表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/9

今を生きたい。


 今日は少し肌寒く、月の明かりがぼんやりと部屋を照らしていた。


「あれ?私、え?」


 そこは、知らない場所。


 とある病室の中、私は目を覚ました。


「確か、、死んだんじゃなかったっけ、、ここはどこ?」


 一人で病室を出ると、なんだか足があんまりうまく動かせなかった。


 鏡を見た私は驚いた。


 やせ細った私、頭に包帯でぐるぐる巻きになった自分が写っていた。



「なによこれ。生きてる、、?」


 私は病院のナースステーションへ行き、説明を聞こうと思った。



「あの~、すみません。私ってここはどこでしょうか?」



「え?は、浜辺さん?!」


 看護師さんは慌てた様子で先生を呼びに行ってしまった。


「なーに、お化けが出たみたいな表情してさ。」


 生きているのか死んでいるのかもわからない。そんな感覚だった。




「き、君は浜辺鳴海さんだよね?」


 先生までお化けを見るように言ってきた。


「はい、そーですけど、何か問題でもありますか?」



「おいそこの君、すぐにお母さんに連絡して!浜辺さん、こんなこと言うなんて信じてもらえないかもしれないんだけど、、」


 先生は息を飲むようにこう言った。



「君はね、半年間ずっと、意識不明の状態だったんだよ。それでいきなり歩いているからびっくりしてしまってね。ごめんよ。」



「え、ちょっと待って。私って死んだんじゃないの?え?じゃあ優くんは?ねぇ先生!優くん生きているんですか?」


「ゆうくん?ん~誰のことかわからないが、とにかく今は冷静になって、お母さんを待とう、ね。」


「そっか、、知らないよね。わかりました。」


 私は何が何だかわからないまま、自分の病室へとぼとぼ歩いて行った。


 けど半年間ぶりに目が覚めたってことは、トラックに轢かれたあの日から半年経ったってことなのかな。


 


「鳴海!鳴海!」


 お母さんが呼ぶ声がした。


「お母さーん、私ここだ、ん、、く、苦しいよ。。」


 お母さんは私を強く、強く抱きしめた。


「お母さんね、いつかこんな日が来るんじゃないかって思ってね、毎日毎日神様にお願いしていたのよ。だから嬉しくて、嬉しくて。良かった。。」


 なんだかわからないけど、二人して大泣きした。

 お母さんの温もりがこんなに暖かいんだって、久しぶりに感じた。

 私、生きてるんだって。



「鳴海、信じられないかもしれないけどね、あなた入学式の当日に大きな交通事故に巻き込まれたのよ?それで意識がもう戻らないかもしれないって先生に言われて、、お母さんどうしたらいいかって」


「ちょっと待ってお母さん!入学式に交通事故?今日って何年の何月?え?私は何歳?」



「ごめんね、びっくりさせちゃって。あなたは今16歳、高校1年生よ。今は11月。」



 え?時間が、戻ってる。



「お母さん、あのね、遠藤くんって知ってる?」


「遠藤くん?もちろん知ってるわよ。たまにお花を替えにきて来てくれている、あなたのクラスメイトでしょ?でもまだあなたからしたら出会っていないはずよ?」



「まだ出会ってない?、、、そうか!」


 これは私が寝ている、いや意識を失っている間に見た、、夢?なのか。





 これはきっと、お父さんが私に見せたかった夢なんじゃないかって、そう思った。


 私と優くんはまだ出会っていない。


 けど夢の中で、自分を犠牲にしてでも守りたいと思うほどの恋をした。


 そして私は死んだ、はずだった。


 現実とは偶然と必然の繰り返しで出来ている。


 幸せってなんだろう。


 そうやって考えながら、いつかの幸せに向けて生きている。


 実は今が一番幸せなんじゃないかって思う時もある。


 それは、プロポーズの瞬間だったり、初めてのキスだったり。


 何を幸せに感じるかなんて人それぞれで。




 でも一つだけ確信できることがあった。



 ”まだ出会っていない遠藤優と私はきっと、恋をする”


 


 あんな夢を見たら誰だってそう思う。



 とにかく一刻も早く会いたい。


 優くん。優くん。



 もしあいつと恋をして、


 本当に夢で起きたことが現実になって、


 2年半後に私か、優くんか、わからないけど、死んでしまうかもしれない。



 私があいつに恋をしなければ、誰も死なず、


 お互いそれなりに幸せに暮らしていけるのかもしれない。


 未来は変えられないのかもしれない。


 私はすごく迷った。


 このまま出会わずにいた方が幸せなんじゃないか。



 私は一人で笑ってしまった。




 優くんと恋をする以上に幸せなことがこの世にあるわけがない。


 そう思ったからだ。




 私は半年間寝たきりで、すっかり衰えてしまった筋力をつけるため、日々リハビリに打ち込んだ。


 そしてなんとか普通に生活できるようになった。


 よし、これで学校に行ける。


 優くんに会える。


 あ、でも向こうは私がどんな人なのか知らないか。


 ずっと寝ていたからね。




~ 学校当日 ~





 みんな私のこと知っているかな。ふふふ。


 私はみんなのこと知ってるよ。


 早くクラスのみんなに会いたいなー。


 やばいやばい、初登校日なのに遅刻するーーー。




「(キーンコーンカーンコーン)おっはよーございまーす!セーフ!」



「おお、浜辺か、今日からこのクラスの仲間だ!それにしても、当日から遅刻ギリギリはないだろ~」



「ま、せーんせい、硬いこと言わないの!」



「まぁいい。とりあえず自己紹介でもできるか?」



「ぷっ」


 私は全員知っているのに自己紹介なんてって思ったけど、まぁ仕方ないか。



「えー、みんな聞いて!私は浜辺はまべ 鳴海なるみ、そこの君!」



 と、優くんのほうを指さした。


「な、なんだよいきなり。お前入院してたんじゃないのかよ?」



「入院?そんなことはいいの。遠藤えんどう まさる、あなたにどうしても伝えなきゃいけないことがあるの。」



「なんだよ、ほとんど初対面で伝えなきゃいけないことって、、」



「良い?一回しか言わないから耳をかっぽじって聞くのよ。」


 と、私は大きく息を吸った。



「だーーーーーーい好き!私と、結婚して!」





 幸せなことがわかっているなら、一日でも早く、あなたといたい。


 みんなが少しでも後悔しないように、幸せであれ。


 ただただ、今この瞬間を、生きたい。











評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ