第二章 リアル#4
何だかんだで、けっこう書いたものです。いろいろ物語を広げましたが、ちゃんと終わらせますのでご安心を。 ちなみに、次回作はユートピアというものを書くつもりです。
俺たちが外に出て見たものは、3人の男たちだった。そのうちの2人は黒のスーツを着ており、残りの1人は黒のレーザースーツに黒のヘルメットをしている。服装は完璧にあっちの人たちだ。
しかし、俺たちの目に止まったのは服装ではなかった。彼らの手に持っているものだ。黒のスーツ男たちは手に機関銃を、レーザースーツのやつは手にショットガンを持っている。
「さてと、ヤバいけどどうするか。やっぱ、先手必勝だよな。」
豪気が近くに落ちていた石をおもいっきり投げる。豪気の石はとんでもない速さで黒スーツの男の1人に当たった。男は倒れて動かなくなった。
「IANを使って筋力を5倍にしたからな。あいつはもう起きれないだろ。さて、行くぞ!!」
豪気の言葉を合図にして
みんなその場を離れた。本能的に、一ヶ所にいると危険だと感じたからだ。まず、豪気がもう一度石を投げたが黒スーツの男によって撃ち落とされた。
今度は逆に黒スーツの男友達が俺に向かって撃ってきた。
「危ない!!」
咲が俺の前に立ちはだかった。銃弾は咲の体の体に当たった瞬間に砕けた。
「私がみんなの盾になるわ。私は能力のおかげで銃弾は効かないから。」
次に行動したのは持田だ。
「次は俺の番だ。俺のIANでお前たちのことを重くしてやる。」
しかし、持田の言葉どうりにはならなかった。
「なんで、あいつらの体にいるバクテリアを重くしたはずなのに。」
するとノウが持田のほうを向いた。
「持田君、たしか君の能力は自分から半径2mの敵にしか能力は使えないはずだ。前回の戦いで調べさせてもらった。」
「ちくしょっ!」
持田が毒づく。その間にも敵は発砲してくる。咲が盾になっているけどつらそうだ。
「みんな!!さすがに全員は守れそうにないわ。速くあいつらを倒さないと。」
豪気が黒スーツの男に突進していった。豪気の筋力は能力で強化されているので常人には出せないスピードを出して突っ込んでいった。
黒スーツの男は豪気のスピードに圧倒されて機関銃を使えなかった。黒スーツの男は後ろに大きくぶっ飛んだ。豪気のタックルを喰らったからだ。続いて豪気はレーザースーツの男にも突っ込もうとした。
「やめるんだ豪気君!!やつに近づくな!!やつの周りは強力な重力が働いている。」
豪気が急ストップし、その場から離れる。そして、石を拾い、マロに対して投げた。石はマロには届かず、マロの手前で地面に堕ちた。堕ちたというか、叩きつけられたみたいだった。
「ほらね。やつには飛び道具は効かない。全部、重力で地面に堕ちてしまう。」
ノウが言う。
「じゃあ、どうすればいいのよ。打つ手がないじゃない!」
咲が叫ぶ。
「いや、手はあります。皆さん、いったん中に入ってください。」
俺たちはノウの指示どうりに中に向かって走った。途中、銃弾が俺のほおをかすめた。俺は改めて自分が戦場にいるのだと感じた。
「皆さん中に入ったようですね。」
ノウが確認する。俺たちは無事中に入れた。この中なら銃弾は届かない。まあ、あまり長くは持たないだろうが。
「やつの弱点はひとつ。上からの攻撃です。やつは重力を操れますが、上からの攻撃には無力です。が、私たちには上から攻撃する手段がない。」
俺たちは頭をひねった。残念ながら俺たちは強力な飛び道具はない。せいぜい石ぐらいだ。しかし、それだってすぐに避けられる。
「ひとつだけ手段があるわ。雷よ。ここにある稲妻研究所は稲妻を作りだすことができるわ。それをやつに当てれば。」
咲が提案する。
「だが、どうやってやつを研究所まで誘い込むんだ。」
豪気が聞いた。みな、言葉につまってしまった。
「あの、その。」
声をだしたのは、あの少女、蘭だった。さっきから何もしゃべるわけじゃなく、おどおどしていた子だ。
「あの、私の能力を使えばどうでしょうか。私はワープをすることができるから、だから…」
蘭が恥ずかしそうに言って顔をふせる。
「蘭、出来るのか?」
蘭に向かってノウが言う。
「うん、みんなが頑張っているのに私が頑張らないのはダメだと思うの。」
「そうか。じゃあ私たちがなんとか携帯電話を入手してくるから、蘭はマロといっしょに研究所までワープする。できるな?」
蘭がうなずく。持田が手をあげる。
「具体的にどうするの?」
「つまりは、俺たちは携帯電話を入手して、蘭が能力を使ってマロと研究所にワープをして、もう一度ワープをして蘭だけが帰ってきて、そしてマロに稲妻を当てる。だろ?」
豪気がノウに聞いた。
「ああ。それでいいはず。携帯電話は黒スーツの男たちが持っているはず。」
「じゃあ、私はあなたたちが携帯電話を探している間に研究所のコンピューターをハッキングしておくわ。」
咲がノートパソコンを持ち上げる。
「よしっ!決まりだな。行こうぜ。」
豪気が外に向かう。俺たちも続く。外にはマロが待ち構えていた。マロが俺たちに銃口をむける。
「散るんだ!」
俺が叫ぶ。俺の声に応じて全員がその場から散る。マロは一瞬迷ったが豪気に銃口を向けた。豪気は黒スーツに向かって走っていった。
「みんな!もう少しで私もいけるわ。頑張って持ちこたえて!」
後ろのほうで咲が叫ぶ。その声とかぶるように銃声が聞こえた。豪気のほうを見たが、無事だった。豪気は黒スーツの男のところまでたどり着いた。
「こっちだ!」
俺は叫んでマロの上空に向かって石を投げた。俺の考えでは、石はマロの上にいった時にマロが作り出している重力によってマロに向かって堕ちるはずだった。
が、マロも俺の考えが読めたようで、銃で石を撃ち落とした。俺はたて続けに石を投げた。しかし、石はすべて撃ち落とされた。
だが、俺の真の狙いはマロを倒すことじゃなかった。豪気のための時間稼ぎだった。俺のもくろみどうり、豪気は黒スーツの男から携帯電話を手にいれていた。
豪気はもう1人の黒スーツの男に向かった。マロが豪気に向かって銃を乱射するが当たらない。するとマロは銃を捨てた。
「豪気!危ない!跳べ!」
ノウが豪気に向かって叫ぶ。豪気はとっさに横に向かって跳んだ。その瞬間、豪気がいた場所の地面が沈んだ。
「マロのやつが本気になった。IANを使ってくるぞ。あれを喰らったら終わりだ。」
ノウの言うとおり、地面がへこむほどの重力だ。喰らったらひとたまりもない。豪気はまだ黒スーツの男までたどり着いてはいない。
俺は時間稼ぎのため、石を投げるが、今度は一瞬で撃ち落された。ショットガンとは違い、重力を使えば面倒なポンプアクションをしなくていいし、何より有効範囲が広い。
豪気は懸命に走った。マロが重力で地面をへこましてくるのを紙一重で避けながら。
「危ない!」
俺は豪気に向かって叫んだ。豪気は黒スーツの男に向かって跳んだ。ギリギリのところでマロの攻撃は当たらなかった。
運が良いことに黒スーツの男のポケットから携帯電話がとびだしていた。豪気はそれを急いで取ると俺たちのほうに走ってきた。
俺たちは豪気が携帯電話を手にいれたのを確認すると、また発電所の中に向かって疾走した。
俺たちは発電所の中に転がりこむように飛び込んだ。豪気が蘭に携帯電話を渡す。
「だいじょうぶか、出来るか。」
豪気が念をおす。蘭がこくりとうなずく。
「頼んだぞ。」
みんなが蘭のことを見る。蘭はみんなの顔を見回し、きびすをかえしてマロにむかった。
マロが地面をへこましていくがギリギリのラインで当たらない。蘭は必死になってマロの攻撃を避ける。そして、徐々にマロとの距離を詰めていく。
そして、蘭がマロに向かって飛び込む。蘭の手がマロの手にふれる。その瞬間、2人が光を放ち消えた。
「生体反応あり、2人とも研究所の中よ。」
咲がノートパソコンを見る。
「稲妻はいつでも射てるわ。あとは蘭が帰ってくれば。」
咲が言うのと同時に蘭が帰ってきた。
「咲さん。射ってください。」
「いくわよ。」
咲がノートパソコンのボタンを押す。皆、固唾をのむ。一瞬のはずなのに永遠のように感じた。
「生体反応なし、成功よ。」
咲が振り向く。俺たちはたがいに顔を見る。
「やった、勝ったんだ!」
持田の一言で俺たちの緊張がとけ、みんな飛び上がったりして全身で喜びをあらわした。
「さてと、これからどうしようか。」
ノウがほとぼりがさめた後、呟いた。
「俺たちといっしょにこない?」
俺は自然と口にしていた。みんなもノウのほうを見る。
「そうだな、それもいいかもな。けど、その前に豪気君に渡したいものがあるんだ。」
ノウがポケットから一枚の紙を出した。それを豪気に渡した。
「君の妹の情報だ。良いニュースを言うと、君の妹さんの住んでいる場所が分かった。悪いニュースは妹さんがこのバトルロワイヤルに参加していると言うことだ。」
豪気の持っている紙には黒野 暦という名前と住所が書いてあった。どうやら、豪気の妹らしい。
「これは、本当なのか?」
「ああ、本当だよ豪気。今日のぶんのお礼だよ。あと、仲間になるって話だが賛成だよ。お前らを見てるとなんか安心する。」
「じゃあ、」
持田が身を乗り出す。
「ああ、喜んでお受けするよ。ただ、私たちにはまだ仲間がいるのでそいつらも連れてくるから、少し別行動させてもらう。」
俺はノウに向かって手をだした。
「よろしく。」
ノウも手を伸ばし、俺たちは握手をした。
「こちらこそ。」
そうしてノウが俺たちに仲間入りした。俺たちは研究所を出た。ノウは自分の車を持っており、それに乗ってどこかに行ってしまった。俺たちは、また会えることを信じて見送った。
俺たちの次なる目的地は満場一致で決まった。豪気の妹の家だ。
俺は仲間のことを信じて突き進むことにした。どんなことがあろうとも、ただ、前だけを見て進もうと。