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第2話 魔王様は超イケメンで超残念

ちょっと付け足ししました



魔界。

アニメや小説でよく出てくるけど、まさか本当に実在した世界だったなんて、誰が信じられようか。


一つ目の生き物がぎょろぎょろ目玉を動かしながらこう言った。


「魔界では10年に一度、人間界から我々の奴隷として数体の人間を召喚しているんだ。何せ人間は腐るほどいるからなぁ。

しかも魔界に召喚された人間は、人間界では存在そのものがなかった事にされるから、だーれも気にする者はいない。俺達は奴隷が増えてハッピー。

まあ、召喚される人間は決められないし、数もランダムなのが難点だけどな」


つまり私達は悪魔の奴隷として連れてこられたって事・・?


「そ、存在そのものがなかった事にって・・・?」

「だーかーら、お前らは人間界での存在そのものが消去されたの。お前らの家族もお前らを知ってる奴らもみーんなお前らの記憶は消えたし、お前らがいた痕跡もみーんな消えちまったの。お前らという人間は最初っからいなかった事になったの?分かった?」


最初からいなかった、つまり私という人間は存在すらしなかったという事になったの・・?


「そ、そんな・・・」

「いや、いや・・・パパぁ、ママぁ・・・・」

「な、何でこんな、事に・・」

「嘘よ・・夢よ・・・夢だわ・・・」


絵理奈達は腰を抜かしたまま泣き始めた。


「泣いたって無駄だぜ~?お前らはもう人間界には戻れない・・一生俺達悪魔族の奴隷として働く運命なんだからなぁ~」

「い・・・いやあああ!」


絵理奈がとうとう大泣きした。

取り巻き達も大声で泣き出す。


「あ~うるせぇなぁ!少しはそこの眼鏡を見習えよっ」


いや、私も泣きたいよ。

ただ絵理奈達の泣き顔に、涙が引っ込んじゃったの。

鼻まっ赤の鼻水だらだらな泣き顔・・絵理奈達ってアイドルグループになれるんじゃないかという位、可愛いと周囲には評判だったけど、凄いなこの泣き顔。

でもまさかここで、私の神経の図太さが働くとは。


「しかしどうする?人間の雌だと力仕事は期待できねえな」

「眼鏡はともかく、他の雌はそこそこな体つきだから娼館で働けるんじゃね?」

「ああ、あそこならいけるな。眼鏡は無理だろうけど」


とんでもない話が聞こえる一方、何か私はディスられてる気がする。


「んじゃこの眼鏡はどうする?」

「奴隷市場に置いとけば、その内買い手が見つかるだろ」


何か腹立つなぁ・・。

いやでも奴隷市場って、とんでもないフレーズが聞こえたぞ。

ど、どうなっちゃうんだ私・・!


「おいおい、俺達が勝手に決められる事じゃねえだろ?全ては判定次第だ」

「あ、そうだったな」

「ま、この面構えからしてAはいなさそうだけどな」

「ばーか、見た目の判定じゃねーだろ」


判定?

A?

何の事だろう・・?



「魔王様が来られたぞーーー!」


突如聞こえたその言葉に、周りの悪魔達が一斉に列を正した。

え?魔王?

ゲームとかのラスボスに出てくるあの魔王?


黒い長いマントを付けた男の人が現れた。

悪魔達はぴしっと姿勢を正している。

この人が魔王だろうか?


「こいつらが今回召喚された奴隷達か?」

「さようでございます!」


な、何たるイケメええええええン!!!!

長い黒髪に、赤い目。白目部分が黒いけど、物凄いイケメンが私達の目の前に来た。

200センチ、いや300センチはあるよ・・・でっかああ・・・・。

あ、絵理奈達・・涙が止まってポーっと魔王を見上げてる。


「・・・・・・・・・・!」

「え・・・・?」


な、何だ?

何かすごい魔王に睨まれてるような・・・?

ひいっ私の目の前に来たああああっ!


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


お、思わず愛想笑いしてみたり・・・えへ♡


・・・・・ひょいっ。


うえええええ!首根っこ掴まれたあああああ!??

怒らせちゃった?キモい愛想笑いでキレちゃった?

ああ私の人生終わった・・。


「魔王様?そやつをどうするつもりで?」

「気に入った。連れて帰る」


・・・・・・・・・はい?



「そやつを奴隷としてお使いに?」

「いや、ペットにする」

「何と!」


・・・・・・・・・・はい!?ペットおおおお!?

な、何かとんでもない事になってきてるんだけどおお!?


「奴隷でなく、ペット、ですか?」

「悪いか?」

「と、とんでもない!魔王様のペットに選ばれるなんて、羨ましい限りです!」


周りの悪魔達もうんうん頷いてる。

中には何か羨ましそうに私を見ている悪魔もいる。

マジですか?


「残りのやつらはどうしますか?」

「興味ない、お前達の好きにしろ」

「了解いたしました」


私は首根っこを掴まれたままだ。

何だ何だ?魔王の足元に魔法陣みたいなのが浮かんで光り出した。


「このまま城に戻る。後はお前達に任せた」

「はっ!」


呆然とする私の目には、同じく呆然と私を見ていた絵理奈達の姿が映った。


「目をつぶっていろ。人間のお前にはこの光は目が潰れる可能性がある」


目を大きな手のひらで覆い被された。

それが、私が見た絵理奈達の最後の姿だった─。



「もう開けていいぞ」


覆い被されていた手がどかされる。

そこは物凄い広い部屋だった。

え、何これ?どっかの王室?

天井には豪華なシャンデリアがあるし、壁は細かい模様がいっぱいだし、このベッド何?超高そう。


「私の部屋だ。大いにくつろぐといい」


ベッドの上に下ろされた。

あ、まだ首根っこ掴まれたままだったんだ。


魔王は私の前に立つと、指先を私の額に当てた。

え?何されるの?


「大人しくしていろ」


低い声でそんな事言われたらおとなしくするしかないじゃん!

だって魔王、凄い迫力あるんだもん!

イケメンな顔が更に迫力を増してる・・!

亀みたいにおとなしくしよう。

あ、あれ?私の体が淡く光り出したんだけどっ?


「お前の記憶を見ている。動くな」


記憶を見るって・・そんな事できるんだ・・。

流石魔王様・・。

プライバシーが全然ないねっ。


「なるほど、お前の名は珠世というのか」

「は、はい・・」

「ならタマだな。お前は今日からタマだ」


・・・・・・は?タマ?

いやいや、そんな日曜日の長寿アニメに出てくる白猫みたいな名前つけられても。


「お前は今日から私のペットだ。タマ、存分に可愛がってやるぞ」


喉をくすぐられた。

・・まじでペット扱いされてる。

え、ほんとに私、ペットになったの?


「うむ、鈴も似合っているぞ」

「え?鈴?」


ちりん、と首から音が聞こえた。

見ると大きな鈴が私の首に・・・いつの間にか首輪つけられてるしいいい!!!!

これじゃほんとに長寿アニメの白猫じゃあああん!!


「タマ・・・・」

「ひえ!」


耳元で囁かれた。

低音の甘い声に背中がぞくっとしたよ!!

何何!?

うっ超イケメンな顔が目の前にある・・っ

ほっぺに手を添えられるし、な、何だこの甘い雰囲気は!?

流石に何事にも動じない私も、この状況は焦ってしまう!


とさっ


・・・・・・は?

ベッドに、寝かされた?

その上に魔王が覆い被さって・・・。

どえええええ!?

まさかの展開いいいい!??

こ、こんなちょっとエロい少女漫画みたいな展開が私にくるなんて、そ、そんな・・っ




もふ、もふもふもふもふ。


「・・・・・・・・・・・・・・は?」


お腹に感じる、違和感。

目線を下げると、私のお腹に顔をうずめている魔王の姿が。


「ああ・・やはりたまらない・・このぷにっとした柔らかな感触・・想像以上だ」


制服越しに二の腕も揉まれる。


「このふにっとした弾力・・絶妙だ・・こんな逸材が人間界にいたとは・・」


がばりと抱きしめられた。


「ぽよぽよしてて、かつぽちゃっとした柔らかさ・・温かく何て抱き心地の良い・・最高だ」


魔王の目はうっとりしていた。


「タマ・・お前は最高のペットだ・・・・」


魔界の王、魔王。

悪魔族達から恐れられ、尊敬されている存在。

だが、その実態は丸っこいぽちゃぽちゃぽよぽよマニアだという事を、私は後に知った。

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