聖騎士団は青年と仲良くしたい
「ヒッ……」
青年が怯えた声を上げると、聖騎士達は一斉に顔を背けた。
男性を怯えさせるなど、聖騎士としてあるまじき行為であり、何とか弁解したい。
しかしここで話しをしようとすると、一斉に声を上げることになり、さらなる怯えに繋がりかねない。
このままでは怯えた青年を前に、空気が重くなる一方であったが、隊長が咳払いをし、青年の意識を向けて話しかける。
「あー…青年よ、良く聞いてほしい…ここにいる者達は皆青年の心配をして見に来ているのだ…だから……その………私達を嫌い…にならないで欲しい……です……」
「あっ…はい分かりました…」
隊長の弁明は最後の方は蚊の鳴くような声の小ささだったが、隊長の見事な挽回により、青年に嫌われずにすんだことに胸を撫で下ろした。
青年はしばらく警戒するように周りを見渡したが、何かに気づいたのか探すように見周した後。
「仲間は…いない……ようですね………」
辺りに重い沈黙が漂い、目を逸らす者もいた。
隊長は、意を決して口を開く。
「…君の為に結論から言おう……私達はこの辺の、周囲一帯を探したが、君の仲間の痕跡は一切見つからなかった…」
隊長は内心顔を強ばながら、それでも安心させるような声色をして言った。
「…分かりました……死んでいないなら大丈夫です…私の仲間は私より強いですから」
青年は拳を握りしめながら、自分に言い聞かせるように呟く。
辺りは焚き火の音が静かに鳴り、皆一様に焚き火を見て、心を落ち着かせるように眺める。
しばらくして落ち着いた頃に青年は質問した。
「そういえば皆さんはどうしてこんな所に?…その格好からもしかして戦争…とかですか?」
「いやそんな物騒なことじゃないさ!鍛錬を兼ねて魔獣退治をしていたんだよ」
「魔獣?…失礼ですが私が囲んできた魔物のことですか?」
「ああそうだね…君の故郷では魔物と呼ぶみたいだね、君もここでは魔物ではなく魔獣と呼んでくれ」
「はい分かりました…しかし女性だけで魔物…魔獣を狩るなんて凄いですね!」
「いやぁそんな事ないさ!こんな女所帯なんてむさ苦しいだけ…」
そこで隊長は気付いた、部下達の目が嫉妬の炎を燃やしている事に。
確かに傍から見れば自分は、男相手に話を盛り上げていい雰囲気を作り上げているように見え、聖騎士達も魔獣相手に戦ったのに、自分達を無視するような行いはあまりに酷いと感じるであろう。
もし自分が同じ立場なら、八つ裂きにしたい気持ちを抑えきれないだろう。
隊長は流石に自分の身を案じ、咳払いをしたあと。
「そうだ、他の聖騎士とも話して見たくは無いかね?きっといい経験になると思う」
青年は話してみたいようで、聖騎士達と向き合う。
聖騎士達が一斉に話しかけ、隊長が止めたりとあったが、緩やかな時間が過ぎていく。
聖騎士達の長い夜が始まる。