第1話 人生が変わった日
第1話 人生が変わった日
その日、私の人生は大きく変わった。
私の名前は岬珠世。
14歳の普通の中学生だ。
私は生まれつき太りやすい体質で、現在14歳の標準体重など全然超えている。
デブと言うキャラは弄られやすい。
幼稚園の頃のあだ名はお餅、小学校では6年間ずっと小錦だった。
でも小学生まではまだ良かった。
あだ名程度で済んでたし。
だが中学に上がって、同じクラスとなった笹島絵理奈。
こいつに私は目を付けられてしまい、毎日笹島絵理奈率いるグループにいじめを受けた。
絵理奈の父親は大きな病院の院長。
叔父はPTA会長を務めている。
クラスの皆は誰も絵理奈に逆らえなかった。
皆、絵理奈の機嫌を損ねぬよう媚びを売っていた。
しかも絵理奈は教師の前では優等生を演じている。
私がいじめを訴えたところで、勝てる見込みはないだろう。
もみ消されるのがオチだ。
両親も今は一流会社に就職を目指している兄にばかり構っているので、私の事は気にも留めていない。
いや、いじめの事を言っても兄の就職活動に影響が出たらどうする気だ!と怒られるのが目に見えている。
昔から何でもできる兄、徳望の長男。
両親は兄ばかり可愛がっていた。
そんな状況で育ったから、むしろ私は神経が図太くなった。
自分の事は自分で何とかしようと、何事にも動じない性格になった。
だから絵理奈達のいじめも、その内飽きるだろうと対して気にはしなかった。
その点では両親や兄に感謝している。
教科書やノートを隠されたりゴミ箱に入れられていてもまだ使えたし、真剣に授業を聞いていればテストも平均点は取れた。
机の死ねという落書きも消せば良いだけだし。
体操着はボロボロにされた時はさすがに困ったけど、近くに住んでいた祖父母に頼んで新しいのを買ってもらえたので何とかなった。
おじいちゃんとおばあちゃんは私の味方だったのが幸い。
絵理奈達は私が何をしても動じない事に苛立って、いじめはひどくなっていったが私は全く気にしなかった。
そして中学2年に上がった春、その日に私の人生は大きく変わった。
「ねえ、もう学校に来ないでよ。見るだけでキモいのよデブ」
絵理奈達に呼び出されて、無視しようかと思ったけど引っ張られて連れてこられたのは校舎裏。
なんてベタな場所を。
「まあ一応学費は払ってるんで、来ないともったいないというか」
「あんたねえ!状況分かってんの?!」
私の胸ぐらを掴むのは高橋明日香。
絵理奈のグループの一人だ。
絵理奈に一番忠実で、わざとらしいくらい媚びを売っている。
「状況・・ベタな校舎裏に連れてこられたからリンチとか?」
「絵理奈さん、こいつ本当にムカつきますね」
そう言って私の顔を叩いたのは竹内利香。
絵理奈の顔色をいつも伺っている。
先に手を上げるのはいつもこいつだ。
あーいたた・・。
「一度思いっきり痛い目見ないと、自分の立場が分からないんじゃない?」
スカートからカッターを出してきたのは川原美紀。
絵理奈によくパンを買いに行かされているいわゆるパシリ役。
本人は喜んでやってると言うが、実際はどうだか。
というか、流石にそれはやばいんじゃないかね?
「そうね。それは良いアイディアだわ」
絵理奈は美紀からカッターを奪い取ると、チキチキと刃を出した。
ひたひたと刃をほっぺに当ててくる。
マジかおい。
「顔は目立つから、服で隠れる場所にしといてあげるわ。私、優しいでしょ?」
バレる可能性があるからだろ。
てかこれもう犯罪だろ!
いやいじめ自体犯罪だけどっ。
明日香と利香に腕を押え込まれた。
流石にちょっとやばいっ。
なりふり構わず暴れて逃げるか・・!?
そしたら周りが急に暗くなった。
私達以外、学校も校庭も消えた。
辺り一面、真っ暗だ。
「え?何っ?」
「何が起きたの?」
絵理奈達がどよめく。
地面が赤く光りだした。
「何よっ何なのよ!!?」
あまりの眩しさに目を瞑ってしまった。
そして次に目を開けた時。
光の先は知らない世界だった───。
なんてどっかのラノベや映画のフレーズを言ってる場合じゃない!
ここはどこだ!?
何か魔法陣っぽい場所に私や絵理奈達はいた。
しかも魔法陣の周りには・・・。
「何だ、今回はたった5人か。しかも人間の雌だけ」
「男手が欲しかったんだがなぁ。まあランダムだから仕方ないか」
「いないよりはましだな」
ああ、何という事でしょう。
明らかに人間じゃない、角や翼を生やした生き物や一つ目の生き物やらに私達は囲まれていた。
絵理奈達は腰を抜かしたようでがくがく震えている。
それを見て、私の精神状態は逆に落ち着きを取り戻した。
あれだ。
私ってホラー映画を見ていて怖くても、周りがきゃーきゃー煩いと逆に怖くなくなり冷静になっちゃうんだ。
それと同じで、私はこんな状況でも落ち着きを取り戻す事ができた。
サンキュー、絵理奈と取り巻き。
初めて感謝したわ。
「こ、ここはどこなんですか・・・?」
でも流石に人間じゃない生命体に話しかけるのは勇気がいる。
だけどここが一体どこなのか聞かないと・・。
「ここか?ここは魔界だ。お前達は俺達悪魔族の奴隷として召喚されたんだ」
・・・・・・・・・聞かなきゃ良かったあああああ!!!