第二章 リアル#2
実は今までは書き貯めてたを投稿してたんですけど、今回からは初めから書かなきゃいけなくなるので更新が、かなり遅くなります。すみません。
黄泉の動きは速かった。瞬時に咲に向かって拳銃を構えた。そして、トリガーを引いた。乾いた銃声がした瞬間、俺は思わず咲に駆け寄った。
が、銃弾は咲には当たらなかった。確かに黄泉は発砲したはずなのに。咲は少し笑う。
「黄泉、私には鉄砲は効かないわ。私の能力、クラッシュは私の体に触れたものを粉々に破壊することが出来る。だから私に鉄砲は効かない。」
黄泉が舌打ちをして拳銃をしまい、代わりに手榴弾のようなものを取りだした。それを地面に投げつけた。その瞬間、閃光がほとばしった。そのせいで俺たちは目が眩み、目が元に戻るとそこに黄泉の姿はなかった。
「逃げ足の速い。」
咲がそう毒づいて、こっちに歩いてきた。ノウは咲に見とれていたが、少ししてこちらに走ってきた。そして、俺たちは目に入っていないかのようにランに駆け寄った。
「ラン!しっかりしろ。大丈夫だよな、大丈夫だよな。」
ランはうっすらと目を開け、震えながらも手をノウに向かってさしのべた。
「ノウ…ごめん、僕はここまでみたい。今まで…あり…がとう……」
ランの手はノウまでとどかずに地面に落ちた。同時にそれはランの死をも意味していた。ノウは地面のランの手をしっかり握った。
「ラン、きっとお前の仇は討つ。まってろ、きっと必ず。組織だって俺が必ず。」
ノウは顔を上げ、俺たちを見た。
「皆さん、すみませんでした。いくら組織の命令とはいえ皆さんを殺そうとして。」
ノウが頭を下げる。俺たちは突然謝られて、困った。豪気が始めに口を開いた。
「何か訳ありみたいだし、話を聞かせてくれないか。」
「はい、まずは組織のことから。私たちの組織はチーム零と呼ばれています。組織の目的はバトルロワイヤルに勝ち残り、宇宙人に世界を一度ぶっこわしてもらい。そして、チーム零が世界を平定する。」
「なぜ、そんなことをする。それにリーダーは誰だ。何を考えている。」
「リーダーの名は零。彼は世界を心の底から嫌っている。彼の目的は1つ、この腐った世界を変えること。だから、彼は一度世界を滅ぼし、また再構築する。」
「なぜ、そんなことをする。それになぜ、お前はそれに賛同してチーム零にいるんだ。」
「君たちはこの世界の業を知らないからそんなことが言えるんだ。僕たちハーフはいつも迫害されてきた。見た目で判断され、外国人のように扱われ、いつも好奇の目で見られ、英語も話せないのに。」
豪気が何か言いたげに手を伸ばそうとしたが、ノウは後ろを向いてしまった。
「私が言えるのはこのくらいだよ。さて、私は行く所があるから失礼するよ。」
こうしてノウはどこかに行ってしまった。俺たちはそれぞれの思いを胸に持田の家に向かった。
「なあ、結局ノウはいいやつだったのか。」
俺は持田の家の玄関で咲に聞いた。咲は振り返って俺のほうを見た。
「さあね。でも私たちを殺す気はなかったみたいね。もし、殺す気だったらランにナイフを持たして私たちのことを瞬殺できた。なのに素手で向かってきた。それに彼の目は人殺しの目じゃない。」
そういう咲の顔はどこか別の世界にいる人みたいな感じがした。もう、手の届かない気が。
「なあ、黄泉ってなんなんだ。知り合いか。」
「彼女は父の仇よ。いつか私の手で葬りさる。ノウが言っていた、世界の業、私の父はその被害者よ。私の父は刑務所にいるわ。無実の罪でね。会社の罪をよ。」
「そんな、警察は何をしているんだ。そんなの嘘だろ。」
「金田は何も知らないわ。大企業が倒産すれば何百万人の失業者がでる、経済はどうなる、誰が代わりに物を作るの。」
「それは………」
「例えば携帯電話。たった三社しかない。一社で33%もまかなってる。一社が潰れるだけで携帯電話が使用不能になる。いまや日本を動かしているのは企業よ。」
「じゃあ、警察も。」
「そうよ、企業の言いなり。私の父は会社の重大な犯罪の身代わりにされた。手引きしたのは零よ。彼女が全てを壊した。私は彼女を許さない。もう、ここまでにしましょう。」
そう言い残して咲は家の中に入っていった。俺は周りを見渡し、ひとつため息をついた。
「世界の業か。」
俺は少しずつ自分の常識が崩れていくのを感じていた。
俺たちは家に入り、これからのことを考えることにした。それぞれがテーブルにつき、豪気が話し始めた。
「さて、これからどうするか、だよな。とりあえず俺たちの目標はこのゲームに生き残ることだよな。」
豪気がみんなを見回す。俺たちはうなずいた。
「多分、これから俺たちの障害になるのはチーム零とか言うやつらだ。こいつらに関してはあまり情報がないが、とりあえず分かるのは、こいつらは俺たちの命を狙ってくるということだ。」
俺は少し気になっていることがあったから話に口を挟んだ。
「みんな、あいつらの目的のことをどう思う。世界を滅ぼすって本当なのか?」
咲が口を開く。
「それは多分本当のことよ。あいつ、黄泉が関わってるんだから。」
持田が首をひねる。
「そもそも、黄泉ってだれ。どういうやつなの。」
「あいつは金さえ渡せば何でもするやつよ。殺しだってするわ。そして、やつは私の父の仇よ。」
咲が顔をふせる。豪気が心配そうに見る。咲が顔を上げる。
「ごめんなさい。ちょっと思いだしちゃった。私の父はコンピューター会社に勤めてたの。ある時にね、ある大犯罪の情報を会社で見つけたの。そして、それが会社にばれて……」
咲がふただび顔をふせる。少し涙を我慢しているような気がした。
「父は捕まったわ。黄泉の手引きによってね。だから、私は黄泉を倒さなければいけない。やつを倒して、私は父を助ける。」
豪気が不穏な空気を察して話題を変える。
「ともかく、咲は黄泉が関わっているから、ノウが言っていたことは本当だと思うんだな。」
咲がうなずく。持田が咲のほうを向く。
「ねえ、咲の能力は何?クラッシュって?」
「えっ、私の能力?私のIANは名前はクラッシュ。コップ一杯の牛乳を失うかわりに、1分間のあいだに私の体に触れたものを破壊することができる。そんな感じよ。」
俺は自分の能力について疑問があったので、みんなに相談した。
「なあ、俺の能力なんだけどさ。ちょっと気になることがあるんだ。前にも話したけど、俺の能力は小切手に欲しいものを書くだろ、」
豪気がうなずく。
「ああ、それがどうした。」
「俺は今まで木刀を小切手に三回書いたんだけど、すべて値段が違ったんだ。どう思う。」
「その時々に何か違ったことはないの?ほら、所持金だとか、その時の気分とか。」
咲が聞いてくる。俺は首をひねる。
「うーん、所持金は関係ないと思う。気分も関係ないと思う。あっ、そういえば、まわりにいる人が違ったな。」
「もしかして、まわりにいる人たちや自分の考えに左右されるんじゃない。ほら人によって、物の価値観は違うじゃない。」
「うーん、試してみる。みんな消しゴムはいくらだと思う。」
「俺は五十円。」
「私も。」
「俺も。」
口々に豪気、咲、持田が順番に名乗りをあげる。俺は小切手に消しゴムと書き込む。
「五十円だ。俺一人の時は百円だったのに。咲の予想どうりだね。これから能力を使う時には気をつけなきゃな。」
「ねえ、これからどうするの。どこかに行く?」
咲が聞いてくる。持田が答えた。
「あのさ、不思議に思ってんだけど。電気とか俺たち普通に使ってるけど、だれが発電してんのか気にならない?発電所に行ってみようよ。」
豪気がうなずく。
「言われてみればそうだな。行ってみるか。」