第21話 夕たんよ…
投稿遅れました…
「…貴方が朝の彼氏さん?」
ふぅん、まあまあね、と『澄井夕』は言った。
声も本人そのものだし、間違いないようだが…
澄井夕、愛称は「夕たん」。
大学生という若さで世界的な会社を経営し、その上モデルまでこなしている。
雑誌「NaN NaN」や「Candy」の専属モデルや、最近はCMにも多く出演していて、所謂"オールマイティ"ってやつだ。
しかし、こんなキャラだったっけなぁ、夕たんって…。
夕たんといえば、フレンドリーな喋り口調でファンにも神対応だったような…?
どうやら俺は、有名人の裏の顔を見てしまったようだ。
「朝に彼氏がいるって言うから、どんな金目当ての子かと思ったけど…案外大したことなかったな」
おいおい、初対面でそれは失礼だろ。
どんどん「神対応夕たん」のイメージが崩れていく…
「だ、だからお姉ちゃん…学校では一切家の話なんてしてないって…」
「あの、朝さんの家って大きな会社とかなんですか」
俺が間抜けな質問をすると、「夕たん」はふん、と鼻を高くした。
「あのねぇ、うちの会社は かの有名な和泉グループですよ?」
ええーっ!和泉グループ?!そんな、大企業の令嬢だったのか?!
朝さんは、あーあ、バレちゃった、とでも言いたげに肩をすくめた。
「翔くんはそんな変な目で見ないって思ってるんだけどね、やっぱりバレたらやだなぁ…」
朝さんは、[家が大企業]というステータスに頼らず、自分の力だけでこんな人気者になってるんだな、としみじみ感じた。
だから、その努力に水を差すようなことはしない。
俺は、そう胸に誓った。
「大丈夫、誰にも言わないし、これまでと区別するようなことはしないから」
我ながら恰好良いことを言ったと思う。
「あ、りがと…」
その朝さんの表情を見たら、いつか見たような、あどけなさと可愛らしさで思わず抱きしめたくなった。
あぁ、あれは俺と朝さんが仲良くなるきっかけとなった「先輩」からのナンパだ。
その瞬間俺は、気づいてしまった。
その''物''があることに。
――モバイルバッテリーだ。
神様ありがとうございます、救世主が現れたんだ!いつか使うと思い鞄に突っ込んでいた物が、こんなに役に立つ時が来るとは…!
俺はカチッとスマホに差し込み、電源を入れた。
メッセージが来ていた。
「海斗:どこにいる?帰った?」
「母さん:迷子かーーー」
「父さん:大丈夫か!どこ?!」
…あ、やばい。
これからもよろしくお願いします!




