第15話 魔王様からのおくりもの
窓辺に置いた鉢植えに如雨露の水をあげる。
私は今、シルヴィアさんが用意してくれた花の種とサタンさんがくれた花の種を育てている。
魔王様が魔力を注げばすぐ咲くぞと言って、手伝おうとしてくれたけど断った。
水を定期的にあげて、日に当てればちゃんと育つというので私は自分の力で花を咲かせたかった。
お兄ちゃんの邪魔もないんだし、絶対花を咲かせたい。
それを分かってくれた魔王様は、ではちゃんと育つよう私は見守るだけにしよう、と言ってくれた。
まだ芽は出てないけど、シルヴィアさんや魔王様が言うには順調らしい。
「クリスタルフラワーの種をご用意いたしました。クリスタルでできた花が咲きます。色は透明な白、透明な青、透明な赤とありますがどんな色が咲くかは花が咲いてからのお楽しみなのです」
シルヴィアさんが用意してくれたクリスタルフラワーという花の種。
説明を聞いて、私はわくわくした。
名前からして綺麗だもの。
上手く綺麗な色が咲いてほしい。
サタンさんがくれたアミュレットフラワーも気になる。
良い事が起こるって、サタンさんは言ってたけどどんな良い事が待ってるのかな?
「赤ちゃんドラゴンとお母さんドラゴン、元気かなぁ?」
ドラゴンレースで頑張ったお母さんドラゴンと、ちっちゃな赤ちゃんドラゴン。
今は何してるんだろう?
仲睦まじく暮らしてるかな?
それとも誰かが引き取った?
親子、離れ離れにならないといいなぁ。
「タマ」
魔王様がお仕事から帰ってきた。
お仕事は何をしているのかよく知らないけど、何か魔界で異変は起きてないか、生態系に異常はないかとか色々調べたりしてるようだ。
魔界全体の異常を調べられるのは魔王様だけだというから大変なんだろうなぁとは思う。
「はぁ・・・疲れが取れる・・・特にこの可愛いお腹・・」
お腹に顔をうずめて恍惚した顔をする魔王様・・・。
ああ何回も何回も思ったけど、本当に残念なイケメンだ。
頬ずりしてすーっと匂いまで吸って残念すぎる。
「ああ、そうだタマ。お前におくりものがあるんだ」
「おくりもの?」
「ああ。きっとタマが気に入ってくれると思ってな?」
何だろう?
魔王様は今までにも色々くれたけど。
フリルいっぱいのドレスとか(タンスにずっと封印してる)、宝石付きの純金の髪留めとか(ジュエリーケースに入れてる)。
魔王様が案内してくれたのは城のいくつかある庭。
そこには。
「きゅう~!」
「ぐるる」
あの赤ちゃんドラゴンとお母さんドラゴンがいた!
赤ちゃんドラゴンは私に飛びついてくる。
「な、何でここに!?」
「このドラゴン達がお前へのおくりものだ」
何と魔王様は、このお母さんドラゴンを私専用の乗り物としてサタンさんから譲ってもらったらしい!
サタンさんは「あ、いいですよ」とあっさりOKだったそうだ。
「親と子を離すのはお前が嫌がると思ってな。一緒に譲ってもらった」
「きゅうきゅう」
赤ちゃんドラゴンは私の腕の中ですりすりしてくる。
ううやっぱり可愛い!
「で、でもいいんですか?私にこんな立派なドラゴン・・」
「お前はこの親子をとても気に入ってたようだからな。ドラゴン達もお前を気に入ったようだし、他の悪魔に飼われるよりもお前のものになった方がこのドラゴン達も喜ぶと思ったのだ」
お母さんドラゴンは私に近づき、顔を寄せてきた。
まるで撫でろと言ってるみたいだったから、撫でてみると嬉しそうに目を細めた。
「あとこのドラゴン達の世話係も紹介しよう」
そう言うと、お母さんドラゴンの影から出てきたのは銀色の毛並みをした狼姿の悪魔と・・。
「サトミさん!」
「タマ様、こんにちは」
サトミさんの姿に私は驚いた。
「この二人が今日から城に住み込みでドラゴン達の世話をしてくれる」
「え、本当ですか!」
サトミさんは笑って頷いた。
「初めましてタマ様。俺はアイアンと申します。今日からこのドラゴン達のお世話を務めさせていただきます」
「アイアン先輩はドラゴンに凄く詳しい方だから安心してください」
「で、でもドラゴン牧場の仕事はいいんですか?」
サトミさん、仕事楽しそうにしてたのに。
でもサトミさん達は全然気にしてないようだった。
「いいえ。むしろタマ様のものになられたドラゴン達のお世話ができる事に感謝しております。これ以上光栄な事はございません!」
アイアンさんはまるで軍人みたいに敬礼した。
な、何か生真面目タイプって感じ・・。
「私もです。頼りになる先輩と共にお世話係に選ばれた事、嬉しく思ってます」
こそっとサトミさんは私に耳打ちをした。
「(サタン様と魔王様、両方からお給料貰える事になりましたからむしろもっと仕事条件が良くなったんですよ)」
内緒ですよ、とサトミさんはそう言った。
なるほど、お給料いっぱいって確かに嬉しいだろうな。
「牧場での仕事環境とは色々変わるだろうが、ドラゴン達の世話しっかりと頼むぞ」
「了解いたしました!」
「はい!」
住み込みって事はこれから、サトミさんに会いたいときはいつでも会えるって事か。
それは嬉しいかも。
あ、でも仕事の邪魔だけはしないよう気を付けよう。
「サトミ、これから共に頑張ろう」
「はい先輩!」
あれ?
サトミさん、何かちょっと顔赤い。
もしかして・・・?
「タマ。ドラゴン達に名前を付けてやらねば」
「あ、え?名前?」
あ、そうだ。
たしかドラゴンは飼い主が名前を付ける事になってるんだっけ?
うわああああこれは責任重大だああ・・!!
変な名前はつけたくない!
で、でも私に良い名前付けられるかなぁあああ!?
「うーん・・・」
「きゅう?」
「ぐるる?」
じ、と赤ちゃんドラゴンとお母さんドラゴンを見つめる。
両方とも真っ白い体。
白・・・・。
「・・・お母さんドラゴンはビアンカ。この子は、ブランシュ」
両方とも外国語で白という意味だ。
安直かもしれないけど・・。
「良い名前だ」
「流石タマ様です!」
「ぴったりな名前ですね」
皆褒めてくれた。
でもお母さんドラゴンやこの子は気に入ってくれたかな?
ぐおおおおおおおおおおおおおおん!!
きゅうーーーーーーーーーーーー!!
うわ!!
親子がいきなり遠吠え?した!!
え、凄く嫌だった名前?!
「おお、こんなにも喜ぶとは」
「よほど気に入ったようです」
「ほらタマ様。二匹ともあんなに尻尾を振ってますよ」
え、喜んで鳴いてるの?
尻尾は確かに赤ちゃんドラゴンはぴこぴこ揺らしているし、お母さんドラゴンなんか太い大きな尻尾をびたんびたん地面揺らすほど動かしてるけど。
お母さんドラゴンの尻尾ですごい地響き起きてるんだけど、皆平気そうな顔してる。
な、何はともあれ喜んでもらえたのなら良かった。
サトミはサタンの奴隷のままです。
でも魔王の城で働けることは物凄い事で、例え雑用係でも魔界では人気職業になります
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