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第18話 魔界樹



魔王様とルシファーさんが話してる間、私は木の周りを歩いた。

一周するだけで数キロはあるよ・・。

いやあ立派な木だ。

見れば見るほどト○ロの木・・。


「ん?」


木の根元に気になるのを見つけた。

穴だ。

穴が開いてる。

穴の底は暗くてよく見えない。

かなり深そうだ。


「・・・・ますますト○ロだ・・・」


しげしげと穴を覗き込んでしまう。

これで落ちたら完全に私メ○ちゃんだわ。

まあ落ちないようにするけど。


しかし、お約束というのだろうか。

この穴が何なのか、もしかしたら魔界樹に花が咲かない原因かもしれないので魔王様を呼ぼうとしたとき、足を滑らした。


「あ」


そのまま私は。



「あ~~~~~~~~~~~」


穴の中へまっしぐら。


ごろごろごろごろ・・・・ぼてんっ。


な、何かしっちゃかめっちゃかな目にあったぞ!!

視界がグルグルする・・。

ここ、どこだ?

何かト○ロの棲み処みたいな場所に出たぞ?!

あれ?眼鏡がない!

眼鏡、どこだ眼鏡・・。


「ほれ」

「あ、どうもすいません」


渡された眼鏡を装着!

よかった、ひび割れとかしてなくて。

・・・・・ん?

誰だこの眼鏡渡してくれたの?



「よっ」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


誰?

私の目の前には、真っ赤なローブ姿の人が立っていた。

フードで顔はよく見えない・・。

ただ人間でないのは確かである。

だってぷかぷか浮いてるし、唯一見える口元はギザギザな歯だしいいい!


「そんな怯えなさんな、人間の娘さんよ。ワシはお前さんに何もする気はないよ」


声からして男の人だろうか?

でも口調はおじいさんみたい。


「ワシはお前さんに一回会いたかっただけじゃよ」

「はい?」


会いたかったとは何だろう?

向こうは私を知ってるみたいだけど・・。



「魔界樹よ、タマに何をする気だ?」


ふわ、と私の目の前に魔王様が現れた。

魔王様は私を抱きよせて、目の前のおじいさん口調の人を睨んだ。

え、魔界樹?


「おおー魔王様、お久しぶりじゃのう」

「何がお久しぶりだ。タマに危害は加えていないだろうな?」

「お前さんのお気に入りにそんな事、する訳ないじゃろう」


からから笑ってるおじいさん口調の人。

魔王様、この人の事魔界樹って呼ばなかった?


「タマ、怪我はないか?」

「あ、はい・・。あの魔王様・・あの人は?」

「あれは魔界樹の精霊だ」


・・・・・・・・・・・・・精霊!?


「ま、魔界樹の精霊さん?」

「そうじゃよ~」


くるん、と宙で一回転するおじいさん口調の人。

この人が、精霊?

私の中の精霊というと、小人サイズで可愛らしいイメージと神々しいイメージがあるけど・・。

目の前の人は明らかにそれらのイメージとは程遠い。


「ちょうどいい、魔界樹よ聞きたいことがある」

「ほいほい何じゃろな?」

「何故花が咲かない?ルシファーが困惑していたぞ」

「ああ~それな」


にかっとギザギザな歯を見せつけるような、三日月みたいな笑みを浮かべる魔界樹の精霊さん。

何故か私を指差した。


「そこにいる人間の娘さんを一目見たくてのう、ワシが花を咲かさなかったら必ずルシファーはお前に相談する。そしたらお前はワシの所へくる。その時きっとお気に入りのペットも連れて来るだろうとワシは睨んだのよ。いやあ、まさに思い通りじゃったわい」


「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」


つまり、花を咲かさなかったのはわざと・・・?


魔王様も同じ事を思ったのか否か、ぐわしっと精霊さんの頭を鷲掴んだ。


「貴様・・魔界樹と言えどこの頭・・今すぐ潰してくれる」

「あだだだだだ!!!ワシに何かあったらそれこそこの大陸が崩壊するぞ!?あだだだだ!!」


めりめり音が聞こえてくる。


「ま、魔王様!落ち着いてください!!魔界樹は大切な木なんでしょう?おさえておさえて!」

「・・・む・・・タマがそういうのなら仕方ない・・」

「あたたた・・・まったく乱暴じゃのう・・」


魔王様が手を離した瞬間、かなり距離を離した精霊さん。

頭をさすっている。

よほど痛かったんだろうな・・。


「じゃがルシファーとて、内心お前達をこの大陸へ呼び寄せられた事に喜んでおるはずじゃぞ?

何せよく競い合ってるサタンから、お前さんらが来たという自慢の手紙が来てルシファーの奴、かなり荒れてたからのう」


競い合ってるって、ルシファーさんとサタンさんっていわゆるライバル関係なのかな?


「それにこうでもしないと、そこの娘さんと会えなかったからのう。魔王様が気に入ったという人間・・一度は会ってみたかったのじゃ」


魔界樹の精霊さんにまで私の事が伝わっていたとは・・。

もしかして、今更だけど魔界中に私の事が知れ渡ってるのかな・・?


「回りくどい事をするな!お前なら直接私に伝える事ができるだろう?」

「直接伝えて、ワシにその子を素直に会わせてくれるのかい?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


無言になる魔王様。

ほらな!ほらな!と精霊さんは叫んでる。

何か、喧嘩友達みたいだなこの二人。

まあとりあえず、花が咲かない原因は分かったんだよね?


「とにかくお前の目的は達成したのなら、さっさと花を咲かせろ」

「はいはい。ああそうだタマ様や」

「?」


魔界樹の精霊さんはにっこり笑って私を見下ろした。


「お前さんはこれから色んな事を体験するじゃろう。人間ゆえ苦労する事もな。辛い事もあるかもしれん。じゃが魔王様に愛された数奇な運命を持つお前さんならきっと何とかできる筈じゃ」


数奇な運命・・。

それは褒めてるんだろうか?

まあ確かにそうかもだけど・・。


「どれ、ワシから祝福をやろう。お前さんがこれからもこの魔界でやっていけるように、この魔界樹の祝福を」


精霊さんが手を掲げると、その手の中に赤い花が現れた。

その花はすう、と私の首の鈴の中に消えていった。


「魔界樹はお前さんをいつも見守っているぞ。また遊びにおいで」






「・・・・・あれ?」


気づくと、私と魔王様は魔界樹の根元にいた。

え?いつの間に?

さっきまでト○ロの寝床みたいな場所にいたよね?


「はあ・・最後まで奴に振り回されたな・・」


魔王様は小さくため息をつくと、私の頭を撫でた。


「タマ、怪我はないか?怖い思いしなかったか?」

「え、あ、どこも大丈夫、です」

「・・・そうか・・良かった。あの爺の事は忘れてもいいからな」


爺って。

もしかして、魔王様より年上なの魔界樹の精霊さん・・。

魔王様って・・いくつなんだろう?


「魔王様ー!タマ様ー!!花が、花が咲きましたあああ!!」


向こうからルシファーさんが来た。

見上げると、魔界樹に赤い花がいっぱい咲いていた。

鈴の中に消えていった、あの赤い花だった。


「さて・・ルシファーにどう説明しようか」


魔王様がぼやく。

たしかに、どういう説明したらいいんだろうね。





夜、それはそれは盛大な宴が行われた。

ルシファーさんの部下達や骸骨メイドさん達が、目の前で踊ってくれてる。

サンバだ。

サンバを皆軽やかに踊ってる。

骸骨メイドさんの腰の動きが凄い。

折れるんじゃないかと心配してしまう。

生のサンバを見れるとは思わなかった。

魔界で。


「魔王様、タマ様。本日はご足労おかけして申し訳ございませんでした」

「いや、お前の所為ではない。原因はすべてあの爺なのだから」


魔界樹の花が咲かなかった原因を聞いたルシファーさんは、原因を突き止められなかった事に何度も私達に謝った。

いやいやルシファーさん全く悪くないから!


「ルシファーさん、もう謝らないでください。理由はどうであれ、私この島にこれて良かったです。宝石が実る木とか珍しいものが見れたし、こんな盛大な宴を開いてくれて、しかもビアンカとブランシュにもご馳走してくれて、ありがとうございます」


私達の傍ではビアンカとブランシュも大きな肉に噛り付いていた。

何か、金ぴかな宝飾品つけられてるけど。


「それに魔界樹の精霊さんに会える貴重な体験もできたし、むしろ良い事づくめです」


そう、モノは考えようだ。

本来なら魔界樹の精霊さんになんて、出会える確率はないに等しいだろう。

それができた事は、宝くじに当たるより難しい事かもしれない。


「お前はできる事を全てやっていたのだ。お前を咎める理由は何もない。むしろよくやったぞルシファー」

「魔王様・・・タマ様・・・ありがとうございます。このルシファー・・こんなに歓喜に震えたことはありません!」


ルシファーさんは突然ばっと上半身の服を脱いだ。

何だどうした!?

ストリップ!?

私未成年なんですけど!!?


「このルシファー!魔王様とタマ様への感謝の気持ちを込めて、踊らせていただきます!!!」


ルシファーさんは私達の目の前で、盛大なサンバを披露してくれた。

イケメンのサンバ。

音楽に合わせて絶妙な腰のふりを見せるイケメンのサンバ。

梟やクジャク、骸骨メイドさんの中で一層激しく踊るイケメンのサンバ。

それは私の脳の思い出というフォルダにいつまでも残る事になった・・・。


====================


「タマ様・・・何という心の広い優しいお方だ!魔王様が御熱心になられるのも頷ける・・!

ああこのルシファー、一生魔王様とタマ様に尽くします・・!

そうだ、サタンに手紙を出さねば!私のダンスにタマ様が夢中になられていたと伝えてやろう・・!くく、奴の悔しそうな顔が目に浮かぶ・・!」

閲覧ありがとうございます!

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