第21話 マモンの趣味
この人はやばい。
そう思ったら、マモンさんがぱちんと指を鳴らした。
そしたらゴスロリ服を纏った骸骨メイドさん達がぞろぞろ現れて、私はあっという間に着替えさせられた。
『えっと・・これは・・・?』
黒いフリルのついた、ゴシックロリータ服。
まだデザインはシンプルな方だが、訳が分からない。
戸惑う私に、マモンさんはにっこりほほ笑んだ。
『写真撮影、させてください♡』
「どういう事だマモン?」
冷たくマモンさんを見下ろす魔王様。
その膝の上に座らされた私。
何故か着替えさせてくれなかった。
マモンさんは、魔王様に睨まれても平然としていた。
「申し訳ございませんでした魔王様・・。大変無礼な真似とは存じておりましたが、私マモンはタマ様とお会いしてからどうしても私が作った洋服を着ていただきたいという欲求に駆られまして・・ついこのような暴挙に出てしまいました・・」
マモンさんの大陸は衣服類や人形制作で有名らしい。
悪魔達が着ている服は全てこの島で作られてるとか。
骸骨メイドさん達の服もみんなここで作ってるみたい。
あとお人形は、悪魔の子供達や一部のコレクターにかなり人気らしい。
マモンさんは島で一番、人形や服の製作が上手だとかで、マモンさん製の人形や服は皆、喉から手が出るほど欲しいんだとか。
私が着ているこの服も、マモンさん手作りだ。
「タマ様は魔王様のもの・・我慢しようと思ったのですが、我慢しようとすればするほど、欲求は高まるばかりで・・気づけばタマ様を我が城にお呼びしてしまいました」
お呼びじゃなくて、誘拐だって自分で言ったじゃないか。
「お前の性質から我慢などできぬだろう・・何故私に断りを入れなかった?」
「それすらも、頭に入らなかったのです」
「・・・・・・・・」
魔王様が重い重いため息を落とす。
呆れてるみたいだ。
「マモン・・お前のした事は絶対許されない事だ。私はお前を八つ裂きにしてやろうとここに来た。もしタマに髪の毛一筋の傷がついていようものなら・・お前の命はなかった」
魔王様、怖い。
でも、私の為に怒ってくれてるんだ・・。
何か、凄く嬉しい。
「だがお前も心から反省しているようだ。2ヶ月の謹慎処分で許してやろう」
魔王様が写真の束をマモンさんから受け取った。
先ほど、マモンさんが取った私の写真・・・。
嬉しさがどっかに飛んでったよ。
「次はちゃんと私を通せ。今度勝手な事をしたらお前を丸裸にしてアスモデウスに送りつけてやる」
「魔王様・・それだけはご勘弁ください」
あれ?
マモンさん、さっきとは打って変わって何か震えてる。
アスモデウスさんって・・あのえっちい格好の悪魔さんか!
マスク被ってるから分かりにくいけど、マモンさん若干青ざめた顔してる・・。
苦手な相手、なのかな?
「ではタマ、帰るぞ。シルヴィア達も心配してる・・」
「あ、は、はい」
ロリータ服の骸骨メイドさんから、私の服が入った袋を貰う。
着替え・・させてくれないのかな?
魔王様は私を抱えると、転移魔法を使った。
「アスモデウスを出すとは・・魔王様も恐ろしい方だ・・」
人払いをして、室内で一人になったマモン。
ぶるっとマモンは身震いしながらも、2ヶ月の謹慎処分で済んだ事にホッとした。
「やはり魔王様は、あの人間の娘に相当弱いようですねぇ」
あんなに怒り狂っていたのに、あの服と写真でこの程度で済まされるとは。
一見、魔王様の弱みになるだろうあの少女。
「・・・・弱みどころか、起爆スイッチになりかねませんねぇ・・これからは慎重に行動しましょう」
マモンは棚から一体の人形を出す。
タマに着せた服と同じ格好をした、タマの人形である。
「本当は味見くらいはしたかったのですが、今回は我慢しましょう・・。ああ、タマ様・・貴方はどんな味がするのでしょう?どんな顔をするのでしょう?
今度はどんな服を贈りましょうか?ああ、楽しみです」
うっとりした表情で、人形のタマの頬に舌を這わすマモン。
同時期、タマは良く分からない寒気を感じていた。
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