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ロストゲーム  作者: Foo
10/14

第三章 ラスト #3

本当にすみません。定期テストの影響で更新がかなり遅れました。すみません。すみません。何回あやまってもダメですよね。

俺はかなり威勢のよいことを言ったと思う。


はっきり言って、黄泉を倒す方法が思いつかない。あいつに接近戦を挑むのは無理だ。触られたら終わりなのだから。


かといって、こちらには飛び道具はない。せいぜい、道ばたに落ちている物を投げるくらいだ。


カッコつけたのはいいけど何も出来やしない。そんな悔しさが俺の心を満たしていた。


「さてと、誰から殺そうかしら。楽しみね。」


黄泉が不気味に笑う。


「お前、いったいどうやってここに来たんだ。あんなこと、お前が出来るはずない。」


豪気が叫ぶ。


「零の力を借りたんだよ。あいつは全ての能力を使えるからね。だから、どこに逃げても無駄よ。」


豪気が舌打ちをする。そして、黄泉に向かって突進した。豪気の動きは素早かった。おそらく、能力を使って筋力を強化しているんだろう。


「あなた、良い動きをするんだけどね。でも、しょせん一般人。私には敵わない。」


豪気の攻撃は紙一重でかわされていく。しかし、豪気も負けじと、黄泉の攻撃をかわす。


俺は暦に近づいた。そっと小声で話す。


「なあ、暦の能力を使って黄泉の能力は防げないのか。」


暦が首をふる。


「残念だけど出来ないわ。私の能力は物理的なものしか防げないから。」


俺は肩をおとす。


「そうか。いったいどうすればいいんだか。」


俺たちが話している間に豪気は黄泉から離れていた。かわりに、持田が突っ込んでいった。


「次はあなたね。あなたは近づかせるわけにはいかないわ。」


そう言って黄泉が懐から拳銃を出す。


「やばっ!」


持田が頭をふせる。その上を銃弾が通りすぎた。間一髪だ。


「なかなか良い反応ね。さて、どうしようかしらね。」


黄泉が俺たちのほうを見る。そして、俺を指差した。


「決めた。あなたにするわ。後一回で死亡でしょう。なら、ひと思いにやってあげるわ。」


黄泉が俺に向かって走ってくる。とても速く、オリンピック選手、いや、それ以上だ。


「危ない!」


豪気が黄泉に向かって、道ばたに落ちている物を投げる。その間に俺は木刀を構え直す。


「こざかしい。」


黄泉が豪気に向かって発砲する。幸い、弾は豪気には当たっていないようだ。黄泉がこちらに向かって手を伸ばす。俺はギリギリで避ける。


「さて、お手並み拝見。」


黄泉はどんどん手を伸ばしてくる。俺は防戦いっぽうだ。なんとか、攻撃を仕掛けても難なく避けられる。


「なかなか良い反応ね。楽しいわよ。」


黄泉は俺とのやりあいを楽しんでいる。こっちは必死なのに。


「でも、残念だけどあまり時間がないのよね。だから、死んでもらうわ。」


黄泉が拳銃を俺に向ける。この距離じゃ避けられない。


「バイバイ。」


発砲音が辺りに響いた。俺は一瞬、目を閉じた。しかし、痛みはなかった。黄泉の後ろには拳銃を持ったノウがいた。


「本当は使わないつもりだったんだけどね。」


黄泉が振り返った。


「まさか、持ってるとはね。」


黄泉が姿勢を崩して地面に倒れこもうとする。俺はその間に黄泉から離れる。


「まあ、意味はないけどね。」


黄泉が急に姿勢を良くする。


「私が防弾チョッキを着てないと思った。残念、着てるのよ。」


黄泉がノウに向かって発砲する。ノウの手から、拳銃がぶっ飛ぶ。


黄泉が懐から、前回とまったくいっしょの手榴弾を取り出す。


「ふふ、同じ手を使ってごめんなさいね。でも、これが一番手っ取り早いのよ。」


黄泉が地面に手榴弾をぶつける。すると、手榴弾から緑色のようなガスが出る。明らかに毒ガスだ。


(ヤバい、どうにかしないと。)


そう思っても、俺にはどうすることも出来ない。


「今度はどうするのかしら。ちなみに後1分で死ぬわよ。」


その時、暦が声をあげた。


「皆さん、大丈夫です。これを見てください。」


暦が次々とポケットなどから、お守りをだす。


「一人につき、五個あります。私の能力を使えば五分かんだけ毒ガスを防げます。」


暦が笑う。


「暦さん、」


俺たちも思わず笑う。


「みんな、五分で片をつけるぞ。」


俺は黄泉を見据える。


「上等よ、かかってきなさい。」


黄泉は、その場から動かない。なのに俺たちは動けない。黄泉に見られているだけで。


「どうしたの。かかってこないの。」


黄泉の放つオーラに俺たちはその場に釘付けにされる。先ほどまでとは大違いだ。さっきまでは、隠していたんだ。


「くそったれ!」


持田が特攻をする。


「忘れたの、あなたは近づけないわ。」


黄泉が拳銃を持田に向かって拳銃を乱射する。


「持田っ!行って!」


咲が持田の盾になる。


「ありがとう咲!」


持田が黄泉に向かって突進する。


「別に私の武器は拳銃だけじゃないわよ。」


黄泉が懐から手榴弾を取り出す。


「今度は毒ガスじゃないわよ。」


黄泉が持田に向かって投げる。


「ヤバい、あれは防げない!」


咲が叫ぶ。持田は咲の声に反応して、思いっきり横っ飛びをした。爆風で多少は吹っ飛んだようだけど持田は無事だ。


「やっぱり、ダメね。このままじゃ。」


咲が呟く。そして、咲は俺を見た。


「金田。」


その一言にいったいどれほどの意味が込められているか俺には分からなかった。


ただ咲の悲しげな、それでいて希望に満ちた不思議な眼に吸い込まれるように視線を奪われていたから。


咲は黄泉のことを睨むと黄泉に向かって突進した。


「咲。なんて馬鹿なの。父親といっしょだわ。あなた、後一回触れられたら死ぬのよ。」


黄泉の言葉に咲は何も言わずに黄泉に向かって走っている。俺たちはただ、それを見ていた 。


「さあ来なさい。返り討ちにしてあげる。」


黄泉が笑い声をあげる。咲はさらにスピードをあげる。あれじゃ黄泉に激突してしまう。


黄泉が何かに気づいたように眉をひそめる。


「あなた、まさか…」


咲が笑う。


「私の父は馬鹿じゃない。そして私も。」


黄泉が驚きの表情をみせる。


「ありえないわ。」


咲は黄泉のすぐ近くまできていた。


「仇はとらせてもらうわ。」


咲が黄泉に飛びかかった。それはゆっくりと、まるで止まっているかのように見えた。


黄泉の手が咲に触れるのと、咲が黄泉の体に触れるのは同時だった。


咲の頭の数字が0になり、黄泉の体が消えた。


咲は黄泉が消えたことにより地面に落ちた。だが、咲は動かなかった。


俺たちはただじっと見ていた。しかし、咲の体は動かない。


「咲…」


俺は咲にゆっくりと近づいた。咲の目を閉じて安らかな顔をしていた。


「咲…嘘だよな…」


俺は咲の腕に触った。その腕は冷たかった。


「そんな。なあ、咲、目を開けてくれよ。」


俺はいまいち状況がつかめなかったが、それでも咲が死んでいるのは分かった。


「うそだ…ありえな、い咲は………」


俺は言葉も紡ぐこともできず、ただ涙だけを流していた。


俺たちはそのまま、何もせずにその場にじっとしていた。






それから、いくらから時間がたったのだろう。いつのまにか俺の周りにはみんながいて、涙していた。


「きっと、咲は昨日から…」


ノウが呟いた。


「いったいどういうこと。」


俺は涙を拭いてノウを見る


「昨日、咲が私のところに来て黄泉の情報を聞いてきたんだ。黄泉の能力は発動中は手が無敵になるんだ。


だから、黄泉を倒すには黄泉の手じゃない所に触れる必要があった。だから。」


俺は咲を見る。


「でも、別に咲の能力を使わなくても黄泉は倒せたんじゃないのか。」


ノウが首を振る。


「いいや。咲は誰よりも黄泉の怖さを知っている。だからこそ、自分の命を捨ててでも黄泉を倒さなければいけないと思ったんだろう。


そうでもしなければ黄泉は倒せないと、倒さなければ私たちがやられてしまうと、分かったんだろう。」


俺は咲の顔を覗きこむ。


「咲…本当なのか?」


咲は動かずただじっとしているだけだ。答えは分からない。


「なんで、なんで、言ってくれなかったんだ。」


いくら後悔しても咲が生き返らないことぐらい分かってる。でも、俺には後悔することしか出来ない。


蘭が俺たちに向かって手をだした。


「とりあえず、ホテルに戻りましょう。このまま、ここにいても危険です。」


俺は蘭を睨む。


「咲が死んだのに、お前悲しくないのか!」


「悲しいに決まってますよ!でも、このままここにいたんじゃ毒ガスで死んでしまいます。」


「だからって、咲をおいてはいけない。」


「分からないんですか!咲さんは死んでまで私達を生かしてくれたんですよ。だから私達は生きなきゃいけない。」


俺は絶句する。


「つかまってください。」


俺は蘭の手に触れた。他の仲間もそうした。


「いきますよ。」


俺たちは、咲を残してその場から消えた。俺はホテルまでワープする間に咲との思い出を思い出していた。


失って初めて気づく大切なもの。俺たちは咲の命と引き替えに黄泉を倒した。今までの 戦いの中で一番悲惨なものだと思う。


その後、俺は何をしていたのか分からない。ただ、ボオッとしていた。飯を食べていたかも分からない。


布団に入ったことまではなんとか分かる。でも、今が夢の中なのか、現実なのか分からない。


「咲…咲…咲…」


いくら呼んでも、いくら想っても咲が帰ってくることはなかった。

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