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こんなはずじゃないのに。


 私は学校を早退し、母の病院へ駆け込んだ。


「お母さん、聞いて!あのね、私のクラスにあの男がいるの!」


「あの男?って誰のことかしら?」


「昔海で、お父さんが助けたあいつだよ!(ぐすん、ぐすん)」

 泣きながら辛いことを訴えた。


「あ~あの時の、確か優くんでしょ?知ってるわよその子のこと!」


「え?なんで?どうーしてお母さんが知ってるの?」


「だってその子、中学生になるくらいまでかな?毎日毎日私に手紙をくれていたのよ?」


「なんで?どーゆうことなの?」


「あなたの世界で一番大切な人に迷惑をかけてしまい、ごめんなさいってね。初めは冗談かと思ったわ。けどね、さすがに毎日続くと私もこの子を不思議と信用するようになってね。」


「え?でもなんで私にそれを隠していたの?」


「娘さんには言わないでって、強く念押しされていてね。僕が彼女を守るんだって、だからしっかり大人になってから、自分の力で幸せにしたいんだって、そう言っていたわ。」


「なんでよ、なんでお母さんまであいつの味方なのよ!私の気持ちはどうなるのよ。」


「それはあなたに任せたいって思って、私は彼と秘密の約束したのよ、ごめんね。で、高校生になってから久しぶりに会った彼はどうだったの?」


「んん、それが・・私と結婚する運命だって、しかも初対面でだよ?わけわかんないっつーの。」


「ふふふっ、あなたのことがきっと好きなのよ。それは見かけとか、中身とか、そんな次元じゃないんだと思う。初対面なんて関係ない。その子が言っていることはきっと本当のことよ。」


「・・お母さん。帰るね。」


 私は気持ちの整理ができないまま、家に帰って、ごろごろしていた。その時、私の携帯に知らない番号から電話があった。


「はい、、もしもし、、。」


「あ、あのー、遠藤ですけど、浜辺さんですか?」


「(げっ)そそ、そーだけど、なんでしょうか?ってゆーかなんで私の携帯知ってるの?」


「今日急に変なことを言ったことを謝りたくて、、クラスの子に聞きまわったら知ってる子がいて、それで。」


「謝りたいって言われても、あなたは私のお父さんを殺したのよ。どーやって許せって言うの?」


「そのことなんだけど、許してほしいなんて思っていないし、そのことが原因で浜辺さんのお母さんが体調崩したことも知ってる。だから僕にできることはないかなって。ただそれだけ言いたくて。」


「できること?じゃあ、私と結婚するって言ったあの言葉、撤回してちょーだい!」


「はははっ、それはできないよ。僕の人生でたった一人の好きな人だから。」


「何言ってるのよ。今日初めて出会って、私の何を知ってるっていうのよ。」


「浜辺さん、君、今日は2カ月先まで飛んだ来たでしょ?」



「・・・え?ちょ、えーー?」

 私は驚きのあまりベットから飛び上がった。


「何で知ってるか、それは話すと長くなるんだけど、つまり僕には少しだけ相手が何を考えているか分かってしまう能力があるんだ。」


「何を考えているかわかったからって、未来に飛ぶなんて、むむむ無理に決まってんでしょ?」


「未来に飛んで来たなんて言ってないよ。君が2カ月先まで来ちゃったって心の中で言っていたのを聞いただけ。」


「ふーん、その能力ズルいわね、あー、だから学校で良い人やってるんだ?嫌なやつ!」


「まぁそんなところかな。嫌なやつって言ってる君はきっと、僕のことを好きになる。そのことだけ言っておくね、じゃまた学校で!(ツー、ツー、ツー)」


 電話が切れて、私は混乱状態だった。あいつは人の心を読む能力、私は未来へ飛ぶ能力。

 これが現実?高校生ってみんな特殊な能力があるのか。そんなわけがない。


 一度ゆっくり整理したいと思い、少し早いが7時に寝ることにした。


 

「(ピピピピッ、ピピピピッ)あーーー寝すぎて腰が痛い。何日だ?ん?・・え?」

私はテレビの日付けを見ながら、愕然がくぜんとした。


9月10日、2学期が始まった頃だった。


時間が、飛び過ぎている。


これはどーゆうこと?学校へ行ってみることにした。


「(ガラガラ)おはよう。」

 小さい声で席に座り、誰にも気づかれないように、身を隠すように、存在を消していた。


 今日は、誰とも話さず、終わろう。少し話しかけられたりしたが、全部無視をした。明日きっと普通の日付けに戻る。そう信じて、ひっそりと一日を終えた。


なんだか、この能力なんていらないやって思って、時間も気にせず、寝床についた。

トカ戦なんてどーでもいい。普通の生活がしたい。


「おやすみ。」




「(ピピピピッ、ピピピピッ)ほわ~~、よく寝た。もう何日かなんてどうでもいい。」

 そう思っていたら、鳴海はこの日を境に未来へ飛べなくなってしまっていた。


これでいい。静かに、誰にも迷惑かけず、質素に学生生活をやり過ごそう。

私は俗にいう”インキャラ”で過ごすことにした。

きっと遠藤 優も私に気づかなければ、変なことを言うこともないだろう。


9月の少し涼しい夜風にあたりながら、帰り道をゆっくり帰っていた。


河原に遠藤 優がいた。何かやっている。

「君が好きだ、いや違う。あの実は前からいいなって思ってました。ん~なんか弱いよな。」


 どうやら告白の練習かなと思った。え?もしかして私に?そんなわけない。

 あいつのこと考えただけで胸が、、、

 あれ?く、苦しい。なんで。

 そんな嘘でしょ。私があんなやつのこと、、。


 鳴海は胸を締め付けられながら、家に着いた。何も手につかない。この私が、未来へ飛べなくなって、さらに遠藤 優なんかに、、。苦しいよ。


 お父さん、、私、あいつのこと、好きになっちゃったよ。


 どうしよう。どうしよう。。なぜか涙が止まらなかった。


 人を好きになるのに、理由なんているのか。人肌恋しいから好き、顔がタイプだから好き、優しいから好き、いろんな好きがある。けどどの好きもきっと大切な感情で、幸せに生きるために必要な感情。

 愛が深ければ深いほど、その恋は愛へと変わりやすい。

 たとえ憎しみを抱える相手であろうと、好きという気持ちはまた別の話。


 誰かが誰かを好きになり、同じ気持ちになる確率なんて、この世のものさしでは測れない。


 これは16歳の秋、9月のこと。




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