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第8話 クッキーを作ってみた

評価とブクマありがとうございますっ


魔界会合の次の日。

私は退屈だった。

魔王様は王として色々忙しいらしく、今はいない。

部屋から出ちゃいけないと言われたので、ずっと部屋の中だ。

流石に退屈する。

最初の頃は書庫にある本が結構面白かったので、魔王様がいない間は読み漁ったけど、今日はそんな気分ではない。

窓の外を見ながら、昨日の魔界会合を思い出す。


「七つの大罪さん達・・・中々、個性的だったなぁ・・」


会合が終わって帰るときも、彼らは戦隊のようにぴしっとポーズを決めて爆発&煙と共に消えた。

誰があんな登場と退場の仕方考えたんだろうか?

まあ印象に残ったのは確かだけど。


コンコン。

ノックの音がする。


「どうぞー」


扉が開いて、シルヴィアさんがからからワゴンを引いて入ってきた。


「タマ様、失礼いたします。お茶の時間です」

「お茶の時間?」

「はい、魔王様からタマ様は甘いものが好みだと伺いました。これからは毎日、お茶とお菓子のご用意を致します」


昨日の会合で、お茶やお菓子は人間界のとはさほど変わらないと魔王様は教えてくれた。

料理はともかく、お菓子系は人間界で作られている見た目の方が、悪魔女子達に人気なんだとか。

ご飯はよくて、お菓子は見た目が大事らしい。

分かるような分からないような・・。

でもご飯も見た目大事だと思う。


「タマは甘いものが好きなのか?」


と魔王様に聞かれてはいと答えたら、大量のお菓子が運ばれたんだよね・・。

テレビでしか見た事のないような豪華なケーキとかチョコにはビビった。

全部は流石に食べれなかったけど、でも美味しかったなぁ・・・。

魔界の料理はまだ見た目に慣れないけど、お菓子は最高だった。

見た目も含めて!

ご飯もやっぱ見た目も大事だよ・・。


シルヴィアさんはテーブルにお茶とお菓子を置いていく。

色とりどりのマカロンだった。


「美味しい!!」


赤いマカロンを一つ。

口に広がる苺のような味が、しつこくなく実に美味しい!

こんなマカロン初めて!


「お褒めにあずかって光栄でございます」

「もしかして昨日のお菓子も今日のもシルヴィアさん達が作ってるの?」

「はい」

「すごい!!こんな美味しい綺麗なお菓子作れるなんて!」

「ありがとうございます」


シルヴィアさんとはかなり打ち解けた。

今では敬語はあんま使ってない。

いやでもほんと凄いわ。

プロだよプロ。

五つ星レストランでやっていけるよ絶対。

・・・・星が付いたレストランには入った事ないけどね。

でも骸骨メイドさんが働くレストラン・・人間界で評判になるだろうなぁ。

きっと本物の骸骨だと思わないだろうし。

にしてもほんと美味しいこれ。


「・・・私もお菓子、作ってみたいな」

「タマ様、お菓子作りに興味がおありですか?」

「うん。こんなお菓子作れたらいいなぁって思うよ」

「では魔王様にお頼みして、お菓子作りしてみますか?」

「え!やりたいやりたい!」

「では少々お待ちを・・魔王様の許可を取ってまいります」


シルヴィアさんは一度部屋の外に出た。

1分後。


「許可が出ました」

「はや!!」


どんな交渉したんだシルヴィアさん。


「魔王様から伝言です。お菓子、楽しみにしていると」

「え・・食べる気満々な伝言」

「非常に楽しみなご様子でした」


失敗できねえええ・・・・!


====================


広い台所にて、シルヴィアさんから借りたシンプルなエプロンを着けてレッツお菓子作り!

他のメイドさん達も一緒だ。

ちなみにメイドさん達とも数日の間に結構仲良くなれた。

噂話なんかも教えてくれるくらいに。

例えば、ドラゴン牧場で今は繁殖期に入って気が荒いドラゴン達に最近新しいおもちゃが届いてようやくドラゴン達のストレスが軽減されたとか、今は人間界のゴシックロリータ服が悪魔族の子供達に大人気だとか。

ドラゴン・・いるんだね魔界に。

凄く見ていたいっでも怖い。

そんな気持ちが半々だ。

てかお菓子とかロリータ服とか・・人間界のものも、結構魔界に流出してるんだなぁ・・。


「ではタマ様。はじめましょう」


始めて作るお菓子はクッキーだった。

簡単なようで難しいイメージがあるクッキー。

でもシルヴィアさんはじめ、他のメイドさん達がとても丁寧に優しく教えてくれた。

こんな風に優しく教えてくれるなんて、世の学校の先生達とか上に立つ人とか見習ってほしい。


小麦粉やバター、砂糖等、使う材料は人間界のと変わんなかった。

ただ、バターは普通だったけど小麦粉の色は紫で砂糖は黒かった!(塩は普通に白かった)

なのに生地が出来上がると、ほんのりクリーム色だった。

何故あの色でこうなる!?


生地をとにかくめん棒で伸ばして、型を取る。

蝙蝠の羽根みたいな型があったけど、これは可愛いな。

わあ、ドクロマークな型もある。

しかも結構可愛い。

メイドさん達はこのドクロマークの型がお気に入りのようだ。

皆、ドクロマークの型を使ってる。

私は蝙蝠の羽根とか、カボチャのランタンのとか使ったけど、これハロウィンだわ・・。

え、何これ?ツチノコ?

こんなのもあるんだ・・。


「では焼いていきましょう」


クッキーの型取りも終わり、いよいよオーブンで焼くんだな。


「タマ様、お下がりを」


ん?下がる?

言われた通り一歩下がる。


とシルヴィアさんがクッキーの前に手を翳すと、目の前で黒い炎が燃えた。

めらめらと勢いよく黒い炎がクッキーを・・。


「炎上!??」


何してんのおおお!?

消し炭なんてもんじゃないっ跡形もなくなくなるってこれええええ!!!


「はい、出来上がりました」


黒い炎が消えた。

シルヴィアさんも他のメイドさん達も、美味しそうにできました~と拍手してる。

クッキーはというと、それはそれは美味しそうに焼けていた。


「やった事と結果がつり合ってない!」


いやクッキーが無事なのは嬉しいけどっ。

あの炎はオーブン代わりなの?

えげつない火力だったのに・・。


「クッキーが冷めたら、ラッピングしましょうタマ様」

「う、うん。ラッピング・・良いね」


いそいそとメイドさん達がリボンとか用意し始める。

魔界の調理、すげえなぁ・・・。


ちなみに、味見したクッキーはとても美味しかった。





「タマ!待っていたぞ!!」


部屋に戻ると魔王様がいた。

うわああ、凄い期待した顔をしてるうう・・。

何か子供みたいだ。


「お口に合うか分からないけど・・」


私はラッピングしたクッキーを差し出した。

魔王様はまるでガラス細工に触れるかのように、クッキーを受け取った。

いや、そんな慎重に受け取らなくても。


「凄いなタマ・・こんな美味いクッキーを作れるとは」


さくさくと、魔王様は一枚一枚大事にクッキーを食べてくれた。


「シルヴィアさん達が丁寧に教えてくれたからですよ」

「いや、シルヴィア達もタマは素直で、分からぬ事はすぐに質問し真剣にやっていたと褒めていたぞ」


うわあ、シルヴィアさん達そんな事を・・。

う、嬉しいなぁ・・。


「本当にタマは良い子だな。またやりたかったらシルヴィア達に頼むと良い」

「え、良いんですか?」

「勿論だ。タマが望むならな」


頭を撫でられた。

ここに来てから、撫でられる事多いな。

それに、いっぱい褒められる。


「魔王様は、本当にいつも私を褒めてくれますね」

「ん?それはお前がそれだけの事をしているからだろう?私はそれを称賛しているだけだ」

「いやその、何というか・・・私、今まで褒められた事っておじいちゃんやおばあちゃん以外でなかったもんで・・。

お父さんやお母さんはお兄ちゃんばかり褒めてて、そりゃお兄ちゃんはスポーツも勉強も何でもできたから当たり前と言えば当たり前ですけど・・。

えっとつまり、褒められ慣れてないというか・・」


ああもう何を言ってるのか分からなくなった。

えっと何が言いたかったんだっけ・・!

ああそうだ!


「えっと、だから・・こうやっていつも褒めてくれるの、ほんとに嬉しくって。ありがとうございます」

「・・・・・・・・・・」


何を長々と話してるんだ私は!!

ただお礼を言えば良いだけだったのにっ

ああ、こんなんだからお父さん達から要領が悪いって言われるんだよ自分・・。


「・・・・・・タマ、お前は本当に良い子だな。私もお前と出会えて毎日が本当に充実している。ありがとう」


ぎゅう、と抱きしめられた。

頭も撫でられる。

あ、今日は太ももとか二の腕ぷにぷにしてこない。

珍しいな。

・・・・何か、すっごく心地良い・・・・。





腕の中で眠ってしまったタマを、魔王はベッドの上に寝かせる。

眼鏡を外してやり、その額にそっと唇を寄せる。

魔王は書庫へと向かった。



「マモン」


椅子に座り、七つの大罪の一人の名を呼ぶ。

魔王の目前に、連絡用の魔法陣が浮かび、そこにマモンの姿が映る。


「魔王様、いかがなさいました?」

「お前の部下から適当なのを一匹、人間界のある家に憑かせろ」


魔王とマモンの間に、立体映像が浮かび上がる。

人間界の、ある一軒家。

中が映し出される。


一組の夫婦と息子が一人。

息子の就職が決まって、祝いのパーティーを開いているらしい。

マモンの脳内に、その家族の情報が流れこむ。


「・・・・おやおやなるほど・・・そういう事ですか」


マスクの下でマモンがほくそ笑む。


「分かりました。ではとっておきの奴を送りましょう・・。あらゆる不幸を張り巡らせる一匹の蜘蛛でいかがですか?」

「構わん」


そのまま魔法陣は消え、連絡が切れた。


「魔王様は予想以上にあの人間が気に入ったとみえますね・・・。ふふ・・楽しくなってきました」


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