美幼女探偵みーちゃんの事件記録〜お菓子密室殺人(?)事件〜
「おじちゃま! たいへんなの!」
くりくりのまんまる目はさらに大きく開き。
鋭い……気持ち鋭い眼差しをこちらに向ける。
けれどその小さな口はたどたどしく言葉を紡ぐ。
そう。目の前の4才の女の子は― ―全然事件でもなんでもない事を、事件にしてしまう天才である。
「……どうしたの、みーちゃん。お母さんまだ帰ってこないよ?」
「ママのことはいいの! いまはね、だいじけんなの!」
「大事件なのかー……」
お昼寝してたと思ったら。
ソファで漫画を読んでいたオレの足元に来て、足をペチペチしてきた。勢いがないから全然痛くないけど、本人的に一大事アピールらしい。
10歳も違う姉貴の子供であるみーちゃんは、令嬢探偵アニメに憧れる女の子。
姉貴はしょっちゅう家に来ては。
みーちゃんを置いて買い物に行く。
「主婦は忙しいの、使えるものは弟でも使うわ!」と言い放つ悪魔のおかげで、遊びたい盛りの高校生のオレは家に拘束されている。
いやまぁ、いいけどね?
どうせヒマですし⁉︎
姉貴のやつめとは思うけどな!
4才児の思考回路は、可愛くて面白い。
「おじちゃま、きいてる⁉︎」
「あ、ごめんごめん。聞いてるよ……で、どうしたの?」
「おかちがなくなっちゃったの! これはじけんなのよ!」
どうもアニメに影響されているらしい。
今日も大きな虫眼鏡を抱えている。
なおそれが使われたことはない模様。
「あのおちゃらにあったのに! ないの!」
「みーちゃんが食べたでしょ?」
「ちがう! みーちゃんまだたべてない! これはみっちゅちゅちゃちゅじんじけんなの!」
早口言葉か⁉︎
アニメのセリフの影響だな‼︎
惜し……いや惜しくないな?
「お菓子は死なないよ?」
「おかちもいたいの!」
「なるほど」
可愛いので、オレは今日からお菓子生きてる説を全力で推していきます。異論は認めん!
「おじちゃまをじょちゅにちてあげるの!」
「そっかー」
「おじちゃま、だっこ!」
「うんおいで〜」
助手は言われるがまま、もっともらしい顔をする探偵を抱き上げる。足の上のみーちゃんは満足げだ。可愛い、そして脈略がない。
「はんにんは、きっとアリちゃんなの!」
「判明早いな〜。でもこの部屋誰も入れないし……あ、みーちゃん口の横お菓子ついてるよ」
「ん?」
「お、とれた」
「……! みーちゃん、さっきおかちたべた!」
「あ、思い出した?」
ねぼ助な探偵の自白により、探偵が犯人ということで事件の迷宮入りは免れた。……お菓子は後で買い足そうか。