魔のお屋敷と使用人
その後、私は一頻り泣いた後とりあえず昼ご飯を食べにいくことになった。
なぜ朝ご飯ではないのかといえば朝から気を失ったり泣いたりした結果、昼になってしまっていたのである。
現在は腫れた目を冷やしながら髪を梳かしてもらっている最中だ。
お前慣れるの早過ぎだろって?全然慣れてないから!
顔を洗う為洗面所を探してふらふら歩いていたら、ぶっ倒れたのに何フラフラ歩いてんだよ?!と使用人さん達と父様にお部屋に強制送還されましたよ。そういえばその時使用人さん達からの視線がなんていうのか信じられないものを見るような目だったけど何故だろうか?
「お嬢様~終わりましたよ~」
「ありがとうございます」
淑やかに微笑みながらお礼を言う。髪を梳いてくれていたメイドさんはリルさんと言うらしい。温かみがあって落ち着いた印象の美人さんだ。
「そろそろお昼ご飯を食べに行きましょうか、レオを呼んできますね~」
「えっと、態々呼びにいかなくても場所さえ教えてもらえれば一人で行けますよ?」
私のお昼ご飯移動程度のことに人を使わなくても別に一人でも行けるしね。
リルさんは驚いたような表情の後に真剣な表情になると先程よりも低い声色で言った。
「いいえ、お一人では絶対に無理ですし危険すぎます。やめといた方がいいです」
◇◆◇
───リルさんの言葉に従わず一人で出てきた結果、現在後悔中です。
歩いても歩いてもひたすらに続く廊下!長い長い階段!絶対要らないだろと突っ込みたくなるほど多い部屋!
……道を聞いてきたはずなのにものの見事に迷いました。家が危険ってどう言うこと?って思ってたけど確かに危険だ。大人ならともかくこんな小さい身体ではきつい。しかもこの身体前世よりも体力がない!少し歩けばもう倒れそうになる程だ。
「お嬢様~!」
その声に振り向くと遠くから走ってくる人影が見える。いやお邸走っちゃダメでは?!
「もう、お嬢様~お一人で行ったら危ないじゃないですか!めっですよ!リルに聞いた時お嬢様死んだなって思いましたもん!」
いや堂々と本人にそれ言っちゃダメでしょ?!まあ、色々ツッコミどころが満載だがこの人が多分例のレオさんだろう。あ、最初に目覚めた時の使用人さんがレオさんだったのか。なんか常に走ってるなこの人。
「ごめんなさい、次からは気をつけます」
うん、もう絶対やらないと誓う。
「じゃあお嬢様、は~い!おいで~!」
レオさんが両手を広げる……これはもしかして……?
「どういう……?」
「だってお嬢様もう足キツいでしょ?抱っこしますよ?」
やっぱり!!!にしても抱っこって私どんだけ幼いの?!まだ鏡とか見てないし分かんないけどこれ相当だよね?!
少なくとも中身は成人してるし流石に抱っこは……
「じゃあ歩きます?」
足を少し動かし………うん、無理だ。私は足の死か恥かならば恥をとるよ。これ以上歩いたら死ぬ。3日は歩けなくなる。私は大人しくレオさんに抱っこしてもらうことにした。
にしてもさっきまで走ってたのに軽々と私を持ち上げるレオさん凄いな。どのくらい鍛えてるんだろうか。
そんなことを考えながら上を見上げるとばっちりレオさんと目が合ってしまった。
なんか恥ずかしく顔を背けてからもう一度チラッとみるとまた目が合う。
「お嬢様なんです~?もしかして見惚れました?」
窓から入る太陽の光に橙色の髪を輝かせながら冗談めかして笑う姿はなんとも綺麗だった。