安心した顔をした後、少女たちに言う。
「少し迷ってしまってね…道案内をしてくれないか?」
男は困った顔でそういうと、少女たちは激しく頷きながら顔を赤くして、道案内をしてくれた。
「この先に私たちの村があるんですよ、エヘッエヘヘッ」
少々不気味な笑い声を発しながら、リーダーを先頭、男を中央、後方に魔法使いと斥候が男を護衛するかのように進行していく。
男は若干嬉しそうな少女たちを見て、そこそこ強い人が来てくれることが嬉しいのだろうと、思いこれからの生活の事を考える。
仲間と逸れてしまったので、暫くは傭兵稼業を出来そうにないこと、少なくともダンジョンの報告を兼ねて、冒険者としてギルドに行くことが決定事項になる。
「出来れば皆その村に居てくれればいいんだが…」
あの魔法規模の事故では、勿論そんなことはあり得ないと俄か知識で考えられるが…。
男はそんな考え事をしながら歩いていると村が見えた。
少女たちは宿屋に案内しようとしたが、男は先ずギルドに用があることを告げると快く案内を続けることを了解してくれた。
ギルドに入ると注目を浴びる。
余所者が入るのが珍しいのだろうと見当をつけるが、まるで男が珍しいかのように男だと発している。
男は何がそんなに珍しいのか分からないが、気にせず受付に向かう。
受付は混んでるようで見えるが、一つだけ空いてるところがあった。
その受付嬢に向かっていき声を掛ける。
「ちょっといいかい、報告したいことがあるんだが」
その受付嬢は挙動不審になりながら答えた
「なっなななっなんですすかかか」
挙動不審さに新人相手だと思い、少々の面倒臭さを感じながらも報告はしなければならないのだ。
「俺はS級の傭兵の紅衣傭兵団なんだが、依頼されていたダンジョンの件について…」
男はそこまで言うと受付嬢が眉をひそめながら、待ったを掛け
「申し上げございません…そのエスキュウとは何ですか?ダンジョンという物も聞いたことがありませんし…紅衣団というクランも存在していませんが…」
男は目を丸くして反論する。
「ちょっと待ってくれ、紅衣傭兵団が無くなってるだって?死んだら無くなるかも知れないが、こうして生きて帰ってきているだろう?それにダンジョンを知らないってどういうことだよ!?そこら辺に沢山あるじゃないか、それにS級のRANKを知らないって…オイオイオイどういうことだよ!!?」
捲し立てる男に、受付嬢は宥めながら説明する。
魔獣を狩って、納品するには冒険者登録しなければいけないこと。
ギルドが冒険者に与えるランクとは木級は例外ではあるがで銅、鉄などの鉱物を筆頭に与えられること。
ダンジョンなどという物は本当に存在しないこと。
傭兵団も他の町などのギルドが連絡という形で伝わってくるが、帳簿にも存在しないことを伝えた。
男は説明をされるたびに頭を抱えたが最後に一つだけと言って。
「ギルドの指南書を読ませてくれないか?流石にあるんだろう?」
受付嬢は気の毒に思いながらも、ありますよって言い指南書を手渡した。
男は手渡される前に表紙の文字を見た。
読めない。
文字が読めないのだ。
男は深い息を吸って吐き、覚悟を決めて本を開く。
そこには男が知らない文字が書かれていた。
指南書は法律で共通言語で書かれる決まりなのにだ。
男は案内してくれた少女たちにこう言った
「宿に案内してくれないか・・・」
その男の顔は疲れ切っていた