強大な魔獣と男
少女たちは森に入っていく。
木級が薬草や動物などを、最初に入った場所で狩りをする。
その狩場は、銅級や銅級などでは狩れない魔獣などを鉄級が狩りをし、最初に冒険者になった者に与えられた場所だ。
こういう場所では鉄級は、木級の成長の妨げにならないように、積極的に動物や薬草を狩ってはいけない決まりになっている。
少女たち鉄級がその場所で狩っていいのは、木級が狩れない魔獣だ。
だが基本的に魔獣は銅級や鉄級などが、狩っているので基本的に出会うはずもないのだ。
少女たちは気軽に話ながら歩を進めていく。
つい昨日、鉄級に昇格したばかりのリーダーの少女は、浮かれ気味に将来のことを語る。
「このまま行けば結婚するのも時間の問題なのでは?かぁーっ私ってやっぱり持ってるわ」
他人が聞けば余りにも調子に乗っている発言だが、実際の実力を見知っている、魔法使いと斥候は、いずれそうなるだろうなと内心同意していた。
何せこの村での最年少鉄級取得者である。
木級の時に、漏れ出た魔獣を倒し、パーティーを作ってからは、この森に棲む銅級に分類される魔獣を全て狩っているからだ。
「もうそろそろ魔獣の領域」
斥候の少女はパーティーメンバーに気を引き締めるように促す。
狩れる相手とはいえ、魔獣は魔獣、決して油断していい相手ではない。
斥候の少女はパーティーの目となり耳となり奥に進む。
その途中特に良い薬草などが見つかり、幸先がいい出だしであることを喜びさらに前に進んでいく。
もうそろそろ鉄級の領域に入るという時に、斥候はあることに気づく。
「魔獣が全然出てこない」
明らかに異常な状態に声が震える。
まるで誰かが狩りつくしたと言わんばかりに、魔獣に出会ってないのだ。
そもそも木級領域の時には、動物も見なかったことも思い出す。
斥候はこの異常事態に、早くも撤退の申し出をリーダーに進めようとしたとき、パーティーが来た背後から何かが近づく音がした。
その物音はこの辺にいる魔獣などでは、出せないほどの足音であり、パーティーが来た背後から来ることもあって逃げ出せず、迎撃態勢を持って迎えた。
「来るなら来い」
強い魔獣が弱い魔獣の領域に入ってくることはあり得ることであり、鉄級の魔獣が入ってきたと予測した。
しかし繁みから顔を覗かせたのは、傷だらけになりながらも自身の回復のために獲物を追い求める二角の強大な熊の魔獣だった。
「あり得ない……」
斥候の少女はこの魔獣が銀級相当であると同時に、銀級相当の魔獣がここまで来ていることへの異変で何かあったのかと思ったが、最早そんな暇もなく戦闘は始まった。
魔獣は、一番前にいる斥候に爪を振り下ろす、その余りにも早い攻撃に冷や汗を感じながら間一髪で避け、そして目に向けて石を投げる。
魔獣は僅かに顔を背け目に当たらなかったが、苛立ったように斥候に対して攻撃を繰り出そうとする。
その隙を魔法使いが自身の最高威力を持つ魔法を叩き付け、更に戦士であるリーダーの技で追い打ちをかける。
しかし痛手を受けているが致命傷には至らず、更にはパーティーは魔力を消費したためこれ以上の攻撃を繰り出すことも出来ずにいた。
最早撤退するしかないのだが、最短撤退の道は魔獣に塞がれ、回り道をしようものならこの魔獣に狩られること必須である。
生きるにはこの魔獣相手に只管攻撃して、割に合わないと思わせるしかないのだ。
その間、斬撃を与え、魔法を打ち、時には避ける、そんなことを続けることをした。
その間にもパーティーたちは疲労し続けたが、魔獣はいよいよもって攻撃を苛烈にした。
ついにはリーダーが疲労で鈍くなり魔獣に致命的な一撃を与えられようとしていた。
魔法使いは悲痛な叫びを上げ、斥候は自身の勘に従わなかったことを後悔した。
その時繁みから黒い影が飛び出し、一瞬で魔獣の首を跳ね飛ばした。
今さっきまで命の危機に瀕していたのに、瞬間魔獣の首が跳ね飛ばされれば呆然とする。
「おい大丈夫かい?お嬢さんたち」
声をする方へ振り向けば男が立っていた。
恐らくこの男が自身たちを助けてくれたのだろうが、自分たちの常識と魔獣の首を跳ね飛ばしたことが噛み合わなく夢心地のまま。
「男?」
と呟くしかなかった。