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バイト先で魔装少女とかいうのをやらされてます。……あの、でも俺男なんですけど!?  作者: カイロ


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ショウ・リベンジ


「ヒーローショーをやろうと思うんだ」

「はい??」


 明也がシュガーフェストに出勤して早々、開口一番に京がそう言った。

 唐突過ぎるその宣言に、明也は困惑のあまり何の話をされているのかさえすぐにはわからない。

 そんな様子に気付いたのか、京はすぐに追加で説明をしてくれた。


「すまない、急だったな。そんなに複雑な話でもない。この前幼稚園でやろうとしていた劇がやれずじまいだったじゃないか。練習を見ていた限りでも私的にはこのままお蔵入りさせるには惜しいほどの完成度だったし、別の形でどうにか披露したい、と思ってな」

「そういう話ですか。まあ……わからなくはないですね」

「うん、やはり明也も不完全燃焼だろう?!」


 迫力ある顔を近付けて京が同意を求めてくる。ふわりと良い香りがする距離だったので、ちょっと明也は気恥ずかしい。

 それはそれとして彼女の言葉にも賛成である。みんな真面目に練習していたし、1回くらいどこかで誰かに見てほしい、そう思う。


「はい。やるのは賛成なんですけど、それはそれとしてそのための場所ってあるんです?」

「フッ、当然それも心配いらない。今佐藤たちが3人で調べてくれているからな」

「今から探してるんですね……」


 そんなに威張って言う事でもないと思うのだが、ともかく現在確認中という訳だ。

 どれだけ時間がかかるのだろうか、と明也が思っていると調理場の方にいたらしい店長が走ってきた。


「京ちゃん! ちょうど良いの見つけたよー!」

「おお、でかしたな、咲!」


 早速場所が確保できそうらしい。報告に来た佐藤と京はハイタッチを交わした。相変わらずとても仲が良い。

 佐藤と共に調理場へ戻り、京と明也に改めて説明が開始される。



「今回私達が探し出したのはこれ、茅原町の秋祭りです」


 私物らしきスマホには数日後に開催される茅原町の秋祭りについての情報が記載されている。

 あまり大規模なものではないが、近くの学校の校庭を使って出店やらがいくつか出るらしい。

 開催場所の中央に特設ステージが用意されていて、そこで地元の子供たちがバンド演奏を披露したりクイズ大会をやったりするそうだ。


「お祭りの実行委員会の方に連絡したらステージの利用にはまだ余裕があるみたいで、ショーをやりたいってお願いしたらふたつ返事でオッケーしてくれたんですよ!」


 確保にも既に成功していたらしく、佐藤は京へ向けて得意げにサムズアップをしてみせた。

 それを見た京も満足げに頷き返し、他の3人を見る。


「よし……これで以前の雪辱を果たす事ができるな。今度こそ、私達の劇を成功させて見せようじゃないか!」

「頑張ろうね、京ちゃん!」

「また直前で中止にさせられないといいですけど……」

「派手に暴れたいのな!」

「見ててねぇ、ゆうくん」


 各々、やる気を見せていく。やはり皆どうにかして披露はしたかったようで反対の意見もありはしなかった。

 そこからは再びショーのための練習が開始された。以前の練習からあまり日数も経っていないので流れはそのまま全員覚えていたこともあり、覚え直しの必要も少なく順調に練習も進んでいく。

 本番当日を迎える頃には誰1人ミスをする可能性など無いと確信が持てるようになっていた。

 魔装に着替え、シュガーフェストの従業員たちは祭りの会場へと向かった。


「ここが祭りの会場だな……!」

「事前にやったリハーサルも完璧、実行委員会の方にもしっかり許可取りましたし、今度こそ成功させますよ!」

「ああ、観客もそれなりの数いるし、私達の名を知らしめられるようやっていこうじゃないか!」


 ステージ裏で待機して出番を待つ京と佐藤は、特に熱意が高い。店の宣伝が兼ねられるのを期待しているからだろう。

 彼女らに比べ、明也はかなり平静だった。台詞の量が少なめでトチる失敗もないし、被り物をするマリスドベル役なので顔出しをしなくていいのも理由に入る。

 最大の理由は残りの2名にある。今からやるショーより祭りの空気に気を取られているライミィと戸ヶ崎に絡まれているからだ。


「このお祭り、花火とか打ち上げるんですかぁ? ゆうくんと写真撮りたいんですけどぉ」

「いやぁ、秋の祭りだし花火はやらないんじゃないかな。出店で小さい花火とかなら売ってるかもだけど」

「メイヤ! ワタシたこやき食べてみたいのな! 買って!」

「なんで俺が……? 店長がバイト代はくれてるんだし、自分で買おうよ」

「じゃあ先輩、私にも花火買ってくださぁい」

「じゃあって何!? なんで2人共俺にたかろうとするの!? ていうか、どっちにしろショーの後でね!!」

「わぁい」

「食べ歩きするんよ!」

「奢るって言ってないのにもう奢ってもらうリアクションしてるね!! あとライミィはさりげなく要求を幅を広げない!」


 先輩の金で祭りを楽しもうとする2人と話していると、緊張する暇すらない。逆に心に余裕すら生まれてくる。

 そんな他愛もない話をしている内にとうとう順番が回ってくる。


『えー、次はドーナツ専門製菓店のシュガーフェストさんによる、ヒーローショーです』


 司会進行役の男性の声がマイク越しに響き、舞台開始の合図となる。

 まずは明也が扮するマリスドベルが現れ、暴れるシーンからスタートする流れだ。


「ぬううあああああああぁぁぁッ!!!!」


 練習の時以上に迫力のある叫びと共に、マリスドベルがステージに着地する。その姿を見て、観客の一部から歓声が上がる。


「パパアアアァ!! こわいいいい!!!」

「あははは大丈夫大丈夫」

「へぇー結構リアルじゃん。あの黒い奴どうやって出してんだろ」

「結構高い所から飛んできたし、凄いね。……でもなんでドーナツ屋が?」


 子供が泣き叫び、大人の一部は怪人の姿を見て感心していた。

 その様子はステージ裏からこっそり見ているシュガーフェストの従業員全員にも掴みはバッチリだとわかる。


「いいですよ暁くん、完璧にお客さんの目を引き付けてます!」

「ええ店長。まるで俺の演技じゃないような気分ですよ」


 雄たけびを上げたマリスドベルは、そのままステージのど真ん中に拳を叩き込み、大きな穴をブチ開けた。


「あっ、明也! 何をやってるんだ、いくらアドリブでもそんな事したら後で弁償しないといけなくなるだろう!」

「す、すいません! ……ほんとに何やってるんだよ俺は! 台本通りにやればいいだけなのにあんな事して……!」


 ステージ裏で出番を待つ京に明也は小突かれた。流石に明也自身もあれはないと思う。ステージを破壊するだなんて。


「っていうか、なんでメイヤここにいるんよ?」

「え?」


 ライミィの言葉に、明也は振り返った。ここには、明也を含めた5人が勢ぞろいしている。再びステージに目を向けると、もう1人。

 つまり、今あそこに立っているのは。


「……本物だーーーー!!!!」


 冷静に考え、明也は叫んだ。誰かが代わりにマリスドベル役として立っているのではなく、マリスドベルそのものだった。

 気が付いた時、怪人は今まさに観客の方へと突っ込んでいこうとしていた。


「お、こっち来るじゃん」

「もしかして観客参加系? 俺の方来て! 俺の方!」


 事情を知らない観客の1人が手を振って自分の方へと誘導しようとする。応えるようにマリスドベルはそちらへ向かっていく。

 そのまま飛びかかろうとした直前――


「そこまでだ!!」


 明也の叫びに、怪人は振り向いた。

 ステージの上に姿を現した5人魔装少女が整列し、マリスドベルを睨みつける。


「悪意の怪人マリスドベル! お前の行いは茅原町の平和をを守る魔装少女・シュガーエンジェルが許さないぞ!」


 本物の怪人が現れるという想定外のアクシデントはあったが、急遽明也をリーダーに変更してショーを続行する事にした。

 このまま中止にするより演出の一環として乗り切った方がいいと佐藤が判断したのだ。配役がいきなり変わるが、やりきるほかない。


「少女……?」

「センター思いっきり男じゃん」

「うお……スーツすっごいピッチピチじゃん、いいのかな」

「撮っとこ」

「パパー、ち〇ちん」

「こ、こら! 直に見えてるわけじゃないんだからやめなさい!」


 観客が自分達を見てざわつく声が聞こえ、明也は顔が熱くなるのを感じ、早速逃げたくなる。

 しかし、怪人を放置して本当に逃げるわけにもいかない。羞恥の視線を向けられているのは明也だけではないのだから。……まあ、明也以外は特段気にしてはいないのだが。


「茅原町は決して荒らさせません!」

「ワタシたちが!」

「…………」


 佐藤、ライミィに続き京の台詞が来るはずが、続かない。

 明也がちらと視線をやると、他所に注意がいっているわけでもなく、Dブレードを構えた姿勢で静かにマリスドベルを見ている。


「……先輩、先輩! 早くセリフを!」


 小声で促すと、京が明也を一瞥し、フッと小さく笑う。


「……セリフ、なんだったかな」

「ここに来てド忘れ――――!?」


 あまり態度を表に出さない先輩である京の言葉に、明也は大きく口を開けて絶句した。そういう時にはもっとわかりやすく慌ててほしい。


「いや、だって急に配役が増えるとな、それは何を言えばいいのか忘れたりだってするだろうよ」

「そうかもしれませんけど! それじゃどうするんですかこの続き!?」

「ううううあああぁぁあぁぁッ!!!!!」


 いつまでも小声で話し合ってばかりの明也たちに痺れを切らしたのか、マリスドベルの方から突っ込んできた。

 振り上げられた剛腕が京めがけて叩きつけられ、それを京は右腕で受け止めた。

 カウンターにDブレードでの突きを放つが、即座に後方へ跳躍した怪人には届かない。


「仕方があるまい……ここから先は全部殺陣にしてセリフを誤魔化すぞ!」

「無茶ぶりがすぎる……!!」


 5人でマリスドベルを囲むように位置取りながら、明也は呟いた。

 当てれば必殺のDブレードならば、一瞬でカタはつくだろう。

 しかし、ショーは15分前後の予定で連絡してあるため、それではしばらくの間時間を余らせてしまう。

 予定よりあまりに短くては祭りの実行委員の人にも迷惑をかけてしまうかもしれないし、最低でもあと10分は場を繋げなくてはならない。

 そうなると本当に殺陣の如くDブレードは当てるフリだけに留めておく必要がある。


「みんな! わかってますよね!?」


 念のため、明也は他3名に確認を取る。頷きを返してくれたので、きっと協力してくれる事だろう。


「よし、それじゃあ」

「喰らえええーーッ!!」

「ぐがああああああッ!!!」


 明也が怪人へ向き直った時、京が掛け声とともにマリスドベルを真っ二つに切り裂いていた。

 即座に光の粒子となって消えていく姿を見て、明也はしばし目を丸くする。


「え、すっげ、あれどうやってんだろ? マジで消えてない?」

「3D映像とか使ってるのかな、さっきお前の方行った時直前で止めてたし」

「凝った事するんだなぁ」


 今だ事態を把握していない観客の声を背景に、マリスドベルは完全に消滅した。

 京の方は、完全にやり切ったような顔をしていた。


「よし」

「よし、じゃないでしょアンタ残りの時間は一体どうする気なんですか!!!??? 殺陣で誤魔化すんじゃないんですか!!??」

「?」

「この場面でよくそんな『なんで怒ってるのかぜんぜんわかんない』みたいな顔できますね!?」


 明也の剣幕を見て、京は首を傾げていた。まるで理由に見当もつかない様子だ。

 佐藤ら3人もこの後どうすればいいのかわからない様子で顔を見合わせ合っている。


「そう心配そうにするな。ちゃんと考えてあるから、先ずは一旦はけるぞ」


 よくわからないまま、京に従い4人はステージ裏に戻る。そこでとにかく彼女の考えを聞くことにした。


「あのまま戦闘を続けたとして、私達は芝居に関してほぼ全員素人のようなもの。ぐだぐだになって終わり時を見失う可能性が高かった訳だ」

「……だから速攻で終わらせたんですか?」

「ああ。誤魔化すと言ったって水増しばかりではない。修正の難しい流れをまとめて断ち切ってしまうのも誤魔化しの内だ」

「わからなくはないですけど……それで残りの10数分はどうするんですか?」


 明也の問いに、京は自信満々に答えた。


「演者にフリートークをしてもらう。冒頭しか製作が間に合わなかった第1話の先行上映会の時も私は同じようにして乗り切ったからな」

「……よくそんな状況で4クールも作れましたね」

「違うんだ、本当は完成はしていたんだが、途中で映像を取り直したくなってしまっただけで……その話はともかく、行くぞ皆!」


 そう言って、再び京がステージへと戻っていく。あまり釈然とはしていないが、明也たちも後を追う。

 フリートークとは言うが、そもそもそんな急に話題を思いついたりもしないのだが……しかし京が話題を振ってくれるだろうし、明也はあまり気にしない。彼女に合わせて行動する事にした。


「わー」

「わー」

「よし、ここからはフリートークの時間だ。キャストの皆の楽しいおしゃべりを聞いてもらおうと思う」


 ステージの隅にいた進行役の男性からマイクを奪い取り、京が明也たちにそれを渡してきた。


「あの、司会の人がステージを壊した件を含めてものすごい憤怒の形相でこちらを見てくるんですけど……」

「気付かないフリをしろ。今は場を繋ぐことだけ考えるんだ」

「よくそんな後が怖い事を……」


 ともかく明也はマイクを構え、京の指示を待つ。まずどんな話題を出せばいいのかをさりげなく視線で催促する。


「……」

「……」

「…………?」


 が、一向に京はトークテーマを教えようとしない。それどころか既に仕事をやり終えた感すらある顔だった。

 危機感を覚えだした明也は小声で京に話しかける。


「ちょ、先輩? 俺たち何話せばいいんですか? 先輩?」

「何を言っているんだ明也、フリートークなんだから好きな事を自由に話してくれていいんだぞ」

「や、無理ですよそんないきなり! 好きに話せって言われてもどうすればいいのかわかんないですよ!!」

「え……でもこれだけで前は俳優陣が盛り上がっていたのだが」

「そりゃその人たちはプロなんだからそういうのもできるでしょうけど、素人の俺たちみたいなのは急にアドリブで好きにやれって言われても困惑するだけなんですよ!」

「そうだったのか……万策尽きたな」

「ええええもう策無いんですか!?」

「おい!! もうショーは終わりかよ!! 短すぎじゃねえか!!?」


 特に何も話始めたりすらしない明也らに痺れを切らし、観客の一部が文句を言い始めた。言い返せないくらいの正論なので、どうにもし難い。


「ご、ごめんなさい! ええっと、ど、どうしたら……!?」

「暁くん、貸して下さい!」


 おろおろするばかりの明也から佐藤がマイクを受け取り、観客へ向けて口を開いた。

 何をする気かは読めないが、奇抜な行動を好んで取る彼女ならこの状況もどうにか打開してくれるだろう。


「私達シュガーフェストは茅原町商店街入口の少し前にある交差点を曲がった所でドーナツを作っています! ぜひ来てくださいね!」

「こ、この流れの中でいきなり宣伝を……!? すごい丹力だけど、次はいったいどうするんだ店長……?」


 観客の不満が高まりつつある中で店の宣伝だけして終わってはまず意味のない行動にしかならないが、わざわざマイクを取ったからにはその後に何かを続ける気なのだろう。

 果たして佐藤の次の一手は――?

 そんな期待感を明也が抱きながら佐藤を見ていると、明也の手元にマイクが戻ってきた。


「――ふう。これでお客さん増加は間違いありませんね!」

「逆効果ーーーー!!!!」

「……なんかグダってんなぁ、まあ小っさい村のイベントならこんなもんだわな」

「だな、もう適当に出店見て回るか」


 無意味な宣伝によって我慢の限界を超えたらしく、観客が少しずつステージから目を逸らして他の場所へと散っていく。

 ごく一部の人間はスマホなどのカメラを回しながらまだ見ているが、幼い子供もほとんど興味を失い始めている。

 ステージ破壊の件も含め、祭りのスタッフからの視線が恐ろしく痛い。そちらに関しては京のアドバイス通りに明也は無視する事にした。


「……先輩、もう残り時間とかどうでもいいからとっととハケましょう。これ以上はもう俺らがひたすら傷付くだけですよ!」

「いや、逆に考えてみろ。これだけ会場が底まで冷え切ればもう後は上がっていくしかあるまい。まさに独壇場だ、ここから先は何をやっても盛り上がるに違いない」

「この状況でよくそんなポジティブシンキングできますねメンタルの鬼ですか!?」


 撤退を進言するも、京はまさかの継戦を敢行してきた。なぜここまで強気でいられるのかが明也にはわからない。

 今度こそ何か考えがあるのではないかと思った明也だが、逆だと気付いた。たぶん何も考えていないからこそここまで折れない姿でいられるのだ。


「ライミィ、戸ヶ崎! お前達も好きにしていいぞ! 残りの時間を思う存分使って好きな事をするといい!!」

「すきなことしていいんの? じゃあイノシシ狩りしたいのな! 行ってくるんよ!」

「ライミィ!? たぶんステージの上でって意味でだよ!?」

「良し! ちゃんと獲物を持ってくるんだぞ!」

「いいの!?」

「なら私はその間ゆうくんとの出会いのお話を披露しちゃいますねぇ」

「しっかり役割分担ができている!! というか戸ヶ崎さん祭り会場のど真ん中で恋バナするの……!?」

「あの、事前に相談いただいた内容以外の事をこれ以上されるのは困るのですが」


 ライミィがステージから飛び出し森へ消え、戸ヶ崎がゆうくんとの出会いを語り出し始めようとしたあたりでとうとう祭りのスタッフからストップがかかった。

 そのままステージ裏へと押し戻され、長い説教を受けるはめになった。


「多少の暴走なら目を瞑る事もできましたがステージを壊すわお客さんを失望させるわときては流石に我慢も出来かねます。後はもういいので次の方にステージを使っていただきます。破損個所の弁償は後日そちらのお店に請求しに行きますのでそのつもりでいてください」

「ほんと、すみませんでした……うちの先輩も反省していますので」

「やはりLIVEというのは生き物だからな、時に私達脚本家の手綱を振り払って暴れる時もあるのだろう」

「なんでここで大物作家ぶれるんですか!!?? いいからはやく謝って!!」

「いえ、大丈夫です。お祭りですから気持ちが昂ってしまっているでしょうし、弁償の方だけしっかりしていただければ大ごとにはしませんので」


 どうにか京の頭を下げさせようとするが、大人の対応を示したスタッフの人はそれだけ言うと去っていった。

 明也たちもステージから降り、ライミィが戻ってくるのを待つ。

 今更出店を回る気分にもなれないので祭り会場の隅の方で待機していると、10分ほどで戻ってきた。


「あれ、みんなどうしたんよ? ショーは?」

「……うん、少し前に終わっちゃって。ライミィは……」

「ばっちりなのな!」


 自身と同じかそれ以上ある体格のイノシシを背負っている所を見せて、ライミィは嬉しそうに答えた。


「す、すごいね」

「みんなで一緒に食べるのな!」


 その後、シュガーフェストに戻った明也たちはライミィが捌いたイノシシ肉の鍋を作って食べる事になった。

 ライミィが作ったのでやたらと辛い鍋だったが、それを除けば美味しくいただけたという。

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