悪役令嬢は幸せをつかむ
勢いで書いたもの、かつ初投稿です。
読みにくいところがあったら申し訳ありません。
8000字程度です。
広い心で読んでいただければ幸いです<(_ _)>
*日間恋愛ランキング(異世界転生/転移)において最高3位になりました!皆様のおかげです。ありがとうございます(*^^*)
3年生の卒業記念パーティーでのことだ。
「ミレーユ、僕は君との婚約を破棄する。そして、ここにいるローズ・クリシュナと婚約する!」
アスラーユ国の第一王子であるルーカスは、私にむかってそう叫んだ。
* * * * *
私には前世の記憶がある。自分がどんな人生を歩んだかはさっぱり覚えていないが、これだけは言える。ここは「愛する君に花束を 〜あなたは誰を選ぶ?〜」略して「きみ花」というゲームの世界にそっくりだ。ちなみに、ストーリーに花束は一切関係なかった。どうした運営よ。
まぁそれはおいておこう。この世界で、よりによって私は、悪役令嬢であるミレーユ・マルタリアになってしまったのだ。最近転生もの多いけど、ミレーユだけは絶対に嫌だなぁと思っていたバチが当たったのだろうか。
記憶が戻ったのは6歳の時だ。
父から、今日は婚約者と会うからきちんと挨拶すること、と言われていた。公爵家の娘なのだから、早すぎるということは決してない。生まれた時からもう婚約者が決まっていたというのもよくある話だ。
子どもながらに楽しみにしていたのだが、そこで出会った婚約者が、冒頭で叫んでいたルーカスだった。
出会った瞬間に、恋に落ち………ない代わりに、勢いよく記憶が流れ込んできて、私は意識を失った。
「きみ花」は、すべてのキャラと、ある程度親密度を上げなければ解放されないストーリーがあるため、ヒロインがどのルートを選んでもミレーユは必ず登場し、しっかり嫌がらせをして、国外の、それもかなり田舎へ追放される。そして、王子ルートを選んだ場合は、後半にかなり悪質な嫌がらせを盛り込んでくるため、誰もこない離島の施設に幽閉エンドである。
王子と対面して倒れ、丸一日眠り続けたあと、目覚めた私はかなり焦った。国外追放ならまだかわいいものだが、あの施設にだけは行きたくない。アフターストーリーでミレーユが泣き叫ぶシーンがあったのだが、後味が悪すぎるとユーザーからも評判が良くなかった。あんなことが現実に起こるなんて想像したくない。
だが、6歳に出来ることなどたかが知れている。困った私は、ダンス、マナー作法、政治や経済などの将来に向けた王妃教育の合間をぬって、外交を担っていた父について行くことにした。これでもし何か縁があれば、国外追放になった時の逃げ場が確保できるかもしれないと思ったからだ。
そこである人物に声をかけられたことで、私の未来が大きく変わるのだが……
「おい、聞いているのか!なにか言ったらどうだ!」
とりあえず、この茶番を終わらせてしまおう。
「分かりました。婚約は破棄いたしましょう。どうぞ、そちらのローズさんとご婚約なさってください」
「なっ?! 王妃になれなくてもいいのか?!」
「興味ありませんので」
「そんな強がりを言っていられるのも今のうちだ!王妃になりたくて嫉妬に狂ったお前は、ローズに数えきれないほどの嫌がらせをしたな!それをここで証明してやろう!」
ローズとはヒロインの名前を変更しなかった場合の初期設定の名前だ。平民だったが、クシュリナ男爵家が子どもに恵まれず、遠縁にあたるローズを引き取った、という流れだったはずである。
ローズは、小柄でいかにも「かわいい」が似合うタイプの少女であり、ぱっちりした目をうるうるさせながら王子にしがみついていた。
「ルーカス様!わたしはいいのです!きっとミレーユ様は、ルーカス様をわたしに取られたようで寂しかったのでしょう。仕方ありませんわ…」
「あぁ、なんて優しいんだローズ!見た目だけではなく心まで美しいのか!」
何やらお遊戯会が始まったが、そんなものに付き合っている暇は私にはない。
「ルーカス様、私がローズさんに嫌がらせをしたというのはどういうことでしょうか?全く心当たりがありません」
「とぼけるな!証拠はここにあるんだ!カイル、見せてやれ」
歩み出てきたのはカイル・マークナーだ。現宰相であるマークナー侯爵の息子であり、次期宰相に最も近い人物とされている。
「こちらをご覧ください」
カイルは数枚の紙を差し出した。
「あなたのローズに対する嫌がらせはすべて記録してあります。廊下を歩いていると足を引っ掛けられた、教科書をボロボロにされた、持ち物を目の前で壊された、平民上がりが調子に乗っているんじゃないわよ!などの暴言、階段から突き落とされた、他にもたくさんありますが、キリがありませんね」
セリフの部分はかなりかわいらしい声を出していた。吹き出さなかった私を誰か褒めてほしい。
「マークナー様、お言葉ですが、私にはそのようなちまちました嫌がらせをしている時間はございません」
「すべてローズが事実だと証言しています。あなたの嫌がらせで、ローズはこんなに傷ついているんですよ?そろそろ認めたらどうですか?」
ローズがルーカスの後ろに隠れながら、怯えた様子でこちらを見ていた。
「ローズさんがどうしてそのような妄想をなされているのかわかりませんが、私は学園内では常に友人たちと共に行動していました。それは彼女たちが証明してくれます」
ミレーユの言葉で3人の令嬢が前に出てきた。
「ローズ様が、勝手に廊下を走って、勝手に転んで、なぜかミレーユ様を睨んでいるところは何度か見ましたが、嫌がらせのようなことは一切なさっておりません」
「ミレーユ様は、身分を問わず私どもとお話してくださいます。暴言などあろうはずがありません。それに、学園内では私たちが常に一緒にいました」
「そうです。むしろローズ様が自ら絡みにきて、勝手に言いたいことや、やりたいことをやって帰っていました。迷惑していたのはこちらの方です」
彼女たちは、みんな攻略対象の婚約者だ。ゲームでは登場しないが、ここは現実である。ミレーユは、貴族であれば必ずいるはずの婚約者を見つけ出し、仲良くなっていた。最初は追放されたくない一心で声をかけていたのだが、今ではかけがえのない大切な友人たちである。
しかし、この男たちは、自分の婚約者の交友関係をきちんと把握していなかったようだ。
「ジュリア、なぜそんなことを言うんだ!そいつに脅されているんだろう?」
アンソニー・ファブロットだ。彼は子爵家の息子で、父親は王国騎士団の団長である。剣術の試験ではかなりの成績を残しており、将来は父の座を継ぐことが夢だそうだ。
「彼女たちとは入学する前から仲良くしていただいていますし、脅してなどいません。学園にいる間はなるべく教室にいましたし、移動も誰か人がいる場所を通るようにしていました。皆様にもご確認くださいませ」
「マーリン、君もそんなところで何をいっているんだ!」
この発言はフレデリック・ギスオンのものだ。彼の実家はギスオン商会で、父親の代で業績をあげたために子爵としての爵位を賜った。王家御用達の物も多く扱っており、信頼も厚い。
「いくらマーリンたちがいたとしても、放課後にやった嫌がらせなら、誰も証明できないはずだ!」
すっごいドヤ顔だが、この人たちは、ヒロインであるローズと長くいることで頭のネジが飛んでいって、バカになってしまったのだろうか?
「授業が終わった後は、すぐに王妃教育を受けておりましたので、放課後になされたものはすべて私とは関係のないものです。こちらは王妃様が証明してくださいます」
「では、こんなに愛らしいローズが嘘をついているとでも言うのか?いくら何でも見苦しいぞ!」
「ルーカス様…わたしのことをそんなに想ってくださっていたのですね!」
「君のことは必ず守ってみせるよ」
完全に2人の世界に入ってしまっている。さっきから聞かれたことには律儀に返しているが、そもそもこの環境がおかしいのだ。あの方たちに空気を変えてもらおう。
「そうですよね。王妃様」
「そうですね。ミレーユは私とともにおりました。先程から見苦しいのはあなたの方ですよ、ルーカス」
奥から出てきたのは王妃だ。隣には陛下もいらっしゃる。ルーカスたちはこの2人が卒業記念パーティーに来ることを知らなかった。ある意味サプライズ登場である。
「きみ花」は、ローズが2年生に編入してくるところからスタートする。ミレーユとルーカスは3年生、カイルとアンソニーは2年生、フレデリックは1年生だ。ミレーユが学園に入学してからローズが編入してくるまで「2年も」あったのだ。信頼できる友人を見つける、地盤固め、行動に対する配慮、情報収集など、私にできることはすべてやった。
さぁ、ここから反撃の始まりだ―――
「ルーカス、あなたには伝えていませんでしたが、ミレーユとあなたには、命の危険があった場合のために国から"影"を付けていたんですよ。何かあった場合は逐一報告させていましたが、そちらの令嬢に嫌がらせをしていたなんてものはありませんでした。嘘をついているのはどちらでしょうね?」
影とは、国が雇っていて、陛下に絶対忠誠を誓った隠密行動スペシャル集団だ。その正体は不明だが、他国へのスパイとして、誰にも見つからない護衛として、重宝されていると聞いている。もちろんその技術は国の中でも群を抜いている。影となるには厳しい訓練が必要であり、それで命を落とす者もいるとかいないとか…
これにはルーカスもさすがに動揺したようで、目がキョロキョロ動いている。ローズを取り囲んでいた残りの3人も、きちんと驚いてくれたようで何よりだ。
「っ…、なら、影がいない隙を狙ってやっていたに違いありません!」
「影たちが目を離した隙などあるはずがないでしょう。それから、このことは極秘情報扱いですから、ミレーユにも伝えておりません。ですが、彼女なりに身を守る行動をされていて安心しました」
そう、私も驚いていたうちの1人だ。影がついていることは私も知らなかったし、気づかなかった。この国最強の集団がついていてくれたのなら、私がこんなに苦労して無実を証明しなくても良かったのだ。緊張しかなかったこの1年を返してほしい。
「王妃様はミレーユ様に騙されているんです!影って何か知りませんけど、わたしは本当に嫌がらせをされていたんです。信じてください!」
ローズが王妃の前に飛び出して、何やらしゃべっている。陛下や王妃に対する許可のない発言は不敬にあたるし、あの影を知らないときた。ルーカスが慌ててローズを押さえたが、もう遅い。
「その方は一般常識も身につけていないのですか?」
王妃、完全にキレてるな…
「ここで皆に伝えなければならないことがある」
はじめて陛下が口を開いた。
「まずはジーク・マークナー。君は父親に内緒で功績を作ろうとして、様々な投資や事業に手を出したそうだな。知らぬ間に多額の借金ができていると父親が泣きついてきたぞ」
「まさか、そんなはずは…」
「証拠の書類もある。最初は少額だったものが、返せずにどんどん膨らんでいるな。君1人ではどうにもならないところまできてしまっているぞ。処分は追って通達する」
ジークはその場にがっくりと崩れ落ちた。
「次に、アンソニー・ファブロット子爵。君は学園内での剣術の試験において、試合の勝敗をごまかしていたようだな。金を握らせたり、暴力でねじ伏せたり、手段は問わなかったと聞いているよ」
「そんなことはありません!私はきちんと実力で勝負いたしました」
「2年間ずっと行っていただけあって、かなりの証言が集まっている。それに具体的な指示書も残っていて、筆跡鑑定で君のものだと証明されているが、何か言い逃れできるならやってみなさい」
「……いえ……ありません…」
「次にフレデリック・ギスオン。君はギスオン商会の物を勝手に持ち出しては、そこの令嬢に渡してしていたそうだな」
「そんな!言いがかりはやめてください」
「これも、証拠の書類がすべて揃っている。採算が合わないと調査したら令嬢が身につけるような貴金属や、売れば金目になるものばかりがなくなっていたそうだ。それらをそこの令嬢に渡していたという目撃情報が多数上がっている」
「うっ……それは、ローズが欲しいといったし、うちで扱っているものだからかまわないと…」
「商品を無断で持ち出すなど言語道断。君にも追って通達する。頭を冷やすように」
「はい…………」
「それからルーカス。お前は国の予算からミレーユに対してドレスやアクセサリーを購入し、すべてそこの令嬢に渡していたようだな」
「僕はすべてミレーユに渡していた。ミレーユが、渡したものを身に付けずに処分していたんだ!」
さすがにこれは黙ってはいられない。
「陛下、発言をお許しいただけますか?」
「うむ、いいだろう」
「私はルーカス様から何もいただいておりませんし、処分もしておりません」
「ミレーユはこう言っているぞ。それに、この1年間、国の金が異様に減ったのだ。その令嬢につぎ込んでいたのだな。男爵家の娘が身につけるには不自然な物が多すぎるし、普段からかなり着飾った装いをしていたと聞いている」
「みんな、わたしが男爵家の娘だからお金がないって思っているんですね!」
またもやローズが口を開くが
「ローズ!お前は黙っていろ!!」
「どうしてですか、ルーカス様!みんなが私たちを悪者扱いしてるじゃないですか!何も悪いことしてないのに、よってたかって意地悪ばかり!ひどすぎるわ………」
「そこの君、ローズといったかな」
「はい!陛下!なんですか?」
ローズは持ち前の笑顔を振りまきながら返事をした。
「私は君に、発言を許した覚えはない。しばらく黙っているように」
「わかりました!」
ローズは元気に返事をしたが、この後の発言で驚愕することとなる。
「この場でミレーユ・マルタリアとルーカス・レイ・アスラーユの婚約を破棄する。そして、ルーカスとローズ・クリシュナとの婚約を認めよう」
「やったわ!ルーカス様!」
「あぁ、よく頑張ったな、ローズ」
「2人には、このまま国外への追放を命ずる。これが君たちへの処分だ。この国はサイモンに継がせる。安心しなさい」
サイモンとは、ルーカスの弟である第二王子のことだ。たしか11歳だったと思う。幼い頃にしか会ったことはないが、そのときから頭がキレると評判だった。心配はいらないだろう。
会場が静寂につつまれる中、叫び出したのはローズだった。
「なんで?!わたしはヒロインなのよ!どうしてこんなことになってるの?ねぇ、何か言ってよルーカス様!私を守ってくれるんでしょ?」
黙ったままのルーカスをローズが必死に揺らすが、ルーカスは何も答えない。
「なんでよ!わたしはお姫様になれるはずなの!ハッピーエンドの通りに進んだのに、どうして?!」
「いい加減にしなさい。王妃候補に罪をきせようとしたこと、国の金を使い込んだことは大罪だ。婚約したいという願いは叶えたし、2人揃って追放なのだから、まだ温情があると思ってほしいものだ」
陛下の言葉も、今のルーカスとローズにはきちんと届いていないだろう。
私は、事前に彼らの不正を陛下に伝え、父も交えて相談し、この婚約破棄騒動に便乗することにしたのだ。
ちなみに、これまでのことも、これから起こることも「すべて」陛下から承諾を得ている。
「もう終わったかい?ミレーユ」
生徒たちがざわざわしている中から、1人の青年が出てきた。
「えぇ、ちょうどすべて終わったところよ」
「なぜポートワード国の王太子がここにいるんだ!」
「どうしてリアムがここにいるの?!あなたは第二部でわたしが留学するときに会うはずでしょ?ミレーユとは接点がないはずなのに、なんで…」
* * * * *
リアム・シャル・ポートワードとは、私が10歳、リアムが11歳のときに出会った。学園への入学まであと2年を切り、なんとか外国との良好な関係は築けていたが、まだ確実に逃げることができるようなものではなく、焦っていた。
そんな時に声をかけてきたのが、父とともに出張に行った先で出会ったリアムだ。
「どうして君は、そんなに思いつめた顔をしているの?なんだか、生きていくのに必死なように見えるよ」
たしかに私は必死だった。時間は待ってくれない。入学してしまえば、外国で新たに伝手を見つけるのは容易ではない。あと2年で私に何ができるのか。頑張り続けることも、そろそろ気持ちに限界がきていた。
はじめて誰かに気づいてもらえたことで、これまで我慢していたことが一気に溢れ出てきて、私は泣き出してしまった。
慌てたリアムを見たのは、後にも先にもこの1回だけだ。もっとしっかり見ておけばよかった。
「どうして泣いたのか、話してくれる?」
別室に連れて行ってくれたリアムに、もうやけくそになっていた私はすべてを話した。ゲームという言葉は使わず、予知夢といってぼやかしたが、普通はこんなこと言ったって信じてもらえない。
だが、リアムは―――
「よく1人で頑張ったね。僕も、何か君のために手助けがしたい」
「でも……」
「じゃあもし追放されたら、僕と結婚してください」
その一言で、すべての感情が吹っ飛んだ。この人は初対面の、しかも意味不明な発言をする私にむかって何をいっているんだ?
「今までのお話を信じてくださるのは嬉しいのですが、なぜそんなぶっ飛んだ発言が出てくるんですか?」
「一目惚れしたからだよ。僕はミレーユと結婚したい」
「ですが、卒業記念パーティーで確実に婚約が破棄されると決まったわけではないのですよ?」
「そんなことは分かっているさ。もし婚約破棄されなかったら、こちらから奪いに行くよ」
* * * * *
「君から話は聞いてたけど、あれはひどいな」
「だから覚悟しておいてっていったでしょう?」
「リアム!私を助けにきてくれたのよね?待ってたの!すぐに連れて行って!」
「なぜお前を助けるんだ?僕はミレーユを迎えにきたんだよ。無事に婚約破棄されてよかった」
リアムがミレーユの前に立った。
「ミレーユ、僕と結婚してください。君を心から愛している」
「私も愛しています、リアム様」
美男美女のプロポーズをうっとり見つめていた生徒たちだが、ローズによって壊された。
「なんでそんな悪女と結婚するのよ!私がいるじゃない!ねぇ、こっちを見て!」
「連れて行け」
陛下が冷たく言い放つと、衛兵たちがやってきてローズ、ルーカス、そして顔面蒼白3人組を連れて出て行った。
「ちょっと離してよ!痛いってば!どこに連れて行くのよー!!」
「今回は、私の愚息が迷惑をかけた。このまま卒業記念パーティーを続ける。楽しむが良い」
生徒たちはざわざわしていたが、少しずつパーティの雰囲気を取り戻していく。しばらく時間がたてば、楽しめるようになるだろう。なってほしいと…思う。
ルーカスたちに便乗はしたものの、パーティーの場を利用したことに罪悪感があることは確かだ。
「ミレーユ、改めて言おう。愚息のことに巻き込んでしまい、本当に申し訳なかった」
「本当にごめんなさいね、ミレーユ」
「こちらこそ、様々なことに配慮、ご尽力いただき、感謝しております」
陛下と王妃が協力してくれていなければ、こんなにスムーズに事が終わっていなかっただろう。感謝しかない。
「リアム殿も、協力、感謝する」
「とんでもございません。遅くなりましたが、このような素晴らしいパーティーに招待していただき、ありがとうございました」
「うむ。今後のことはまた相談しよう。今日は楽しんでいってくれ」
「ありがとうございます」
陛下と王妃が立ち去った後、私とリアムは会場を抜け出し、外のベンチに座っていた。
「リアムのおかげで本当に助かったわ。ありがとう」
「ミレーユのためならなんてことないよ」
ルーカスによる国庫の散財はなんとか私が引っ張り出したものだが、他はすべてリアムが見つけ出してくれた。どうやって見つけたのか気になったが、これだけはいくら聞いても教えてくれなかった。何やら秘密の伝手があるらしい。リアムが味方でよかった…。
それに、精神的にも大きかった。リアムがいなければ、途中で諦めていたことだろう。
「父から何度も婚約の話をもちかけられて、逃げるのにかなり苦労したんだよね」
リアムがそんなことを言いながら、私の頬に手を当てる。
「ご褒美が欲しいんだけど?」
そんなおねだりをしてくる最愛の人と、束の間の甘い時間を過ごしたのは、2人だけの秘密だ。
――――――悪役令嬢は幸せをつかむ
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
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