第16話 ちょっとした事件?
「ドラゴンってこんなに食べるんですか?」
お母さんドラゴンのビアンカ、赤ちゃんドラゴンのブランシュ。
私は暇さえあればドラゴン親子の様子を見に行った。
二匹は今お昼の時間。
もしゃもしゃと山のような野菜、ものすごい大きな肉の塊をビアンカは食べている。
ブランシュもすごい食欲だ。
あとまだブランシュはミルクも飲む。
まるでテレビで見た子牛の哺乳瓶みたいな大きな哺乳瓶でミルクを飲んでいた。
「私も最初は驚きましたよ。これが普通なんです」
サトミさんは笑いながらアイアンさんと一緒に親子の獣舎を掃除していた。
獣舎といっても、まるで一軒家みたいな立派な作りだ。
正直言おう。
元の我が家より断然立派である。
まるで豪邸とゴキブリハウスくらいの差はある・・。
「あれは何ですか?」
ビアンカが手にもって食べ始めた、というより吸い始めた大きな青い実。
何か、吸うたびにキエーっとかギエーって悲鳴が聞こえるんですけど・・。
「あれはドラゴンベリーといいまして、ドラゴン達の大好物です!栄養価がとても高いんですよ」
アイアンさんはそう教えてくれた。
あれ、ベリーなんだ。
ベリーなんだね。
何か顔っぽいのがあって、その口から悲鳴を上げてるように見えたのはやっぱり気のせいか!!気のせいだねうんうん!
「タマ様。そろそろ魔王様がお戻りになります」
「シルヴィアさん!それじゃビアンカとブランシュの事お願いしますっ」
「了解です!」
「分かりましたっ」
一度、魔王様を出迎えれなかった時、魔王様ずーっと私を抱きしめて離さなかったもんな・・。
そんでタンスに封印していたフリフリ服を着せられて、撮影大会が始まった。
モデル撮影みたいなスタジオでライトアップされて、カメラでばしゃばしゃと・・・。
散々だった・・。
あれはもう二度とごめんである!!
私は急いで部屋に戻った。
「おかえりなさい魔王様!」
間に合ったあああ!!
ギリギリセーフ!
部屋に戻って一息ついた瞬間、帰ってきた魔王様。
あー良かった間に合って。
「ただいま、タマ」
ぎゅ、とハグ。
魔王様は、何か落ち着く匂いがするんだよね。
香水でもない・・フェロモンの香りかな・・・?
「ん?」
こんこん、と窓を叩く音。
あれ?蝙蝠?
蝙蝠がこんこんと窓を叩いている。
でっけえ蝙蝠・・。
「ルシファーか」
魔王様はそう呟くと、蝙蝠を部屋へ招き入れた。
ルシファー・・七つの大罪さんのうちの一人だ。
確か、あの戦隊みたいな登場場面で一番最初に名乗っていた悪魔さん。
蝙蝠はパタパタと窓辺に止まった。
『サタン様、突然のご訪問まことに申し訳ございません』
「蝙蝠が喋った!?」
蝙蝠がイケメンボイスでしゃべり始めた!
あれ?でもこの声聞きおぼえが・・。
「タマ、これはルシファーが使いの蝙蝠を通して話しているんだ」
あ、なるほど・・。
ああ驚いた。
『タマ様、お久しぶりです。驚かせてしまい申し訳ございません』
「い、いえいえ。私の方こそ失礼しました」
「それで、どうしたルシファー?」
『はい・・。実は魔王様にお願いがあるのです』
ルシファーさんの話によると、何でも大陸に咲いている魔界樹の様子が可笑しいらしい。
魔王様と勉強してる時、魔界樹の事も教えてもらった。
魔界樹とは、七つの大陸に一本ずつ生えている特別な木で、その木が大陸を支えているのだとか。
その魔界樹を守るのも、七つの大罪の役目だと魔王様は言っていた。
もし枯れたら、大陸に住む全ての生物が死に絶えるという・・・。
魔界にとってはすごく大切な木なのだ。
『私も原因を調べているのですが、まだはっきりとした事が分からず・・魔王様、どうかお力添えをお願いいたします』
「ふむ・・・魔界樹が・・・。分かった、今からそちらに向かおう」
『ありがとうございます!!ああ・・このルシファー・・魔王様のお優しさに涙が止まりません・・』
蝙蝠がぼろ泣きしてる。
でも大変な事が起きてるみたい・・。
「タマもそちらに連れて行ってもいいか?」
『それはもちろんでございます!』
はい?
私も行くの?
私が行ってもどうにもならない内容だと思うんですけど!?
「可愛いタマを置いていく事などできないからな」
『このルシファー、誠心誠意を込めたおもてなしを致します!!』
おもてなしって、そういう場合じゃないと思うんですけど!?
でも魔界では魔王様の決めた事は絶対。
結局私も付いていく事になった。
「どうせならお前のドラゴンに乗って行こうではないか」
「え、ビアンカにですか?!」
驚きの提案!!
いつか乗る事になるのかなぁ?とは思ってはいたけど!!
思ってはいたんだけどね!?
でもいざとなると、ちょっと怖い・・。
「私が乗り方を教えてやろう。お前ならすぐにマスターできる。既にあの親子とは心が通い合っている。怖がる事はない」
魔王様は優しくそう言ってくれた。
何か、怖さがなくなっていった。
ビアンカはとても優しいお母さんドラゴンだ。
お城で暮らし始めてから、それがよく分かった。
きっと・・。
いや絶対大丈夫だっ。
よし!初ドラゴンフライだ!!!
「魔王様、タマ様。どうかお気を付けて!」
「タマ様、しっかり目を開けてドラゴンと同じ方向を見るのが大切ですよ」
「はい!じゃあいってきます!」
「城の事は頼んだぞ」
「承知いたしました」
サトミさんアドバイスありがとう!!
シルヴィアさん達に見送られて、私は魔王様とビアンカに乗る。
ブランシュは私が抱っこ。
「きゅう~」
「ぐおおおお!」
二匹とも張り切った声を出している。
魔王様は私をしっかり支えてくれてるから、恐怖感はない。
ビアンカが羽根を動かし始め、庭の草が揺れ始める。
そしてついに、初のドラゴンフライが始まった。
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