聖騎士団は男に夢中
魔獣に襲われている人を救うという想定外の出来事が有っても、やらなければならない事がある、野営の準備だ。
日も暮れ、野営の準備をする聖騎士達だが、その進捗が本来の進み具合より遥かに遅い。
原因は助けた青年が目を覚まさないのが気になり、入れ代わり立ち代わり様子を見に来るからだ。
団長も騎士達が本来やるべきことをしない事を、怒るべきなのだが、青年が目を覚まさない様に小さい声で怒鳴り、またあろう事か青年に膝枕をやっているのだ。
これには聖騎士達も私だって膝枕したかったという嫉妬と、正論だが二人きりに成りたいだけだろうという邪推
しかし聖騎士としての団長の尊敬と、聖騎士の誇りから来る庇護欲
様々な感情が入り混じり、最終的に邪なことを仕出かした輩を私が成敗してやるということになり
あわよくば私の聖騎士になって下さいなんて言われる妄想を繰り広げる始末である。
少なくとも、寝ている守るべき男に邪な事をしようとする輩など、聖騎士及び聖騎士見習いなどになる前に入隊審査で弾かれているのだが。
それほど男を守れたということに、聖騎士達が浮かれていたという事実があった。
野営の遅れなどのゴタゴタがあれど、流石に日が暮れる前には野営の準備を終える。
後は晩飯を食べ、夜番を交代しながら夜を明かし、帰還するだけなのだが…
今回は大きく異なる点が存在する…青年程の年齢の男が居るのだ。
訓練及び治安維持の任務を遂行している、年頃の女達の興味を引かれない訳が無い。
大勢の聖騎士達…もとい女達が、青年を人目見ようとお仕掛けてきた。
本来であれば、青年を天幕に寝かせたかったが、人目に付かない所で間違いがあってはならない、という猛抗議あってこのような事態になっているのだ。
聖騎士達が見守る中、隊長の解散命令も虚しく無視され、聖騎士達が青年を凝視する、異様な光景が繰り広げられた。
そして遂に青年が起床した第一声が
「ヒッ……」
という怯えた声だったのは、当然といえよう。