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第3話 ペット生活の始まり



私は今、人生最大のピンチを迎えている。

絵理奈達のいじめで、トイレに閉じ込められたり階段から突き落とされかけた事もあったがそんなの比じゃない。


「何故嫌がる?」


部屋の隅に追い詰められた。

しかしこればかりは譲れない。

たとえ相手が魔王だとしても・・・っ。


「風呂に入れようとしただけで何故そんなに嫌がるんだ?人間も風呂に入る生き物だろう?」


綺麗にしてやると、制服を脱がされかけたあの瞬間ほど焦った事はない!


「大丈夫だ・・私が隅から隅まで洗ってやる・・・」


300センチはある巨体が迫ってくるうううう!

手わきわきさせてるよおおお!

イケメンなのに怖い!イケメンなのにやってる事が残念すぎる!!!


「魔王様!!NONONONONO!!!」


首をぶんぶん振って拒絶した。

デブで女としての魅力が皆無な私でも恥じらいぐらいはあるぞ!!

こんなたぷたぷした体、人目には晒せねぇ・・・っ

しかし逃げ切る自信がないっ

ああどうしたら良いんだああああ!!!!


「魔王様、失礼いたします」


ん?女の人の声?

もしや天の助け?!(魔界だけど)

あ、いつの間にか魔王の後ろに金髪くるくる縦ロールのメイドさ(停止)



「骸骨ううううううう!!!?」


ふりふりなメイド服を着た、金髪くるくる縦ロールの骸骨が立っていた。

骸骨が、骸骨が動いてるううううっ!


「シルヴィアか。何の用だ?今、私は忙しいんだが」

「僭越ながら、タマ様の寝間着をご用意いたしました」

「おおそうかっお前は相変わらず気が利くな」

「ありがとうございます」


骸骨が普通に喋ってる・・声は凄い綺麗なんだけど、骸骨が動いて喋ってるよおお・・・っ


「恐れながら魔王様、人間の雌は肌を晒すのを嫌う志向があります。タマ様はまだ魔界に来たばかり・・無理強いさせるとストレスがかかるかと」


いや、ストレスとかそんなレベルじゃないんだけど。


「ふむ・・・なるほど、確かにそうだな・・。好みのペットが手に入ったものだから、いささか粗ぶってしまったようだ・・。配慮が足りなかったな」


いささか?

二の腕やお腹を散々揉んだ行動がいささか?

そんな程度じゃなかったと思うんですけど・・。


「ですからタマ様の入浴はタマ様の自由にさせるのが一番かと」

「ううむ・・・・だがもし入浴中に溺れたらどうする?滑って転んだりでもしたら・・」

「ではワタクシがタマ様の入浴のお手伝いをいたします。女同士ならタマ様もご安心なさるかと」

「ああっそれは名案だな!」


え?

何か勝手に話が進んでないか?


「ではタマ様、こちらへどうぞ」

「え?え?」


ずるずると私はそのまま骸骨メイドさんに風呂場へと連れていかれた・・。




部屋にお風呂が付いてるってなんて豪華な。

しかも脱衣所ひろっ!

私の部屋よりも広いよ・・あ、何か泣ける。


「ではタマ様、最初に浴室内のご説明を致します」


シルヴィアさんだっけ?が浴室の扉を開けた。

え、何これ?!高級ホテルの温泉並の広さ!

うっわ豪華すぎるっ

まさに王様のお風呂って感じ!!

・・・・・ただ浴槽のお湯が真っ赤なのがホラーだけど。


「こ、これ、真っ赤なんですけど・・・」

「はい、こちらはブラッドローズという入浴剤を使用しました。魔界の女性の間では人気ナンバーワンの入浴剤です」

「入浴剤かい!」


思わず突っ込んでしまった。

入浴剤、悪魔も使うんだ・・。


「こちらはシャンプーとトリートメント、こちらは石鹸でございます。シャワーはこの石を左に回すとお湯が出て、右に回すと止まります」


壁の緑色の石は宝石かと思ったけど、シャワーのスイッチだったとは・・。

でも何か、元の世界とたいして変わんないかも。

あ、この石鹸、バラの形してるっ

うわあ、お洒落~。


「こちらがタオルでございます、自由にお使いください。何かあればすぐにお呼びください」


そう言ってシルヴィアさんは脱衣所の隅へ。

えっと・・・


「あの、ずっとそこにいるんですか?」

「はい。タマ様から離れたら魔王様のお怒りを受けます」

「えっと、何で壁のほうを向いてるんですか?」

「人間は着替えを見られるのも嫌うと聞いた事があります。ですがタマ様のお傍を離れる訳にいかないので、このような姿勢を取らせていただきました。ご迷惑でしたか?」

「う、ううん!大丈夫っ」

「それは良かったです」


声の調子から、シルヴィアさんが笑ったのが分かった。

この人?いや、この骸骨さん・・良い骸骨さんかも。

ただ表情が全く分からない・・っ

とりあえずお風呂に入って落ち着こう・・。

何かどっと疲れてきた。




「はあ~・・・ほんとに高級ホテルの温泉みたい・・・」


お風呂は真っ赤すぎて入るのに躊躇したけど、意を決して入ったらものすごく良いお湯だった。

お湯をかき回すと濃厚なバラの匂いがした。

う~ん、セレブになったみたい。


「・・・・これからどうなっちゃうのかなぁ・・」


魔界に奴隷として召喚されて、魔王のペットに選ばれて鈴までつけられて。

しかもこの首輪、全然外せなかったし!

仕方ないから首輪を付けたままお風呂に入ってる。


「お湯加減はどうですか?」

「っあ、全然大丈夫です!」


びっくりしたぁ!!シルヴィアさんか・・・。

曇りガラス越しの骸骨・・・怖い。

思わず悲鳴上げそうになったよ。


「はぁ・・・もう帰れないのか・・」


お父さんもお母さんもお兄ちゃんも、おじいちゃんもおばあちゃんも私の事は忘れてるんだよね。

というか最初からいなかった事になってるんだっけ。

何という非情な・・。


「お父さんやお母さん、お兄ちゃんはともかく・・おじいちゃんとおばあちゃんにもう会えないのは結構つらいかも」


お父さんとお母さんはお兄ちゃんにしか関心なかったし、お兄ちゃんは私をバカにしてたから、対して気にはならない、

でもおじいちゃんとおばあちゃんは私に優しかった。

私の事は忘れてしまっても、幸せな余生を送ってほしい。



お風呂から上がると、シルヴィアさんはまた壁の方を向いていた。


「タオルと寝間着と下着はそちらの籠に入っております。お召しになられていた服と下着はこちらで洗濯しますのでご安心ください」


下着、元の世界とあんま大差ないけど、色が黒だった。

黒い下着なんて人生初めてだわ。

・・・あ、ぴったり。

寝間着も黒いパジャマだった。


「あの、もうこっち向いて大丈夫ですよ」

「そうですか。では・・・タマ様!まだ髪が濡れております!」


シルヴィアさんは慌ててどっからかクシとドライヤーを出して、私の髪を乾かし始めた。


「ドライヤーあるんですね、魔界にも」

「人間界では電気というのを使用するようですが、こちらのものは全て魔力で動かすのです。このドライヤーも魔力で動かしているのです」

「魔力・・じゃあ魔法使えるんですか?」

「勿論。悪魔族は皆魔法が使えます」


何か一気にファンタジーっぽくなった!

でも魔力で動かすとか・・んじゃ私、この世界では何もできないんじゃ・・・?


「その中でも魔王様は、一瞬で人間界にいる生物を全て皆殺し可能なほどの魔力を持っておられます」


わあすごーいっ

魔王は絶対怒らせてはいけないと魂に刻んだ。




「タマ!湯あたりはしてないか?火傷はしてないか?大丈夫か?」


お風呂場から出ると、魔王様が目の前に立っていたっ。

300センチの巨体はやっぱり慣れないいいいっ。

がばっと抱きしめられた。


「湯上りの火照ったこの柔らかな感触・・実に良い・・」


台詞だけだと完全な変態だよっ!

ほんとに残念なイケメンだ!!

・・・・声には出せないけど。


「魔王様、タマ様、お食事の準備ができました」


へ?食事?

いつの間にか、部屋にはテーブルと高級料理のイメージが強いドームカバーが被せられた皿が並んでいた。

シルヴィアさん・・いつのまにこれ用意したの?



椅子に座らされて、食事の時間・・。

料理からドームカバーが外されていく。

魔界の料理が公開されるたびに、私は沈黙した。

魔界料理とんでもねええええ!

な、何かうねうね動いてるのもある・・これキノコ?白雪姫とかに出てきそうな派手な色してる・・。

こ、これでかい芋虫みたい・・・うええ・・・。

いや、これはモザイクかけないといけない見た目だしっ


「さあタマ、私が食べさせてあげよう」


魔王が何の生き物か分からない肉を切り分けて、私にフォークで刺した肉を向けた。

魔王はにこにことしている。

お、怒らせたら命が危険・・・っ

目を瞑って口を開けた。

押し込まれる肉・・口の中に広がる何の生き物か分からない肉の味が広がる・・。



「・・・・・あれ?美味しい?」


たとえて言うなら、牛肉だ。

ちょっと高級な、ステーキの味がする。


「そうかそうか、美味しいか。もっと食べると良い」


他のグロテスクな料理も魔王が次々と食べさせてきた。

だがどれも予想を遥かに超えて、とっても美味しかった。


「お前は良い顔をして食べるな。見ていて実に気持ちが良い」


気づけば、グロテスクな料理を完食してしまった。

だ、だって美味しかったんだもん!


「ああ、この食事で膨れた腹も何と愛しい・・・たまらんな」


食後の腹をなでなでされた。

やっぱこの魔王様、残念すぎる。


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