第9話 初めてのお出かけ
「タマ、どこか行きたい所はないか?」
魔王様が突然こんな事を言い出した。
どうやらシルヴィアさんから私が退屈にしていると聞いたらしい。
それは嬉しいんだけど、行きたい所かぁ・・・。
危険な場所は絶対却下っ!
うーん。
「あの、それなら私一度、人魚に会ってみたいです」
それならレヴィアタンの領域にいると魔王様は言った。
レヴィアタンさん・・あの美少女かっ。
人魚一族はレヴィアタンさんの部下であり、島の海域に住んでいるらしい。
「よし、それならレヴィアタンの所に知らせを入れよう」
そう言うと魔王様は手紙を書き始めた。
書き上がった手紙を封に入れると、魔王様はその手紙を軽く指で叩く。
すると手紙は鳥の姿になった。
「おおっ!」
鳥は窓の外へ飛び立って行った。
魔法ってやっぱ凄い!
鳥が飛んで行った方向はレヴィアタンさんの島だ。
あっという間に鳥は見えなくなる。
かと思いきや、水色の鳥が猛スピードで飛んできた。
水色の鳥は部屋に入ると、魔王様の手の上で一通の手紙になる。
「ふむ、レヴィアタンからの返事だ」
「はや!!」
何てスピード伝達!
レヴィアタンさんからの返事は心よりお待ちしてますとの事。
魔王様はシルヴィアさん達に、少しの間留守にすると伝えると私を抱えた。
転移魔法でレヴィアタンさんの島へ行くとか。
転移魔法って、魔王様に初めて城に連れていかれた時のあの魔法か。
「あの、前は光で目潰れると言ってたんですけど・・」
「それならその鈴を付けていれば大丈夫だ」
ああ良かった。
失明フラグはぽっきり折れた。
魔王様の足元に魔法陣が現れる。
パアアアアアッ
光に包まれる。
あっという間に、魔王様の城から知らない場所に移動した。
「・・・・え?ここ日本?」
あ、ありのままに今見ているものを話すぜ・・。
ここは魔界なのに、目の前にあるのは凄い立派な旅館だった・・!
な、何を言ってるのか私もさっぱりだけどでも旅館なんだ!!
丘の上の老舗旅館!
丘を見下ろすとそこは・・温泉街だよおお!!
彼方此方で白い湯気がたってるううう!
「この島は魔界温泉が湧き出ていて、悪魔達の憩いの場なんだ」
やっぱり温泉街か!!!
うわあ何か魔界のイメージががらっと変わったわぁ・・。
「レヴィアタンは日本の温泉が好きでな。それを真似てこの大陸の全ての街や自分の城を日本風に変えたんだ」
「旅館じゃなかったんですか!!!?」
旅館だと思ったらお城でした!!
レヴィアタンさん・・見た目は日本風じゃなかったけど、そんな一面があったんだ・・。
「魔王様、タマ様、お待ちしておりました」
ざざっと旅館の前に着物や半纏を着た二本足で立ってる猫や犬、モグラが並んだ。
レヴィアタンさんは最初に会ったときと同じ格好だ。
「レヴィアタン、相変わらずこの大陸は賑わっているな。お前の努力の賜だな」
「ありがとうございます」
レヴィアタンさん、うっとりした顔だ。
魔王様に褒められて、凄く嬉しいみたい。
「それで準備は整っているか?」
「勿論です。どうぞこちらへ」
レヴィアタンさんが中に案内してくれた。
中はもう高級旅館並に綺麗だった。
玄関もあって、スリッパを用意された。
ここまで日本式なんだぁ・・。
魔王様は・・土足で堂々と上がってる。
でもあの格好でスリッパは確かに似合わないよな・・。
私は勿論、スリッパをお借りした。
長い廊下だなぁ。
旅館だわ完全な。
浴衣姿の従業員(後から聞いたら全員レヴィアタンさんの部下だった)は魔王様を見ると、すぐに立ち止まって頭を下げる。
半纏を着て、床を這っていた大蛇もだ・・・。
「こちらでございます」
レヴィアタンさんが案内した先にいたのは。
「魔王様、タマ様。お会いできて光栄ですっ」
「タマ様、私達との御面会願い、大変うれしゅうございます」
だだっ広い温水プールで優雅に泳いでいる人魚さん達でした。
「意外な場所に!!!」
温水プールがある事にも驚いたけど、そこに人魚さん達が待っていたとかびっくりだよ!
履き物を変えてプール内へ入る。
「人魚達よ。変わりはないか?」
「はい魔王様。魔王様と七つの大罪様方のお力のお陰で平穏に暮らしております」
最初はびっくりしたけど、やっぱり本物の人魚に会えて私は感動している。
人魚さん達すごい美人ばっか。
おっぱいなんかブラからこぼれ落ちそう・・・。
男の人魚もいたけど、凄い筋肉むっきむき。
あ、子供の人魚もいる。
「タマさまっはじめまして」
「はじめましてー」
子供達が挨拶に来てくれた、
うわっ可愛いかも!
「はじめまして」
子供達はきゃっきゃっと笑っている。
「タマさまとあいさつしちゃったねっ」
「しちゃったね!」
「こらお前達、ちゃんと行儀よくしなさい。すいませんタマ様!」
「いえいえ~、可愛い子達ですね~」
「畏れ入ります!」
男の人魚さんが深々と頭を下げる。
いやいやそんなご丁寧な・・。
「タマ、楽しいか?」
魔王様にそう聞かれて私はこう答えた。
色々予想を遥かに超えてはいるけれど。
「とっても楽しいです!」
人間を奴隷にしちゃう悪魔達だけど、人間が作ったものは気に入っている悪魔達も多いという設定です




